微妙なパブリックコメント

マイスターです。

政府は、国民から広く意見を集めるために、「パブリックコメント」という仕組みを設けています。

■「パブリックコメント(意見募集中案件一覧)」(電子政府の総合窓口)

上記のサイトから、現在、各省庁で議論されている様々なトピックに対して、自由に意見を送ることができます。
関連する資料をダウンロードできるように配慮されているものもあるのですが、なかには

「○○省 ○○課にて閲覧に供する」
「窓口配布」

……などとしか書かれていない案件もあって、実際に機能しているかどうかは微妙。
とは言え、こういう仕組みがあるだけ、以前に比べれは政策立案の場と、一般生活者の距離は近くなったのかもしれません。

で、現在も、文部科学省がパブリックコメントを募集しています。

【今日の大学関連ニュース】
■「パブリックコメント詳細:中央教育審議会大学分科会法科大学院特別委員会「法科大学院教育の質の向上のための改善方策について(最終まとめ)案」の骨子に関する意見募集の実施について」(電子政府の総合窓口)

法科大学院のあり方に関する、パブリックコメントです。

(過去の関連記事)
■法科大学院「適性試験」で、一律に入学者の足切りを実施するのは適切か?
■「Aが多すぎる」 大阪市立大学法科大学院の成績評価に、文部科学省が懸念?
■受験者減 揺れる法科大学院
■平成20年新司法試験の結果が明らかに 各法科大学院の合格率は?

合格率が非常に低い大学院の扱いや、修了者の質の維持など、法科大学院については様々な議論が行われています。
そうした一連のトピックに対する意見を募集しているわけですね。

それ自体は素晴らしいことなのですが、色々とやっかいな部分もあります。

まず、関連資料は、文部科学省高等教育局専門教育課にて配布されているそうですので、取りに行かなければなりません。

意見の提出手段は、郵送・FAX・電子メールのいずれか。
ここ問題なのは、意見・情報の受付開始日が2009年4月11日であるのに対し、締切日がなんと4月15日、しかも「必着」だということです。

これに対応できる人がどのくらいいるのでしょうか……。
そもそも電子政府のサイトなんて、毎日チェックしている人は少ないでしょうから、これでは気づいたときには既に終了していたという人が大半だと思います。

意図的だとは思いませんが、せっかくパブリックコメントとして意見を集めるのですから、もうちょっと余裕を持っていただければいいのになぁ、と感じました。
ちょっともったいないです。

この案件は、「行政手続法に基づく手続」ではなく、「任意の意見募集」ということになっていますから、やらないよりはいい、というくらいの話なのかもしれません。
ただ、「パブリックコメントを受け付けていた」という事実だけは残ります。
極端に言うと、後で議論が起きたときに、これで

「パブリックコメントを受け付けていたのですから、意見があるのならその時に言えば良かったじゃありませんか」

……って、手続き論的には、言えてしまいます。

もっとも、それで納得される方は少ないでしょう。仕組みはあるけど、残念ながらパブリックコメントの主旨のとおりには、機能していないのかもしれません。

ちょっと話はそれますが、以前にも、ちょっと考えさせられてしまう例を目にしたことがあります。

小泉政権のころ、「義務教育費国庫負担制度」の在り方を巡り、政府内で議論が白熱したことがありました。

「義務教育費国庫負担制度」というのは、義務教育に関わる公立学校教員の給与の1/2を、国が負担するという制度。
「小さな政府」の実現を主張する内閣が、この制度を廃止する(つまり裁量をすべて地方に移譲する)方針を打ち出し、制度維持を主張する文部科学省と真っ向から対立したことがあったのです。

政策の是非はここでは置いておきますが、その時に印象的だったのが、文部科学省が打ち出した、「国民の皆様からのご意見概要」という調査結果。
国民の皆様に意見を求めた結果、義務教育費国庫負担制度の在り方について、「ほぼ100%が『堅持』の結果となっている」という結論でした。
様々なところでこの調査結果がアピールされていて、おぉ~、とマイスターも思いました。

でも、元々の調査報告書をよく見てみたら、なんと回答者の69%が教員、19%が公務員という内訳だったのです。

■「国民の皆様からのご意見概要(詳細版)」(文部科学省)

3番目に多かったのは「団体職員」で、回答者のうち、会社員はなんとたったの0.4%。
そりゃあ、制度を堅持せよっていう結論が出ます。

でもこれは、報告書を細部までじっくり読まないと、わかりません。
そうした実情は表向き目立たないようにされ、あくまで「国民の皆様からのご意見」という部分だけが強調されていたのです。

学術的にも、制度的にも「正しい」プロセスで集められた回答ですし、回答者が偏ったのは調査する側の責任ではないかもしれません。
でもこの結果を「国民の意見」という位置づけで総括して扱っていいのか、という疑問は残ります。

手続き的には問題ないけれど、結果の扱われ方には疑問を感じる。
こういう事例って、実は結構、多いんじゃないでしょうか。

そんなわけでマイスターは、行政やメディアが「国民はこう考えています」とか、「世論は……」という言葉を使っているときは、身構えて聞いてしまいます。

そこにはしばしば強引なストーリー展開や、調査する側の意図が隠されがち。
あるいは、今回のパブリックコメントもそうかもしれませんが、「そもそも意見の集め方に無理がある」という事例もあるでしょう。
いずれにしても、本当の国民の意見が反映された結果だと言えるのかどうか、微妙になってきます。

まったく国民の声を集めないよりはいいのかもしれませんが、こうした調査の結果については、発表する方も、読む方にも、色々と注意が必要かもしれません。

以上、パブリックコメントを見ながら、そんなことをふと思ったマイスターでした。

※この記事は、現役高校生のための予備校「早稲田塾」在籍当時、早稲田塾webサイト上に掲載したものです。

1 個のコメント

  • 「国民の意見を反映する仕組みは作ってあるけど、実際コメントは少ないのでこうしました」という形でしかパブリックコメントが活用されていないのは残念なことですね。
    まあ、行政側からすると自由に意見を受け付けるとあまりにも調整が難航するからこういう形にしているんだとは思いますが、もうちょっと広く国民に意見を求めるようなものであってもいいような気がします。