ニュースクリップ[-7/6] 「大阪電通大、DS『でんじろう先生の不思議な実験室』を補助教材に」ほか

マイスターです。

曜日になりましたので、今週も一週間の教育ニュースの中から、いくつかを選んでご紹介します。

【科学を学ぶゲームが大学の補助教材に。】
■「大阪電通大、DS『でんじろう先生の不思議な実験室』を補助教材に」(iNSIDE)

ジャレコは、同社が7月17日に発売するニンテンドーDS向けタイトル『でんじろう先生の不思議な実験室』が、大阪電気通信大学の補助教材として採用されることになったと明らかにしました。大阪電通大ではこれまでもDSの英語学習タイトルを授業に取り入れるなどゲームを積極的に利用しています。
『でんじろう先生の不思議な実験室』は、工学部や医療福祉工学部の理工系入門科目において補助教材として採用され、日常的な技術や自然現象に親しみながら学生の科学リテラシを育成するために活用するということです。また、科学的興味を持つ「入口」から「原理の探求」に進む際の指導や、理系の教師養成教育において、中高生の科学への興味をいかにして育てるかという視線で利用するとのことです。
(略)DS『でんじろう先生の不思議な実験室』は、日本テレビ系列で放送中の「世界一受けたい授業」でもお馴染みのサイエンスプロデューサの米村でんじろう氏が監修するゲーム。生活に身近なところから起こる科学の疑問を、でんじろう先生と一緒に学びながら解いていくゲームです。
(上記記事より)

大学が、独自の教育・研究にゲーム機を活用する例はあると思いますが、このように市販されているソフトを、「補助教材」という形で導入するというのは、珍しいことのように思います。

最近は「楽しく学べる」という点を狙いにしたゲームが増えており、特にニンテンドーDSではそういった傾向が顕著なようです。このソフトも、そんな動きの中から生まれたもののひとつなのでしょう。
今回の導入を知って、今後、大学を意識したソフトを開発しようとするメーカーが増えてきたりするのでしょうか。

【土木の復活。】
■「【土木系学科入試倍率―2】国公立では2~2.5倍が最多、『土木』の復活も」(日経BP)

土木系学科の入試の状況を2007年と2008年とで比較できた国公立大学は26校。志願者数の平均は2007年が1校当たり96.2人、2008 年が同105.0人で、わずかながら増加した。平均の倍率も2007年の1.9倍から、2008年には2.2倍へとわずかに上がった。
2008年の入試倍率を見ると、2倍以上2.5倍未満の大学が最も多く、全体の4割を占めた。さらに、3割が2.5倍以上の倍率となった一方で、2倍を切った大学も3割を占めている。
(略)「土木工学科」の名前を改称する学校が増えるなか、信州大学は2008年4月に、それまでの社会開発工学科を改組して、「土木工学科」の名前を復活させた。
定員は95人から45人に絞ったものの、志望者数は84人。入試倍率は社会開発工学科として行った2007年の2.1倍よりも、土木工学科として行った2008年の方が2.5倍と上回る結果になった。
信州大学工学部土木工学科長の小山健教授は、「学部生に聞いたところ、“土木”という言葉にマイナスのイメージを持つ学生は考えていた以上に少なかった。そこで、本来の土木工学科という名称に戻した」と話す。
入試倍率が上がった2008年の入試の結果から、「受験生も“土木”という言葉に、それほど悪い印象を持っていないのではないか」(小山教授)とみている。
(上記記事より)

英語だと「Civil Engineering」なのに、日本語になると「土と木」になる、土木工学。
「この泥臭い名前が受験生に敬遠されるのかなぁ……」と、マイスターの知る土木工学系の教授はぼやいていました。
他にも、名称について悩む大学人が多かったのか、

・受験生に良い印象を持ってもらうため
・「Civil Engineering」の本来の意味に近づけるため
・「作る」だけではなく、環境を総合的に考えるなど、学問的な役割の広がりに対応するため

……などの理由で、「土木」の文字を学科名称から廃し、代わりに「社会」、「都市」、「環境」などの文字を入れる動きが、全国的に進んでいます。

……しかし実際には、受験生は「土木」にそう悪い印象を持っていないのではないか、というのが、上記の記事。
名称の他、各種の広報物などで学問内容をわかりやすく伝えられるかどうか、という点も大きく関係しそうです。

【私大連で不適切会計。】
■「私大連盟、3300万円不適切支出…政治パーティーや飲食」(読売オンライン)

