新型の「豚インフルエンザ」に関する、大学の動き

マイスターです。

ゴールデンウィーク、皆さんはいかがお過ごしでしょうか。
せっかくの連休ですが、世界は「豚インフルエンザ」という問題で揺れています。
本来なら海外旅行を楽しむ方も多い時期ですが、予定変更をされた方も多いのではないでしょうか。

この新型インフルエンザの危険性についてはまだ様々な議論があるようです。
しかし放置しておけば、感染性の病気が爆発的に世界に拡がる「パンデミック」と言われる事態を巻き起こす可能性があるため、各国は「いかに拡大を防ぐか」に全力を尽くしている模様。

具体的には、原因となるインフルエンザウイルスを水際で食い止めること。
および、ウイルス感染者を早急、かつ確実に見つけ、隔離した上で治療することです。

この新型インフルエンザに関する様々な動きに、大学も関わっています。

【今日の大学関連ニュース】
■「【新型インフル】“学内感染”予防へ 東大が入構制限」(MSN産経ニュース)

新型インフルエンザ問題で、各大学は感染者が確認された段階で休講を決めるなど“学内感染”を防ぐための対策を打ち出している。
東京大学は1日午後、東京都内の本郷、駒場のキャンパス構内で「発熱している方は入構をご遠慮下さい」と赤い文字で記したポスターを学部掲示板や赤門などに掲出し、入構制限に踏み切った。
(略)学生約8万人を擁する日本大学は、国内で感染者が出た場合は全学臨時休校を決定。学生や教職員のメキシコなど発生国への渡航は原則禁止し、やむを得ず渡航する際は、帰国後7日間は「出校禁止」とする通知を4月27日に出した。
早稲田大も感染者が確認された段階で全キャンパスを立ち入り禁止とし、授業や部活動を休止。「自宅外通学の学生は基本的に帰省することとし、帰省できない学生については、食糧備蓄などの対策・準備が必要」と大学のホームページなどで指示した。明治大など、他にも多数の大学が感染者が出た段階での休講を決めている。
(上記記事より)

4月27日(日本時間28日未明)、世界保健機関(WHO)は緊急委員会の会合を行い、豚インフルエンザに対する警戒レベルを「フェーズ3」から「フェーズ4」に引き上げました。
それを受けて文部科学省は28日、全国の国公私立大学に宛てて、↓このような連絡を行いました。

■「各国公私立大学長等宛 新型インフルエンザに関する対応について」(文部科学省)

詳細については、リンク元をご覧ください。
新型インフルエンザに対する、詳細・かつ具体的な対応方針などが示されています。
新型インフルエンザがパンデミックを起こす可能性は、以前から国際的にも指摘されていましたから、事前に指示内容をある程度はまとめていたのでしょう。

大学は、多種多様な人材が出入りする場所。
研究や留学、または旅行などのために、国境を越えて活動している人も少なくありません。
ウイルスが持ち込まれやすい環境であり、かつ一度持ち込まれれば、感染者が爆発的に増える可能性も高いです。

そうした意味で大学の対応は大事です。
今のところ、発症者が出た場合の休講対応の他、メキシコへの渡航禁止や、留学などの理由で現地にいる学生に緊急帰国を促すなどの対応が取られている様子。

■「【新型インフル】メキシコ渡航禁止、シンポ延期…京都・大阪の大学」(MSN産経ニュース)

学内に対策本部を設置した龍谷大学(京都市)では、教職員・学生のメキシコへの渡航を当面の間禁止することを決定。現地滞在者にはただちに帰国するよう呼びかけている。京都外国語大学(同市)では、5月25日から4日間の日程で開かれる予定だったメキシコの大学教授らが参加する国際シンポジウム「メキシコの歴史と現在を考える」の延期を決めた。
立命館大学(同市)でも、学生らに対して大型連休中の同国など感染地域への旅行は中止するよう呼びかけているほか、京都産業大学(同市)では、メキシコに留学中の4人の学生に対して帰国するよう指示。
京都大学では渡航禁止などの措置は取っていないものの、米国などへの渡航には「人込みを避け、うがい、手洗い、マスクの着用などの対策を行って」と注意喚起している。
大阪大(吹田市)でも、大学のホームページなどを通じ、学生や教職員に感染確認国への渡航自粛を呼びかけている。近畿2府4県で感染者が認められた場合は、すべての授業を休講とし、課外活動なども停止させることも想定しているという。
(上記記事より)

■「帰国学生の出席停止 新型インフルで秋田大など」(河北新報)

新型インフルエンザ対策で秋田大は30日、感染が確認されたメキシコなどから帰国した学生らについて、帰国後10日間、出席や出勤を停止することを決めた。
大学によると、30日現在で対象国はメキシコや米国、カナダなど5カ国で、米国に留学し5月中旬に帰国予定の学生1人が該当する。
(上記記事より)

■「新型インフル:6月来日のメキシコ学生 ホームステイ中止」()

長岡技術科学大(新潟県長岡市)は30日、6月にメキシコから受け入れる予定の短期研修生について、市内の一般家庭でのホームステイを取りやめることを決めた。研修の実施自体についても、中止や延期を含めて近く判断する。
(上記記事より)

