朝食毎日食べる「ごはん派」ほど進学への目的意識高い、って本当?

マイスターです。

各種の調査結果を見るのが好きです。
毎年楽しみにしているのは、OECDの「Education at a Glance」。
海外と日本の比較を行う上で欠かせないデータの宝庫で、眺めているだけでも、様々な発見があります。

調査結果が、普段抱いている先入観を覆してくれたり、意外な事実を示してくれたりすることは少なくありません。

ただ、たまに、「?」と思う調査結果に出遭うこともあります。

【今日の大学関連ニュース】
■「朝食毎日食べる『ごはん派』ほど進学への目的意識高い」(アメーバニュース)

全国農業協同組合中央会(JA全中)の調べによると、朝食を毎日食べる「ごはん派」ほど進学への目的意識高いことが分かった。
JA全中は、全国の大学受験を控える高校3年生男女各300人を対象に、『大学受験を控える高校三年生の朝食と学習の実態調査』を実施。その結果、進路を選ぶ基準は「やりたいことができる」50.3%、「学校の偏差値」22.3%など、学習意欲を表す回答が1位、2位を占めた。1位「やりたいことができる」を朝食の主食別、摂食頻度別でみると、主食別では「ごはん派」が57.1%と半数以上という結果が出た。また、摂食頻度別では「毎日朝食を食べる」という回答が74.8%と8割近くを占めた。この結果から、朝食で「毎日ごはん」を食べる人の方が学習意欲が高い傾向にあると言える。
(上記記事より。強調部分はマイスターによる)

■「7割以上が朝食食べる 大学受験生の実態調査 -JA全中」(農業協同組合新聞)

進路を選ぶ基準は(1)やりたいことができる50%(2)偏差値22%(3)学校の知名度の高さ10%など。
(1)と(2)の回答者はご飯派が半数以上で、毎日朝食を摂る人が8割以上という結果も出た。つまり毎日ご飯を食べる人ほど学習意欲は高いということになる。
(上記記事より)

JA全中(全国農業協同組合中央会)による、その名も『大学受験を控える高校三年生の朝食と学習の実態調査』。
さすがJA、ユニークな調査を行っています。

このほかにもJA全中は、高齢者や小学生を対象にした同様の調査を実施しており、今回はシリーズの3回目にあたります。

■第1回高齢者の朝食実態調査結果(PDF)
■第2回子どもの朝食実態調査結果(PDF)
■第3回受験生の朝食実態調査結果(PDF)

最近、「ご飯を食べよう」というキャンペーンをよく見かけます。
以前の記事でもご紹介しましたが、農水省を中心に、「米」の消費拡大を狙った広報活動が積極的に展開されている様子。

■「新社会人、新入生に『朝食のススメ』 北陸農政局、企業や大学を訪問」(北國新聞)
■「めざましごはん」(農林水産省)

あくまでもパンじゃなくて「ごはん」=米、の効用を強調するところが、色々な世の中の事情を感じさせます。
冒頭でご紹介したJA全中の調査も、(調査結果はさておき)基本的にはこうした国の政策を後押しするために行われているものかと思います。

今回行われた3つの調査の報告書を見てみると、

「“ごはん派”はおかず3 品、“パン派”は2 品。“ごはん派”の方が健康志向」
「“ごはん派”の母親は、栄養バランスを重視!」
「朝食に時間をかけるのは、“ごはん派”!」

……などなど、「ごはん派 VS パン派」の抗争のようなキャッチフレーズに満ちていることからも、「あぁ、お米を食べて欲しいのだな。そういう前提を背負った調査なのだな」という想いは伝わってきます。
(実際には、両者の数値にあまり差がない項目もあるのですが)

お米の「ごはん」に様々なメリットがあることは知られていますし、マイスター個人としても、お米のご飯の方が好き。
ただ、こうした調査結果を読んでいると逆に、ふと、「自分はだまされてないだろうか」と不安な気持ちになってくるから不思議です。

で。

今回の調査報告の中でも、もっとも「えぇー!?」と思わせるのが、冒頭の記事で紹介されている部分。

進路を選ぶ基準は“やりたいことができる”、“学校の偏差値”など学習意欲を表す回答が1 位、2 位を
占めました。1、2 位それぞれを朝食の主食別、摂食頻度別で見てみると、主食別ではいずれも“ごはん派”が半数以上という結果が出ました。また摂食頻度別では、“毎日”朝食を食べるという回答が8割近くを占めました。この結果から朝食では“毎日ごはん”を食べる人の方が学習意欲は高いと言えます。
「【プレスリリース】第3回受験生の朝食実態調査結果(PDF)」(JA 全中)より)

