大学設置基準が厳格化?

マイスターです。

「教育基本法」や「学校教育法」など、教育関係には、メディアにもしばしば登場する重要な法律がいくつかあります。
しかし大学関係者にとってより気になるのは、文部科学省の省令である「大学設置基準」の方ではないでしょうか。

大学設置基準には「これこれの環境を整備せねばならない」式の具体的な数値がずらりと並んでおり、何かにつけ、意識せざるを得ません。
(ちなみに、大学設置基準関連の実務に通じている職員は、教員の方々から頼りにされます)

さて、その大学設置基準を巡って、こんな報道が流れました。

【今日の大学関連ニュース】
■「文科省、大学設置基準を厳格化へ 質の保証目的」(47NEWS)

文部科学省は26日までに、教員の定員数や資格、授業方法、施設の要件など、大学を開設するのに必要な最低条件を定めた「大学設置基準」を厳しくする方針を固めた。大学の質の保証が目的で、中教審の審議を経て関係省令改正を目指す。
設置基準は大学の多様化を進めるため、1991年改正で規定を削減。規制緩和の流れもあり、90年で507校だった大学数は2007年には756校に増えた。
ところが最近は、専任教員の多くが大学以外の業務に従事していたり、図書館などの施設が不十分だったりするなど質に懸念がある状態となり、審査する大学設置・学校法人審議会から、基準を厳しくするよう求める意見が出ていた。
文科省は(1)校舎の広さなど数値的な基準がない大学院大の施設要件(2)大学以外に本業を持つ教員の割合や勤務日数-などを、設置基準で明確にすることを検討。
設置審議会による審査スケジュールの延長や、大学が届け出た計画通りに運営しているかを確認する調査方法の見直しも検討していく。
(上記記事より)

■「大学設置基準を厳格化、教員に最低勤務日数 文科省など検討」(NIKKEI NET)

大学設置基準は大学や学部を新設する際に必要な設備や教員、カリキュラムなどについて定めた規定。規制緩和の流れの中で1990年代以降、順次緩められてきたが「認可されやすくなったと思うのか、責任感を欠いた準備不足の申請が増えた」(申請を審査する大学設置・学校法人審議会)との声が出ている。
(上記記事より)

大学設置基準の大綱化、おおざっぱに言うと「制度上の制限を緩める」変更がなされたのは、1991年。
その代わり、大学が目的に合わせた教育を行っているかを第三者機関によって評価していく「認証評価」の仕組みが導入されるなど、様々な原則が変わりました。

大きく言うと、「文部科学省がルールを定め、それに沿った大学こそが、質の良い大学である」という方針から、「設立後、継続的に教育の内容をチェックされ、それに応え続けることで、大学の質を担保する」という方針に切り替えたということです。
日本の高等教育において、大きな方針転換といえる動きでした。

この大綱化に対する評価は、人によって異なるでしょう。批判する意見もたくさんあると思います。

そんな批判に関係があるのかもしれませんが、文科省は少しずつ、大学に対する政府の管理権限、コントロールの範囲を元のように強化する方向にあるようです。
これについても、賛否両論でしょう。
個人的にも、確かに問題のあるケースも報じられてきておりますし、改善しなければならない点は多々あると思います。

ただ、規制緩和は失敗でしたということなら、そう発表して根本的なところから議論をし直せばいいのにそれはせず、曖昧な形で少しずつ権限を戻していくという点に、マイスターは少し違和感も覚えます。

例えば、

最近は、専任教員の多くが大学以外の業務に従事していたり、図書館などの施設が不十分だったりするなど質に懸念がある状態となり、審査する大学設置・学校法人審議会から、基準を厳しくするよう求める意見が出ていた。
(上記記事より)

……とありますが、そもそも大学の「質」というのは、どのようにして、どこで測られるものなのか。

出口の質、卒業生の質なのか。それとも、設備などの質なのか。例えば、図書館などの施設を他の大学や自治体、民間企業と共有したりする大学は、質の低い大学なのか。
また、専任教員が大学以外の業務に従事していない大学は「質」が高い大学で、そうでない大学はみな「質」が低い、ダメな大学なのか。

大綱化の際には、こういった「質」のあり方に関する議論が行われたはずです。その結果、「政府が決めるものではない」という方向になり、それが大綱化という決定につながったのではないかと思うのです。

それを見直すということなら、まだ話はわかるのですが、そのあたりがなんだか明確ではありません。
明確でないわりに、設置基準厳格化という具体策だけは既定路線のように着々と進められているのが、なんだか穏やかでない感じです。

さらに言うと、本当に、これらの教育の質を高める方法は、設置基準の厳格化しかないのでしょうか。

例えばここでは、認証評価機関の話はまったく出てきていませんが、もしこれらの機関が有効に機能していないということなら、そこを改善するという話にはならないのでしょうか。
これからの質保証システムの原則になるはずであった「認証評価制度」の見直しという議論は抜け飛び、いきなり「やはり我々が目を光らせないとダメだ」という話になるのが、個人的にはちょっと不思議に感じられるのです。
どうせなら文科省よりも、認証評価のシステムに実効力を持たせる方がいいのでは、という気もするのですが。

■「大学の教育指針は、国が決める?」

↑少し前にも、専門分野ごとの教育指針を文科省が決めると報道されています。
これはこれで意味があると思いますが、これまでに行ってきたことの大きな方針転換には違いありません。

これまでやってきたことの何が問題で、どこを改善すれば問題が解決されるのか。
そのあたりの議論をきちんとやった上での施策にしなければ、また大学関係者や学生が振り回されるだけの行き当たりばったりな改革になるのではないかと、ちょっと心配になったりもします。

以上、報道を見て、そんなことを考えたマイスターでした。

※この記事は、現役高校生のための予備校「早稲田塾」在籍当時、早稲田塾webサイト上に掲載したものです。