進路指導に関する書籍『大学入試改革対応! ミスマッチをなくす進路指導』が発売されます

 ■進路指導部が大学の情報を検討する際、重視している項目
・3つのポリシー(AP、CP、DP)の一致……10.1%
・中退率……6.6%
・学生と教員の比率……5.3%
・課外活動の支援体制……2.3%
・アクティブラーニング型授業の導入度……1.5%

■学校としての、様々な進路指導の施策の実施状況
・「国公立大学と私立大学の比較」を3年間でまったく実施していない高校……52.9%
・「同分野における学校ごとの比較」を3年間でまったく実施していない高校……45.8%

■生徒達に、志望校のデータを調べさせているか
・入学難易度を「特に調べさせることはない」という高校……16%
・中退率を「特に調べさせることはない」という高校……68%

■学校として、卒業生の状況を追跡調査しているか
・「過去10年以内に調査を行った記録はない」…57%

■所属する高校で、進路指導の成果はどのような要素で評価されるか
・(1位)国公立大学への合格実績が増えた……34.9%
・(2位)入試難易度の高い大学への合格実績が増えた……32.2%・

■進路指導主事としての経験年数(累計)は
・3年以内……58%
・5年以内……79%

これらはみな、NEWVERYによる『進路指導白書2017』の調査結果です。生徒一人ひとりの進学後の成長よりも、まずは難関大学・有名大学の入試で多くの合格者を出すことの方が優先される、いわゆる「出口指導」と揶揄される指導が高校現場の実態なのだと、これらのデータは示しています。
でも、こうした数字が出る前から、肌感覚で問題の所在を知っていた方は多いことでしょう。

さて、高大接続改革、成功するでしょうか。
私はこの改革の目指す方向性に、基本的には賛同する一人なのですが、「このままでは構想倒れになるんじゃないか?」と、ちょっと心配です。

現在、学力の3要素をはじめ、新しい学びに関する議論や実践が高校側で行われています。大学側も、魅力的な教育改革、入試改革を進め、新しい生徒達の挑戦を待っています。

でも、それらだけではおそらくダメなのだと思います。

たとえば現在、「大規模大学と小規模大学の比較をせよ」と意識的に指導している高校はそう多くありません。
「文系と理系、両方の模擬授業を受けてから文理を決めろ」というレベルの事前指導ですら徹底されていないのです。
高大接続改革の重要コンセプトである「3つのポリシー」も、このままではきっと形骸化してしまうことでしょう。

第二志望、第三志望の大学は、3年生の秋以降に初めて検討しはじめた、なんて大学生は少なくありません。
これは、大学側で学生に調査をするとよくわかります。
国公立大学の受験を学習計画のゴールに据える高校は地方を中心に珍しくありませんが、その際、第二、第三志望の私立大学は進路指導の中で軽視されるか、ときには「目を向けさせない」ような指導すらされていたりします。
結果、大学の中退者は5年間で2割増加しています。でも、これでは無理もないことだと思います。

「キャリア教育」という素晴らしい取り組みが始まってかなり経ちます。「進路指導」もその一部という位置づけのはずですが、残念ながら実態としては分断されています。
キャリア教育は「どう生きるか個々に考えよ」と問いますが、進路指導は「これらを目指せ」という大人の正解を提示しがちです。

各種の優れた大学ランキングや、大学の教育情報データベースもありますが、高校生の多くはその存在を知りません(下手をすれば、高校教員ですら)。また知っていたとしても、それらを進路指導で活用するための工夫やノウハウが、教員間で共有されているとは言いがたい状況です。

でも高校側にも、理想通りの指導ができない事情があります。
時間も予算も労力も十分でない上、進路指導のノウハウも十分に蓄積されておらず、ただ前年通りを踏襲することが精一杯という状況を、いま現場で奮闘している教員だけの責任にはできません。
学部・学科のリサーチも各大学の特色理解も、外部の単発イベントに頼らざるを得ないのが、多くの高校の現実。だとしたら、その現場を踏まえて、少しずつ変えられるところから変えていくしかないのだと私は思うのです。

大学側の広報活動も、高大接続という観点で見れば問題だらけでしょう。でも大学は大学で、自校の志願者数最大化を目指さなければならない事情を抱えています。
18歳人口の減少が避けられない以上、入試広報活動もいずれ行き詰まるでしょうが、具体的に何を改善すれば良いかわからず途方に暮れている大学だって多いと思います。
それに対する私の考えは、「高校生達の進路学習に協力してみてください」です。その視点がなければ、手の込んだ高大接続入試も、教育情報の公開も、期待通りには機能しないはずです。

いまの高大接続改革には、重要なピースが欠けているように思います。
「進路学習の目的やプロセスをバージョンアップする」というピースです。
(入試の改革よりも、本当なら進路学習改革が先で良いくらいです)
これは高校側、大学側の片方だけで努力しても実現できません。7年間で地元の若者を育てる、という視点で協力し合うことが大事です。

というわけで、進路指導の本を書きました。

現場の指導を「より良いもの」に少しずつ改善していくための視点や方法をまとめた、具体的な実践書です。

この本は、進路指導に関わってまだ5年以内など、手探りで指導に関わっている高校教員の方を主な対象に想定しています。ですから10年以上、進路指導の責任者を務めているような先生や、既に先進的な取り組みをされている先生にとっては、物足りない部分もあるでしょう。
でも、もし「自分の考えを、ほかの教員達が理解してくれていない」と感じたときはお役に立てると思います。初任者の方でもすぐに実践できるよう、3年間の指導の流れを具体的に書きましたので、意思疎通のツールとして使ってください。学年の先生方がすぐに使えるワークシート類も入れています。

大学関係者の皆様にとっても、ご参考になれる部分はあると思います。この本は元・大学職員が、大学を離れて「入試の向こう側」に行って見てきたことや、試行錯誤してきた結果を踏まえてまとめたものです。こういう視点で高校の進路指導に関わっていこう、と検討していただく機会になれましたら幸いです。

10年以上前、私立大学の教務部で職員として働いていた頃から、私は大学の教育実態が、高校生の進学先選びに連動するような仕組みにしたいと強く願っておりました。予備校やNPOで働き、多くの高校、大学、企業の皆様と高大接続の実践をさせていただいたおかげで、「まずはここを一緒に変えてみませんか」と教育関係者の皆様へご提案できることが見えてきたように思います。できること、一緒に考えましょう。

4月15日に発売予定で、既にAmazonなどでは予約受付が始まっています。
微力ながら、一つでも多くの現場の課題解決のお役に立てることを願っております。ぜひ身近な方へ、ご紹介いただけましたら幸いです。


既に以下のサイトで購入予約が可能です。

■(Amazon)『大学入試改革対応! ミスマッチをなくす進路指導』
■(ぎょうせいオンライン)『大学入試改革対応! ミスマッチをなくす進路指導』

以下にて「はじめに」の全文と、目次の内容を公開しています。

■『大学入試改革対応! ミスマッチをなくす進路指導』:「はじめに」&「目次」内容(倉部史記公式ウェブサイト)