ニュースクリップ[-1014/] 「発掘の資格続々誕生 大学、業界、国がそれぞれ創設へ動き」ほか

マイスターです。

・「Google ストリートビュー」で大学キャンパス内を撮影するサービス開始

↑以前の記事で、「Googleストリートビュー」の大学キャンパス内サービスの話題をご紹介しました。
このたび、さっそくそれを活用した大学が現れたそうです。

大きな地図で見る

クラーク博士の像でおなじみ、北海道大学。
広大なキャンパスを誇り、観光地としても認知されている北大でなら、バーチャルキャンパスツアーのようなGoogleストリートビューのサービスを、何かと便利に活用できそうです。
他大学の方々も、いかがでしょうか。

さて今日は、ここ一週間ほどの教育ニュースの中から、いくつかを選んでご紹介します。

【資格が乱立?】
■「発掘の資格続々誕生 大学、業界、国がそれぞれ創設へ動き」(asahi.com)

開発や工事の予定地でよくみかける、遺跡の発掘調査。その発掘資格が次々に誕生している。まず民間の発掘会社団体が、次に早稲田大学が資格を創設。さらに文化庁も資格を設ける方針を打ち出した。
(略)このままでは“乱立”になりかねない。今春の日本考古学協会総会でも、自治体や大学の関係者らから「資格をとってどうなるのか」「資格が雇用を生むのか」などの質問が相次いだ。
考古学の専門家の間では、「千差万別の発掘現場では、資格が能力を保証するとは思えない」との声も根強い。特に、大学による資格の新設について「学生集めのためでは」とか「考古学専攻以外の学生に、発掘実習が必修になっていないのはおかしい」といった疑問も聞こえてくる。
財政難、人材不足など、埋蔵文化財行政の苦境を資格で打破できるわけではない。いずれの資格も取得には一定の費用がかかるし、何より複数あっては社会的信用にもかかわる。坪井清足・元興寺文化財研究所長は「資格にふさわしい知識や理解を、誰がどう決めるのか。ただ勉強すればとれるような資格なら弊害の方が大きくなるかもしれない」と話す。
(上記記事より)

今、世間では資格の創設と運営が大流行しています。
似たような分野の資格が、民間を含めわんさか存在するというのは、珍しいことではありません。
「○○検定」のようなものを始め、「珍資格」もありです。

・資格をつくる行為自体によって、その分野の取り組みを広く世間に広められる
・資格を取るための講座やテキスト販売で稼げる

……など、ビジネス的なメリットが多いのが、流行の理由でしょうか。
公的な認定を得たりするのは大変ですが、そうではない場合、資格をつくること自体はそう難しいことではありません。よって民間企業からNPOまで、色々な組織が資格や検定を運営しています。

ただ、大学が資格を運営するのはかなり珍しいように思います。
考古学に関する教育の質をそろえる、といった狙いももちろんあるのだと思いますが、生き残りをかけ、他大学との差別化をはかるための手段だという一面もあるのでしょう。

【狙われる大学図書館。】
■「神大図書館の古書泥棒 窃盗容疑で男再逮捕へ」(神戸新聞)

神戸大学の図書館から古書1冊を盗んだとして逮捕、起訴された大阪市東成区大今里1、無職神沢頼重被告(52)がほかにも神大から古書10冊以上を盗んだ疑いが強まったとして、灘署は近く窃盗容疑で再逮捕する方針を固めた。
神大は、管理する2施設の古書254冊(市価約450万円相当)が盗まれたとして被害届を出しているが、捜査関係者によると、神沢被告は大部分の関与を認めているという。「古書店主と話すうち、絵のついた古書が高く売れると知り狙っていた」という趣旨で説明している。
(上記記事より)

大学ばかりを狙う盗難事件もありますが、こちらは「大学図書館」の本を狙う窃盗犯。
考えてみれば大学図書館には、貴重な古書や稀覯本、手に入りにくい洋書などが多く存在します。
大学の皆様、こうした犯行にもどうぞお気をつけください。

【短大関係者達の挑戦。】
■「学科の枠越えた短大へ…地域総合科学科の課題討論」(読売オンライン)

ファッションや異文化コミュニケーションなど、従来の「学科」の枠にとらわれない多様な科目選択や社会人の積極的な受け入れ――。そんな特色を持つ短期大学の「地域総合科学科」の課題を話し合うシンポジウムが東京都内で開かれた。志願者減に悩む短大の生き残り策として注目されている一方、課題も浮かんだ。
「地域総合科学科を短大の新しい形にしよう」。今月2日、東京・市ヶ谷で行われたシンポジウムで、西九州大学短大学部の福元裕二学長は短大関係者約80人に呼びかけた。
同学科は、興味や将来の夢に応じて幅広い分野の科目を受講できることが最大の特色。また、夜間コースや社会人学生の受け入れなど、履修の方法も多様だ。
少子化や4年制大学志向で短大が志願者減少にあえぐ中、短期大学基準協会(東京都)が提唱し、開設にあたっては同協会の認定を必要とする形にした。開設する短大は2003年度の3から、今年度は27まで増えている。
(上記記事より)

