大学生のための「食育」 ちょっと画期的な実践例

マイスターです。

現代人にとって、身近であり重要なテーマの一つが、「食」。

メタボに怯えてみたり。
外食やコンビニ弁当ばかりで栄養は大丈夫だろうかと、思い出したように心配してみたり。
せめて副菜をと考えてみるものの、国籍不明で食べ合わせが怪しいメニューになってしまったり。
気づけば3食のうち2食はパソコン作業しながら食べる生活を送っていたり(え、マイスターだけ?)。

美味しいものを食べながら、健康で文化的な食生活を送りたい! という思いは誰にもあるものの、油断すると「健康」や「文化的」の部分が失われがち。それが、便利な現代社会です。

こんな状況の中、昨今では、「食育」という言葉が注目を集めています。

平成17年に成立した「食育基本法」は、縦割りな各省庁に「食育」という横串を通す法律。
子供に対しては、家庭だけでなく学校教育でも食育を行うことや、「食品の製造、加工、流通、販売又は食事の提供を行う事業者」(農林水産業含む)のほか、自治体や各種NPOなどなど、多くの関係者が食育を実践することなどが謳われています。

学校の中で食育を実践する「栄養教諭」なんて制度も誕生しました。家庭科だけでなく、理科や社会などの各科目担当と連携して「食育」を展開するためのキーパーソンです。

この食育基本法が面白いのは、

(国民の責務)
第十三条 国民は、家庭、学校、保育所、地域その他の社会のあらゆる分野において、基本理念にのっとり、生涯にわたり健全な食生活の実現に自ら努めるとともに、食育の推進に寄与するよう努めるものとする。

……と、子供に限らず大人も含めて、「生涯にわたり」、「食生活の実現に自ら努める」ことを国民の責務と定めているところ。
国民として、マイスターは反省する部分が少なくありません。

さて、生涯の中で「食生活が乱れる」場面として注目を集めがちなのが、大学生時代。

食にあまりお金をかけたくないと考えるあまり、バランスを欠いたメニューで過ごしたり。
かと思うと、逆に暴飲暴食を繰り返したり。

社会に出る前に、せめて大学生のときに、正しい食生活を教えなければ……と考える関係者は少なくないようです。

今日はそんな取り組みをまたひとつ、ご紹介したいと思います。

【今日の大学関連ニュース】
■「大学生にも“食育”――学食利用内容を親に通知/1人暮らし向け料理教室」(NIKKEI NET)

朝ご飯は抜きで、昼食は1品だけ――。とかく偏りがちな学生たちの食生活をただそうと、各大学が「食育」に取り組み始めている。(略)「過保護」との指摘もあるが、大学側は真剣そのもので「学生時代はきちんとした食生活を身につける最後のチャンス」と訴えている。
「同じ物ばかり食べていると親に注意されます」――。甲南大(神戸市東灘区)の1年生、吉川真司さん(19)は頭をかく。保護者の元に月に1回、こんな紙が郵送されてくるからだ。
「○月×日昼 飲料・デザート/牛肉玉子丼/総菜 490円 802.4キロカロリー 塩分3.7グラム。△日昼 チキンカツ/ライスM……」。書かれているのは吉川さんが学生食堂で食べたメニューなどの一覧だ。
同大学では、学生食堂の客単価が年々減っており、2007年は333円。生協の担当者は「これではうどん1杯しか食べられず、バランスのいい食事なんてとても取れない」と嘆く。
そこで昨年4月から始めたのがメニュー通知。学生食堂での食事代をプリペイド式のカードで支払うと、専用のサーバーにメニューやカロリー情報が集められ、希望する保護者らの元に届く。
保護者に食生活の「チェック役」を務めてもらおうという作戦で、約100人が利用。「子どもがきちんと大学に通っているかも分かる」との声もあったという。
(上記記事より)

安くておいしい、便利な学食。
副菜などを自由に組み合わせられるところが多く、ひとり暮らしをしている学生にとっては、「最近野菜を食べてないからなぁ」なんて言って栄養補充できる点も魅力です。

しかし学生がトレーに何を乗せているかを観察してみると、実際には最も安いラーメンなど一品だけしか食べていなかったり、「サラダと副菜の2品だけ。ご飯はなし」みたいに極端な組み立ての女子学生がいたり。
マイスターですら、心配になってしまうような学生をちらほら見かけます。

