内定取り消し報道が続く

マイスターです。

■「内定取り消し」報道から就職の現状を考える

↑サブプライムローンに端を発する不況から、内定取り消しが起きているということを、以前の記事でご紹介させていただきました。

その後も、内定取り消しに関する報道が相次いでいます。
ここ数日の間だけでも、大変な数のニュースがあがっているようです。

【今日の大学関連ニュース】
■「新卒内定取り消し331人 『非正規』3万人失職も」(Asahi.com)

来春就職予定の大学生や高校生などで、企業から内定を取り消されたのは少なくとも331人にのぼることが28日、厚生労働省のまとめで明らかになった。企業業績の悪化が広まる中、今後さらに増える可能性もある。また同省は、今年10月から来年3月までに、期間満了に伴う「雇い止め」や契約を中途解除され、職を失う非正規労働者は全国で約3万人にのぼる見込みだと発表した。
(略)内定取り消しの内訳をみると、大学生や短大生などが302人、高校生が29人だった。内定を取り消した企業は87社で、業種別では不動産業の84人、サービス業の66人、製造業の59人が目立っている。全国10の地域別では南関東(東京都と埼玉、千葉、神奈川県)が140人と最も多く、九州が60人と続く。取り消しの理由は、倒産など経営破綻(はたん)によるものが116人で、経営の悪化が212人、不明が3人だった。
過去には、山一証券が自主廃業した97年度に、同社の採用予定者490人を含む1077人が内定を取り消された例がある。ここ数年は2けたで、昨年度は94人だった。今回の数字は年度途中の集計だが、380人が取り消された01年度の就職氷河期以来の水準となる。
今後もさらに取り消しが増える可能性があるため、同省は47都道府県に1カ所ずつ特別の窓口を設けて学生らの相談に対応する。窓口の電話番号などは同省のホームページで公開する。
(上記記事より)

■「企業から内定を取り消された大学生や高校生、全国で300人超 この10年間で最悪に」(FNN)

■「大卒300人の内定取り消し 山一破たん以降で最多」(47NEWS)

■「内定取り消し、全国で331人=特別相談窓口を設置-厚労省」(時事ドットコム)

■「内定取り消し最悪ペース 331人「山一危機」上回る可能性」(FujiSankei Business i.)

■「内定取り消し、来春卒業生331人…目立つ南関東」(読売オンライン)

「内定取り消し」された人数がふくらみ、現在、331人にのぼっているとのこと。
そのうち、大学生は302人を占めます。

厚生労働省の調査結果、および今後の対応については、以下から閲覧できます。

■「新規学校卒業者の採用内定取消しへの対応について」(厚生労働省)

全国のメディアも、地元で内定取り消しが起きたということを一斉に報じ始めています。
具体的な大学名も紹介され、いよいよ「他人事じゃない」という危機感が伝播してきているようです。

■「景気悪化による採用内定取り消し、弘大でも報告」(陸奥新報)

■「内定率 伸び鈍化 県内でも就職戦線に影 学生6人取り消し」(読売オンライン)

■「兵庫労働局:心配される内定取り消し、特別相談窓口設ける /兵庫」(毎日jp)

■「内定取り消し道内7人 来春学卒者 すべて道外事業所」(北海道新聞)

■「鹿児島大 『景気後退、早めの就活を』 3年生対象に説明会」(西日本新聞)

■「卒業間近 学生ぼうぜん 東北でも内定取り消し」(河北新聞社)

■「25人が内定取り消し 来春就職県内学生 埼玉労働局、企業指導へ」(東京新聞)

■「非正規労働:半年間で308人失職へ 内定取り消し6人確認--厚労省調査 /北海道」(毎日jp)

このように、報道を挙げだしたらキリがありません。
全国津々浦々、様々なところで起きている現象です。

厚生労働省によれば、「業種別では不動産業の84人、サービス業の66人、製造業の59人」とのこと。
不動産業界では、以下のように大規模な取り消しを起こし、大きく報じられている事例もあるようです。

■「学生53人の内定取り消し 日本綜合地所、労組が抗議」(47NEWS)
■「日本綜合地所、53人内定取り消し 学生側、団交要求」(Asahi.com)
■「内定取り消しの学生「怒りより悲しみ」 日本綜合地所53人」(MSN産経ニュース)
■「日本綜合地所、53人内定取り消し 一部学生が団交へ」(NIKKEI NET)

こうなってくると、企業に対して非難が集中しそうですが、ただ、

8月に経営破綻(はたん)し、民事再生法の適用を申請した広島市の不動産会社「アーバンコーポレイション」。4月に広島や東京の大学生計11人に来春採用の内定を出したが、8月中に1人ずつ面談して取り消しを伝えた。同社広報は「08年3月期決算は過去最高益。4月の時点でこのような事態は全く予想しておらず、どうしようもなかった」と話す。
「「就職氷河期」再来か 歯止めかからぬ「内定取り消し」」(Asahi.com)記事より)

……なんて報道を見ると、企業の方で対応できることにも限界はあるのだろう、という気もします。

ちなみに報道を見ていくと、不動産やサービス業の他、IT系など、内定取り消しは色々な業種に渡っていますので、他の業種なら安全というわけではないでしょう。
不動産業界は、金融による打撃を直接的に受けやすい、ということはあるかと思いますけれど。

せめて内定を取り消した学生には何らかの補償をしてほしい、と思いますが、↓実際には補償がなされなかったというケースもある様子。

■「採用内定取り消し…その時学生は 突然の通告、補償もなく」(読売オンライン)

厚生労働相は、

舛添要一厚労相は閣議後の記者会見で、「これは違法ということを企業、社会、大学に対して周知徹底して、学生諸君には、きちんと対応するので泣き寝入りするなといいたい。日本経団連に対しても、きちっと言う」と述べた。
「内定取り消し300人、失職の非正規3万人 緊急雇用対策本部設置」(MSN産経ニュース)記事より)

……とコメントされていますが、企業だけが悪いのかというと、そうでもないような気もします。
企業側は、会社をつぶさないために内定取り消しを行っているのであって、「きちんと対応」させた結果、その企業がつぶれるということも考えられそうです。

ちなみに、一部の金融機関で、内定取り消し者に数百万円の慰謝料を支払っているという噂も飛び交っているようですが、↓この記事を見る限りデマの可能性が高いですから、大学生の皆様は安易に信じ込まないように。

■「500万?600万?飛び交う噂 外資「内定取り消し」慰謝料」(J-CASTニュース)

↓また文科省は、ハローワークや大学で連携をすること、内定取り消しを受けた学生の支援をすることなどを促しているようです。

■「文科省、内定取り消し学生支援へ 大学などに連携促す 」(NIKKEI NET)

どんな企業も、「内定取り消し」なんてしたくないのは当然。
そんなこんなで、2010年度の企業の採用活動は、かなり抑えられることになりそうです。

■「就職事情急激に悪化」(読売オンライン)

個人的には、以前の記事でも述べたとおり、卒業の何ヶ月も前に「内定」という資格を得ねばならず、またそのために様々なものを犠牲にしなければならないという、今の日本の新卒一斉採用のあり方自体を改めないと、根本的な解決にはならないのではないかという気がするのですが、どうなのでしょうか。

以上、マイスターでした。

※この記事は、現役高校生のための予備校「早稲田塾」在籍当時、早稲田塾webサイト上に掲載したものです。