■「新型インフル、県内大学が渡航自粛呼び掛け」(静岡新聞)

静岡大は4月28日に学生や教職員に対して、メキシコや米国、カナダへの渡航自粛を呼び掛けた。
5月以降に海外渡航を予定している学生28人を対象に30日、説明会を開催し、手洗い、うがいの励行や都会や人ごみは避けるように指導した。同大の調べで、今後海外渡航を予定する学生は50人程度いるため、残る学生に対しても随時、説明会を開く。
メキシコや米国・カリフォルニア州から今後、帰国する学生や教職員を、10日間の出席停止にすると発表した。同大の担当者は「自宅で静養した上で登校して欲しい」と話している。
(上記記事より)

■「新型インフル 県内大学、メールで留学生の安否」(毎日jp)

神戸市外国語大学は、メキシコに四人、アメリカに二十一人、カナダに二十一人など、計八十人の学生が七カ国に留学しており、二十六日から安否確認のメールを送り始めた。メキシコに留学中の学生は全員無事を確認したが「多くの人が家から出ないようにしている」などと、緊迫した現地の様子を返信してきた学生もいたという。
(上記記事より)

今回、各大学の迅速な判断が際だっています。

2007年、全国的にはしかが大流行し、発症者を出した大学がキャンパスごと「休校」に追い込まれるケースが相次いで発生したのは、記憶に新しいところです。
その後、多くの大学が予防接種などの事前対策を進めるとともに、万が一、発症者が出た場合の対応方法などを策定。リスクマネジメントのための手を打ちました。

(過去の関連記事)
■はしかの驚異 各大学が対策を進める

そんな教訓が今回、活かされているのかもしれません。

なお、社会全体でこうした問題に立ち向かうにあたり、大学が果たす役割も多いです。

■「新型インフル相談窓口設置の動き拡大」(読売オンライン)

春日井市の中部大学は12日午後3時半から、新型インフルエンザの最新情報を解説する講演会を同大50号館5011教室で開く。大学内での対策の参考にしようと職員を対象に急きょ開催するが、一般の参加も歓迎する。
感染症を研究している生命健康科学部の鈴木康夫教授ら3人が、インフルエンザウイルスの本質や、新型インフルエンザの病態、対処法などについて話す。
事前の申し込み不要。聴講無料。
(上記記事より)

↑例えばこちらは、地味ですが大学らしい貢献の仕方。
専門家による解説は、問題の対応にあたる行政の担当者や教育関係者、それに病気に不安を抱く市民の方々などにとって、役立つと思われます。

正確な情報によって不安を取り除くというのも、大学にしかできない貢献の仕方かもしれません。
直接、目の前の方々に伝えるだけではなく、メディアを通じてこうした情報発信に協力している研究者の方も多いのではないかと思います。

■「新型インフル 県、鳥大と医師応援協定」(読売オンライン)

新型インフルエンザ(豚インフルエンザ)の感染が世界的に拡大する中、県は1日、感染の疑いがある人を一般外来とは別室で診察する「発熱外来」の開設に向け、医療機関への医師派遣などを受ける協定を鳥取大と結んだほか、抗ウイルスマスクの緊急購入を決めるなど対策を急いでいる。
鳥取大と結んだのは「感染症対策支援協定」。県の要請があれば、鳥取大は医療機関に医師を派遣して治療にあたり、診療や感染防止の指導、助言も行う。
(上記記事より)

↑こちらは、緊急時に大学が果たす、もっとも重要な役割の一つ。
今回の「新型インフルエンザ」のような感染症の場合、大学病院には感染したかどうかの判断から治療まで、様々な役割が期待されます。

おそらく全国的に、こうした対策のためのネットワークが作られているはず。
大学病院は、新型インフルエンザ対策の要になっていると思います。

……ただ、一方で↓こんな報道も見かけました。

■「遅れる新型インフル対策 大学病院の8割が訓練せず」(NIKKEI NET)

大学病院の8割が新型インフルエンザに対応した訓練を実施したことがなく、所在地の行政機関との連携体制も4割近くで構築できていないことが、文部科学省が実施した調査で分かった。設備の整った大学病院は大流行(パンデミック)の際に患者治療や感染拡大防止の拠点になる可能性もあり、文科省は早急に対応を進めるよう大学側に求めている。
調査は昨年12月1日時点での新型インフルエンザへの対応について、国立43、公立11、私立86の計140の大学病院について実施した。
新型インフルエンザに特化したマニュアルを作っていたのは49病院、感染症マニュアルの一部として新型インフルエンザを盛り込んでいたのは12病院で、計61病院が何らかのマニュアルを用意していたが、残る79病院にはなかった。このうち61病院は現在整備中だが、18病院は整備すら進めていなかった。
(上記記事より)

これは2月の記事ですが、その後、マニュアルの策定が進められたことを祈るばかりです。

以上、新型インフルエンザに関する話題をいくつかご紹介しました。

学生の方々は、大学が発信する情報をチェックし、指示に従って行動してください。

マイスターでした。

※この記事は、現役高校生のための予備校「早稲田塾」在籍当時、早稲田塾webサイト上に掲載したものです。