個人的には、色々と突っ込まずにいられません。

パンよりも「ご飯」を朝食に食べる人の方が、より「やりたいことができる」大学を選んでいる。
衝撃の事実です。

「世間的なブランドイメージよりも、中身で進学先を選んでくれよ!」とお嘆きの大学関係者の皆様は、地道なPR活動は適当に切り上げ、ぜひ地元の受験生達にお米の朝食を勧めてください。

■お米のごはんを食べると、十分なブドウ糖が脳に行き渡るので、エネルギーに満ちあふれた活発な毎日を送ることができる
   ↓
■学習意欲がある

……みたいな感じで、強引に理解できなくもないのですが、それにしたってなんだか調査結果の書かれ方は飛躍している感じが。

というか、マイスターが思うにこれ、

「ごはんを食べたら、やりたいことができる大学を選ぶようになった」

のではなく、

「パンより手間がかかるごはん食を毎朝きちんと食べられるような家庭は、生活の基盤が比較的しっかりとできている。そんな家庭で育っている子どもは、進学についても高い意識を持っている」

という方が実態に近いんじゃないかと思うのですが、どうなのでしょうか。

(実際、これら3レポートの他のデータは、ごはん食の家庭の方が栄養バランスを重視し、毎日しっかり朝食を取り、時間をかけて、家族みんなで食事を取るような傾向にあることを示しています)

レポートではその辺りの解説をすっとばして、「この結果から朝食では“毎日ごはん”を食べる人の方が学習意欲は高いと言えます」と結論を急いでいます。
なんだかちょっと強引な気が。
(後述しますが、さらに悪いことに、他メディアがこの結論部分だけを取り上げて報道しているため、誤解を生みそうです)

第一、単純な「ごはん食 VS パン食」の結果のように語られてしまうと、パン食のアメリカやヨーロッパよりも、わが国は「やりたいことができる」大学選びをする受験生が多いということになってしまいそうです。
おそらく実際には、そんな結論は出せませんよね。

さらに、

進路を選ぶ基準は“やりたいことができる”、“学校の偏差値”など学習意欲を表す回答が1 位、2 位を占めました。1、2 位それぞれを朝食の主食別、摂食頻度別で見てみると、主食別ではいずれも“ごはん派”が半数以上という結果が出ました。また摂食頻度別では、“毎日”朝食を食べるという回答が8割近くを占めました。この結果から朝食では“毎日ごはん”を食べる人の方が学習意欲は高いと言えます。
「【プレスリリース】第3回受験生の朝食実態調査結果(PDF)」(JA 全中)より。強調部分はマイスターによる)

……とありますが、果たして<偏差値で大学を選ぶ人 = 学習意欲が高い人>なのでしょうか。
というかこの回答、一番多かった「やりたいことができる」と、むしろ真逆の選び方であるような気がしますが……。

突っ込みどころ満載です。

実際にはおそらく、毎朝ごはんを食べることによって、「大学はやりたいことや偏差値で選ばなきゃ!」みたいな変化が起きるわけでは、ないでしょう。

たとえ毎朝ごはんを食べていても、保護者や周囲の人達が偏差値絶対主義で、そういう指導を学校で受けていたら、やりたいことは気にせず、偏差値的な大学の選び方をすると思います。
逆にパン食が中心の家庭であっても、周囲の環境次第で、大学の選び方はいかようにも変わると思います。当たり前ですが。

さて、改めて冒頭の報道を見てみると、JA全中の調査レポートを、ほぼそのまま書き写したような内容になっていることがわかります。
これらの記事を目にした保護者の方には、「ご飯の方が進学に良いんだわ!」と思う方もいらっしゃることでしょう。
(※もちろんこうした報道がすべてではなく、微妙な部分は省き、広く納得を得られるであろう結果だけを紹介している記事もあります)

ごはんに罪はないけれど、こうした一連のPRの流れには、ちょっと疑問も覚えます。

以上、冒頭の報道から、そんなことを考えたマイスターでした。

※この記事は、現役高校生のための予備校「早稲田塾」在籍当時、早稲田塾webサイト上に掲載したものです。

2 件のコメント

  • 大学関係の皆さん、予備校のデータや願書の数で一喜一憂することなく、また、大学行政学等で自己満足することなくOECDのデータや人口統計などをしっかり眺めて次の世代のことを考えましょう。

  • > 1位「やりたいことができる」を朝食の主食別、摂食頻度別でみると、主食別では「ごはん派」が57.1%と半数以上という結果が出た。
    というのを見て、一般的に「ごはん派が多い」のが1位に反映されているだけじゃないのと思いました。案の定、設問2では「受験生の朝食の主食は“ごはん”(56.9%)が最も多くなっています」とありますね。