四年制大学への進学率も5割を超えた今、その特色が改めて問われている、短大。
学生募集に苦労しているところも少なくありません。

そんな中で、「短大の新しい形」として、一種の「型」が提案されています。
それが上記の、総合科学科。
個人的には、この総合科学科のコンセプトに、アメリカのコミュニティ・カレッジのような方向性も少し感じました。

短大に関しては、l↓こんな話題もありました。

■「短大のみの共同研究体、佐賀・長崎・福岡9校で」(読売オンライン)

教育の質的向上などを目指し、佐賀市の佐賀女子短大と西九州大短期大学部は13日、福岡、長崎両県の7短大・短期大学部とともに、「短期大学コンソーシアム(共同研究体)九州」を発足、同市内で協定に調印した。短大のみでコンソーシアムを作るのは全国初という。
ほかの7校は香蘭女子、精華女子、東海大福岡、福岡女子(いずれも福岡県)、長崎女子、長崎(いずれも長崎県)の各短大と福岡工大短期大学部(福岡県)。
協定では、9校は地域振興への貢献などを目指し、それぞれの学校の特色を生かして連携する。具体的には、在学生の学習状況などを調査、結果を共有したり、職員、学生を一堂に集めた研修の実施、それぞれの特色ある教育を互いに紹介し合ったり、介護や保育などでの人材育成のための教育プログラムの開発などもするという。単位互換は今のところ予定していない。
(上記記事より)

短大も、生き残りをかけて特色を出していく時代。
単純な「四年制化」だけではなく、短大同士が連携して高度な短大になる、という選択肢もあるということでしょうか。興味深い動きです。

【ハッカーにより、大学入試に大きな被害。】
■「ハッカー妨害で数千人が大学受験できず 」(バンコク週報)

10月9日~11日に実施された大学統一入試で、大勢の学生が試験の場所・日時がわからず、受験できなかったことが明らかになった。
これは、同試験を監督・実施する国立教育試験サービス研究所のウェブサイトに受験者がアクセスできなかったことによるものだが、チャイウット副教育相は10月10日、これがハッカーによる妨害行為が原因だったと認めた。
同サイトは10日まで3日間にわたりアクセス不能となっていた。
今回の試験は、スコータイタマチラート大学など全国の314カ所で実施されたが、10日の試験については、実際に受験できたのは登録者約4万人の6割程度にすぎなかった。
チャイウット副教育相は、「ロシアや韓国で大学入試がハッカーによって妨害された事例があるが、タイでも起きるとはまったく予想していなかった」と述べている。
(上記記事より)

タイの話題です。
ハッカーの妨害により、国が実施する大学統一入試の情報が受験生に届かず、結果として受験できない人が続出したというニュースです。

研究所の方々は、長期にわたって妨害行為に気づかなかったのかとか、webサイト以外の告知方法はなかったのかとか、色々と気になる部分もありますが、それにしても深刻な被害を受けてしまいました。
政府系機関のサイトなどがハッカーによって改ざんされたりすることは、日本でもしばしば報道されますが、これほど直接的な影響はないでしょう。

ロシアや韓国でも同じようなことが起きていたという事実も、驚きです。
日本でもこのようなことが行われないよう、気をつけた方が良いかもしれません。

【日本と似ている?】
■「台湾の出生率低迷、21年までに大学60校閉鎖も」(afpbb.com)

台湾の自由時報(Liberty Times)は13日、台湾の出生率が減少傾向にあることを受けて、2021年までに全大学の3分の1以上が閉鎖を余儀なくされる可能性が高いと伝えた。
教育省によると、現在は毎年約30万人の大学入学資格者がいるが、2021年には19万5000人にまで減少する見込み。その結果、今後12年間で、台湾の全大学164校のうち3分の1以上の大学が学生不足で閉鎖するとみられ、大学教員約1000人が失職する恐れがあるという。
台湾内政部(内務省)によると、出生率はここ数年減少し続けており、前年も、出産適齢期の女性1000人あたりの新生児は9人以下だった。
Wu Ching-ji教育相(教育部長)は対策として、大学の統合や、大学のコミュニティー・カレッジへの転換などを検討しているという。
(上記記事より)

出生率減少による少子化の影響で、多くの大学が閉鎖……。
まるで日本の話題のようですが、これは台湾のニュースです。

「台湾の全大学164校のうち3分の1以上の大学が学生不足で閉鎖、大学教員約1000人が失職」と、数字もシミュレートされています。
他の国でもこうした数字は出ていることでしょう。日本や台湾だけでなく、「アジア全体で大学が○校不要になり、○人の教職員が失職」というスケールで物事を考えたら、また違った視点が得られそうです。

以上、ここしばらくのニュースクリップでした。

教員養成制度の変化など、ここしばらくでいくつか大きなニュースもありましたので、それは別の記事としてご紹介したいと思います。

それでは今週も、お互いがんばりましょう。

マイスターでした。

※この記事は、現役高校生のための予備校「早稲田塾」在籍当時、早稲田塾webサイト上に掲載したものです。