文部科学省所管の社団法人「日本私立大学連盟」(会長・安西祐一郎慶応義塾長)が昨年度1年間に、政治家のパーティー券の購入費約1000万円を含め、高級料亭での「役員懇談会」やスナックでの「打ち合わせ」の費用などに総額約3300万円を使っていたことが同省の調査でわかった。
(略)同省が不適切と判断した支出には、赤坂事務局長が連盟の貸付制度を利用し、年利1%で借りた約230万円が含まれていた。連盟の規定の貸付利率は年利2・5%で、変更には理事会の承認が必要だったが、赤坂事務局長は「財務担当理事に口頭で了解をもらった」と説明しているという。
このほか同連盟は昨年度、計206の政治資金集めパーティーで計1033万円分のパーティー券を購入していた。1件あたりの支出は2万~20万円だったが、同省は「政治家からの情報収集のためだとしてもやりすぎで公益目的とはいえない」と判断した。
また赤坂事務局長や役員など7人が都内の高級料亭で懇談会を開いた費用として68万8000円、事務局職員約20人による高級焼き肉店での忘年会費として89万7000円を使うなど高額な飲食も目立った。
ほかにもスナックでの「打ち合わせ」など同省が「連盟の事業とは見なせない」などと判断した分も合わせると、不適切な飲食への支出は107件に上った。
(上記記事より)

■「私大連盟の前事務局長、不適切支出は4年前から」(読売オンライン)
■「不適切支出:私大連が3300万 パー券購入や料亭懇談会--文科省是正指導」(毎日jp)

大学関係者ならおなじみ、日本私立大学連盟の不適切な支出が問題に。
かなり非常識なお金の使い方を日常的に行っていたようです。私学の学費の高さについて、国にあれこれ要望やコメントを出したりすることもある団体なのですが……うーん。
記事を見る限り、事務局長の個人的な防いであるかのように読めますが、実際のところは不明です。

ところで、

4日付で事務局長代行となった連盟の本田博哉参与は同日夜、「(加盟大学の学長や理事長が務める)理事は皆パートタイムで、会計のことは把握していない。自分もこんなずさんな会計システムとは知らなかった。みんな自分たちの会合がこれほど高額と知って驚いていた」と述べた。
「私大連盟の前事務局長、不適切支出は4年前から」(読売オンライン)より。強調部分はマイスターによる)

……という記事がありました。

大学教授、ましてこうした団体の理事を務める方となると、世間は「偉い先生なのだから、失礼があってはいけない」と考え、ときに過剰なまでに気を遣うものなのです。おそらく、会場や料理のグレードで、そんな「気遣い」が表されることも少なくないと思います。常識的なおもてなしの範囲ならいいのですが、常識を越えた範囲の「慣例」になっていることもあり得るということです。
大学教員の方々は、そんな力学が自分達の周りで働きがちであることを忘れないでいてください。

もっとも今回の日本私立大学連盟は、大学関係者のための団体なわけで、せめてこういう団体の活動では、もうちょっとフラットな感じにできなかったものかと思います。

【物議を醸しそう。】
■「『理系科目は文系より難しい』:英研究者、『評価上乗せ』を提言」(WIRED NEWS livedoor掲載)

詳細はリンク元をご覧下さい。
日本でも、たまにこういったことを主張される方(主に理系)がおられます。

もっとも、難しいとか簡単とかいう判断は、単純には行えません。
人それぞれの得意分野も違うでしょうし、そもそもそれぞれで身に付く能力も、それを測るための評価基準も違うので、比較すること自体、不可能なんじゃないかという気もします。
マイスターは理工学部から社会科学系大学院に進学しましたが、特にどっちがより大変ということはなかったように思います。自分なりに真剣に取り組んだつもりなので、どちらも大変でした。

当たり前ですが、どんな学問も本気でやるなら同様に大変だと思います。学問に終わりがない以上、真理を追究し続けるという行為に違いはありませんし。

【大阪大学、最先端の(?)芸術に挑戦。】
■「世界初のロボット演劇にチャレンジ 阪大、平田オリザ氏ら」(MSN産経ニュース)

日本でも屈指のロボット研究機関である大阪大学が今秋世界初の“ロボット演劇”に挑戦する。指揮をとるのは阪大教授で劇作家の平田オリザさん。ソフトウエア開発会社などと共同のプロジェクトを今年度から進めており、11月には大阪で短編の作品を上演する予定だ。平田さんは「商業的に成り立つものを目指し、大阪のキラーコンテンツに育てたい」と意欲を見せており、5年後にはヨーロッパの演劇祭での上演も視野に入れているという。
“ロボット演劇”の構想は、阪大とソフトウエア開発会社「イーガー」(大阪市)と共同で、今春ごろ持ち上がった。日本のロボット研究の第一人者である阪大の石黒浩教授と、かねてからロボットによる演劇の構想を持っていた平田オリザさんが阪大でタッグを組むことで、実現にこぎつけた。大学院の学生もロボットの細かい動きをつかさどるプログラミングを約2カ月かけて作製するという。
(上記記事より)

平田オリザ氏は日本演劇界の重鎮。
そんな平田氏と、ロボット研究チームの両方を擁する大阪大学が、なんだかユニークな取り組みに着手したようです。
違う領域の第一人者同士が、学内でこんな風にコラボレーションするのは面白いですね。
一体、どんな芸術表現に仕上がるのでしょうか。

以上、今週のニュースクリップでした。

今週も一週間、本ブログを読んでくださいまして、ありがとうございました。
来週も、お互いがんばりましょう。

マイスターでした。

※この記事は、現役高校生のための予備校「早稲田塾」在籍当時、早稲田塾webサイト上に掲載したものです。