資産運用の損失で、学園の運営に「大きな支障」が出ている法人が

マイスターです。

昨日の記事では、アメリカでの、大学が経済から受ける影響についてご紹介させていただきました。

さて日本でも、この未曾有の金融不況下で、運営に深刻な影響が出ている大学が出てきているようです。

【今日の大学関連ニュース】
■「4大学法人『運営に大きな支障』 資産運用損失で」(47NEWS)

世界的な金融危機の影響を受け、私立大を運営する大学法人のうち、4法人が資産運用の損失で、資金繰りの見直しなど運営に「大きな支障が生じている」と、日本私立学校振興・共済事業団の調査に答えたことが17日、分かった。
デリバティブ(金融派生商品)取引などで駒沢大などが多額の損失を出した問題を受け1-2月に、大学や短大などを運営する計668法人を対象に調査した。
2008年度の資産運用をめぐり、8つの大学法人は運営に「大きな支障が生じる恐れがある」と回答。一方で、「全く支障がない」は297法人、「ほとんどない」は229法人で合わせて98%に上り、影響は一部にとどまっていることも分かった。
(上記記事より)

日本でも、資産運用で手痛いダメージを受けている大学が少なくないと言うことは、過去の記事でもご紹介させていただきました。

(過去の関連記事)
■駒澤大学 資産運用失敗で154億円の損失
■【セミナーのご紹介】 「大学法人資金運用のリスク管理と説明責任」

そんな状況を受け、日本私立学校振興・共済事業団が1~2月に調査を実施したそうです。
その結果が、上記の記事です。

大多数の法人は(事実かどうかはさておき)ほとんど支障はないと回答しているそうですが、中には無視できない影響を受けてしまっている大学があるようです。

この調査結果、他のメディアでも取り上げられていました。

13法人からは「人件費などの削減が必要」「施設整備計画を見直す」などの回答があった。08年度にデリバティブ取引を行っているのは69法人。うち31法人は「リスクヘッジ以外の目的で運用している」と回答。また「仕組み債」と呼ばれる複雑な金融商品(元本保証なし)を保有しているのは114法人で、うち33法人は「満期保有以外の目的で運用している」と答えた。
「私立大:経済危機で資産運用悪化、2法人「教育に支障」--アンケ」(毎日jp)記事より)

今後5年間の法人運営に与える影響については、4法人が「大きな支障が現実に生じている」、8法人が「大きな支障が生じるおそれがある」と回答。人件費の削減や施設整備計画の見直しなど、教育研究活動への影響を懸念する法人も13あった。調査結果を踏まえ、文部科学省では「学生に影響が及ばないよう、国と事業団で連携し、経営指導にあたらなければならない」としている。
「私大、金融取引で含み損」(読売オンライン)記事より)

記事によって、調査対象となった法人の数が違っていたりするので、誤りがあるかも知れませんが、参考程度にまとめると、以下のような感じ。

■大学や短大などを運営する計668法人を対象に調査。約8割の538法人が回答
■「想定外の損失の出る恐れがあるデリバティブ取引を行っていた」……69法人
■「金利の変動などに備えるためではなく、投機目的」……31法人
■「元本の保証されない『仕組み債』を保有」……114法人
■「大きな支障が現実に生じている」……4法人
■「大きな支障が生じる恐れがある」……8法人
■「ほとんどない」……229法人
■「全く支障がない」……297法人
■「人件費などの削減が必要」「施設整備計画を見直す」などと回答……13法人

巨額の損失を最初に発表した駒澤大学をはじめ、これまで報道されてきた大学はどこもみな、

「教育研究には支障がない」

……と説明していました。
(実際には、そんなはずないでしょう、と思える事例もありますが)

今回の調査結果で、「大きな支障が現実に生じている」という回答が複数の法人から寄せられているというのは、それなりに大きな衝撃です。

この「大きな支障」にも色々あるでしょう。
最悪なのは、学園の存続に関わるレベルですが、そこまで行かなくても、研究費や奨学金の支出を見直したり、設備投資を延期したりといった影響は出ているかも知れません。
直接的であれ、間接的であれ、とにかく何らかの形で、教職員や学生に小さからぬマイナスの影響を与えてしまっているのだと思います。

個人的には、「大きな支障が現実に生じている」、「大きな支障が生じる恐れがある」の計12法人で、理事長をはじめとする経営陣の責任問題が、きちんと追及されているのかどうかが気になりました。

(過去の関連記事)
■駒澤大学 資産運用失敗の責任で理事長を解任

駒澤大学の場合、理事長が解任されています。
大学の教育研究に支障はないとのことでしたが、損失の大きさを鑑みてのことでしょう。
これは、至極真っ当なガバナンスのあり方だと思います。

逆に、経営上の問題が発生したとき、経営陣の責任がきちんと追及されない大学は、今後も同じような問題を起こすリスクを孕んだままだと言えるでしょう。
不況や少子化などの市場環境に関係なく、損失を出したのであれば、経営陣は責任を取るのが常識的な考え方。
大学経営においても、ダメージの度合いに合わせて、トップをはじめとする理事達の責任を明確にすべきだと思います。

ところで話は少しずれますが、不祥事を起こしたり、巨額の損失を出したりした企業のトップが、「問題を解決するまで私は辞任しません」と会見で表明していたりすることがありますね。
状況にもよりますから一概には言えませんし、人によって評価は違うと思いますが、基本的にはあれはおかしな話です。
だって、「その人では問題を解決できなかった」ために、問題が発生しているのですから。

ああいった企業の場合、経営者の周囲は、「おまえのせいでこうなったんだろうが~!」と、心の中で突っ込んでいるのではないかと、マイスターはニュースを見ながらいつも思います。
この辺りは、大学経営でも事情は同じでしょう。回答を寄せた12法人の経営陣が、まだ同じ面々のままなのだとしたら、危ういです。

また、以前の記事に対して、寄せていただいたコメントの中に、以下のようなご指摘がありました。

理事長の解任は致し方ないと思うが、言い方を変えれば、解任で解決するとも言える。
企業であれば、経営のトップは私財をなげうってでも、損失を補填しなければならない。
しかし、学校法人のトップは、失敗したら辞めればいいぐらいにしか考えないから、善し悪しは別にして、あまり深く考えずに行動をする場合が多い。

私財を投げ打つかどうかは、企業や、トップの人となりによっても違うので、一概には言えません。
ただ、「大学経営者」の選ばれ方や、その資質を考える上で、興味深いご指摘だとは思います。

大学の場合、理事長をはじめ経営陣の多くは、教授です。
仮に理事職を解任されたとしても、その方は一教授に戻るだけ。人にもよりますが、中には、経営に失敗しても、「運が悪かった」くらいに捉える方だって、いるかも知れません。
(もちろん、そんな人ばかりではないと思いますが……)

考え出すとキリがありませんが、これから先、そんな議論も様々なところで出てくるのかな、と思ったりします。

以上、マイスターでした。

※この記事は、現役高校生のための予備校「早稲田塾」在籍当時、早稲田塾webサイト上に掲載したものです。