大学と連携して学生の健康を守るのも、学食の務め。
というわけで、上記のような取り組みも行われているのですね。

甲南大学の「メニュー通知」というのは、初めて聞きましたが、すごい取り組みです。
最近では現金ではなく、ICカードなど様々な方法で支払いをすることも多いですから、こんなこともシステム上は可能なのでしょう。

一ヶ月分のメニューやカロリー情報を集計してくれるというのは、何よりもまず、本人にとってありがたいサービスだと思います。マイスターも利用したいです。
(これ、大人のニーズがありそうです。外食のチェーン店などでも、こうしたサービスを導入してくれるところがあったら個人的には利用するのですが、どこか導入していただけませんでしょうか?)

保護者への通知は、過保護と思われる方もいるかもしれません。
ただ、ものは考えようです。

昨今では、「この子はひとりじゃ何もできないし、心配だから」と言って、親元から通える大学にしか進学させないという保護者も少なくないと聞きます。
自立したいと思っている子供を、保護者が離さないケース。これこそが過保護です。

そんなとき、この通知サービスは

「この大学は、私が何を食べたのか、ちゃんとお母さんに送ってくれるから。ほら、安心でしょ?
だからひとり暮らししても大丈夫だよ」

……と、本人が保護者を説得するのに使えます。
「過保護だから」といって何もしないのも、食育基本法の主旨から考えると無責任ですし、このくらいなら、学生の自立を確保するための条件として許せる範囲かなと個人的には思いますが、いかがでしょうか。

またひとり暮らしの場合、ちゃんと本人が大学に通っているかを心配する保護者の方も少なくないと思います。大学に問い合わせがいくケースも、実は結構いるのではないでしょうか(大学側から保護者に、電話で欠席した旨を伝えている大学すらあります)。
その点、この通知サービスがあれば、少なくとも学校に行っていることはわかります。大学も保護者の方も本人も、不必要にやきもきしなくて済みます。
大学のスタッフがわざわざ間に入って連絡するよりも、学生と保護者の間で必要最低限度の安心が保たれる仕組みがあるのであれば、そちらの方が過保護ではないとマイスターは思います。

学生に料理を教えているのは桃山学院大(大阪府和泉市)。題して「ひとり暮らしのための料理教室」。07年4月以降、計5回開催した。作るのはインスタントラーメンやレトルトご飯を使った焼き飯など簡単なものばかり。
参加者の男女比はほぼ半々。同大学生課の担当者は「弁当などを買って食べる時も、野菜を添えるなど工夫をしてバランス良く栄養を取る習慣を身につけるきっかけになれば」と話す。
(上記記事より)

↑記事では、こんな取り組みも紹介されていました。
こちらも、読む人によっては

「どうしてインスタントラーメンやレトルトご飯を素材に使うんだ!? そんなことでいいのか! もっとちゃんとしたレシピを教えるべきだ」

……なんて思われる方もいるかもしれません。
でもまずは、「弁当などを買って食べる時も、野菜を添えるなど工夫をしてバランス良く栄養を取る習慣を身につけるきっかけに」するのが目的なのですよね。

自分自身の体験もあわせて考えるに、料理をしたことがない人というのはたぶん、「キッチンに向かえる」ところに辿り着くまでのハードルが高いのではないでしょうか。
初心者のためのレシピは書店にたくさん並んでいますから、この桃山学院大学の取り組みのように、まずはその前、「レトルトと料理の間」の部分を橋渡しするような取り組みがあると良いのかもしれませんね。

以上、今日は大学で行われている食育の取り組みをご紹介させていただきました。

マイスターでした。

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※保護者の方々の「食育」に関する関心は高く、早稲田塾でも高校生の保護者向けに、食育を考える特別公開授業を実施するなどの取り組みを行っています。

■「親ができること、成すべきこと ~この時代だからこそ、“食育”を考える~」(SUPPORTERS!)

※この記事は、現役高校生のための予備校「早稲田塾」在籍当時、早稲田塾webサイト上に掲載したものです。

1 個のコメント

  • 一人暮らしをしている
    大学生の栄養がうまくいってない気がします。
    僕は大学生ですが、キャベツのサラダを作って
    毎日食べてます。