キャンパスの環境を学生がつくる ものつくり大学のユニークな取り組み

マイスターです。

昨今では、大学キャンパスにも美しい建築や、目を惹く建築が増えてきました。
こうしたキャンパス環境の整備に力を入れる大学は少なくありません。
誰だって美しくないよりは美しい場所で過ごす方が良いでしょう。それに美しいキャンパスは、受験生へのイメージアップという意図もあると思います。

デザイン系の学部学科がある大学の場合、著明な建築家やデザイナーの作品がキャンパス内にあると、学生にとって大きな刺激になります。
以前、お邪魔した芝浦工業大学の豊洲キャンパスでは、廊下に、世界の有名デザイナーによる様々な名作椅子が普通においてありました。同大には建築学科や、デザイン系の学科がありますから、学生さんは勉強になると思います。

さて、今日はこんな話題をご紹介します。

【今日の大学関連ニュース】
■「教育ルネサンス ものづくり(3)学内の橋、広場など自作」(読売オンライン)

ものつくり大学(埼玉県行田市)には、学生が設計から施工まで担った広場、あずま屋が点在する。校舎間をつなぐ二つの連絡橋も学生の作品。学部は技能工芸学部(建設技能工芸、製造技能工芸の2学科)だけで、定員は1学年360人だが、12万平方メートルという広いキャンパスを十分に生かしている。
今夏には、キャンパス内の調整池にも橋を架けた。歩道橋など小さい橋を研究している増淵文男教授(60)が発案した建設技能工芸学科3年の実習だ。
二つの連絡橋は、大手ゼネコンで現場所長を務めた経験のある非常勤講師4人の指導を仰ぎながら、足場作りなど工事の基礎から始め、それぞれ2年がかりで完成させた。
調整池の橋は、環境重視でコストの低い浮橋だ。発泡スチロールをコンクリートで固めた浮体をロープでつないだ。池に生えていた約3メートルのアシを引き抜き、大型クレーンを使って橋を浮かべた。学生たちは図面を見ながら、浮体のパーツを作っていった。
「教授の指摘を受けて確認したら、図面にミスがあることがわかった。そんなことの繰り返しだった」と建設技能工芸学科3年の菊池康太さん(21)。「図面を書くことは上手でも、実際に想像できなければ意味がない。本物を造ることで、その想像力を養いたい。実際に完成したものを見たことがないと、どこが違うのかも分からないこともある」と増淵教授。
(上記記事より)

ユニークな名称と、実習を重視した教育内容で知られる「ものつくり大学」。
そんな同大らしい取り組みです。

キャンパス内にかかる橋を、学生自らが制作しているとのこと。
それも設計から施工までです。
(リンク元には写真も掲載されています)

建築系の学科などがある大学では、学生がつくった建築物がしばしば置かれていますが、仮設的な建築物や、オブジェ的なものが少なくありません。
ずっと存続し、使われ続ける本格的な建築物の場合、施工はプロが行うことが多いと思います。

ただ、たまに、学生自らが施工までやってしまうケースもあります。
ものつくり大学の場合、キャンパスを挙げて、それを積極的に推進しているのですね。

池の上に架かる橋ですから、人がいるときに壊れたら大変です。
また水辺につくるわけですから、痛んだりすることもあるでしょう。つくるだけではなく、メンテナンスも大事です。

完成まで2年かかったとのことですから、先輩から後輩に引き継がれた作業などもあったことでしょう。
今後の維持補修なども、後輩達の役割になっていくのかなと思います。

大学の公式サイトを見てみたところ、↓こんなコンテンツもありました。

■「ものづくりのヒミツ」(ものつくり大学)

ロボコンも面白いですが、とても珍しいのが「連絡橋」の制作です。

連絡橋とは、キャンパス内の建設棟と製造棟とをつなぐ橋のことです。ものつくり大学建設技能工芸学科では、授業の一環としてキャンパス内の施設を“学生自身の手”で建設しています。
3年生ストラクチャコースの構造物総合実習において、2003年から2004年度ではコンクリート製の第1連絡橋を建設しました。2005年度には、バスの待合所を建設、続いて2006年から2007年度にはGFRP製の第2連絡橋を建設しました。
第2連絡橋は、日本で初めてトラス橋の構造材としてGFRPを用いて建設されました。
「ものづくりのヒミツ:連絡橋ってなに?」(ものつくり大学)より)

ページを見ていただけると、おわかりいただけるかと思います。
キャンパス内で、建物と建物を繋いでいるブリッジ、よくありますよね。
あのブリッジを、学生が設計し、施工まで行っているのです。

コンクリートの打設なども行ったのでしょうか。かなり本格的です。
普通の大学なら、建築系の学科を持っていても、ここまではできません。
模型を学生がつくって、実際の建設はプロの業者が行うと思います。

このキャンパスでは、「キャンパスのあそこが不便だ」という意見が出たら、学生の教育チャンスになるのですね。

【今後の課題】
日本初のGFRP材を用いたトラス橋であるため、耐久性が未知な部分があります。そこで、経年変化の確認が重要となってきます。それを踏まえ、第2連絡橋では耐久性を常時、光センサーを用いて測定しています。
「ものづくりのヒミツ:今後の課題」(ものつくり大学)より)

↑このように、使いながらのチェックも教育の一環として学生が担当します。
考える、つくる、使う、メンテナンスする、このすべてに学生が関わるというのは、ものづくり教育という点では効果的でしょう。

それに今後は、教授達はこういった先輩の建築物を実際に見せながら、「GFRP材を用いたトラス橋」のことを学生達に説明できます。
コンクリートのことも、構造力学のことも、この橋を実例にして教えられます。
キャンパス内に設計から施工まで行った実例があると、そういうこともできるわけです

すべてを学生の教育につなげられる、とても意義のある取り組みだと思います。

マイスターも建築学科生だったので、こういった環境の意味はよくわかります。
マイスターが通っていた大学では、キャンパスのいたるところに、教授が設計した建築がありました。
例えば構造の先生の場合、キャンパス内を歩きながら、「あそこの梁は他と比べて細いね。どうして?」なんて形で授業を行っていたのです。
講義で教わったことを、実際にキャンパス内で確認しながら学ぶのですから、実感が違います。

このように、教授や学生が手がけた作品がキャンパス内にあると、色々とメリットが生まれるわけです。
有名な建築家に美しい建築を発注するのも悪くありませんが、ものつくり大学のような取り組みも、なかなか面白いと思いませんか。

以上、マイスターでした。

※この記事は、現役高校生のための予備校「早稲田塾」在籍当時、早稲田塾webサイト上に掲載したものです。