大学が進める環境対策

マイスターです。

北海道洞爺湖サミットを前に、現在、「G8大学サミット」が開催されています。
14カ国から37大学の学長が参加し、環境教育や、「グリーンキャンパス」づくりについて議論。本日、合意文書を採択・発表する見込みだとのこと。
その内容は、改めてご紹介するとして……今日は、大学の環境対策に関する話題をご紹介します。

【今日の大学関連ニュース】
■「京大が“学内環境税”を開始,エネルギー使用実績で徴収 」(ITpro)

京都大学は2007年4月にまとめた「省エネルギー推進方針」で、建物の省エネ改修により、単位面積当たりの温暖化ガス排出量と消費エネルギー量を毎年1%減らす目標を掲げた。これまでも大学本部は、単年度で数千万円単位の予算を確保し、省エネ改修を実施してきた。
だが、京都大学大学院工学研究科都市環境工学専攻の吉田治典教授は、「大学は縦割り組織なので、従来のスポット的な対策では不十分。目標達成には大学全体で継続的に対策する枠組みが必要だった」と振り返る。
そこで、環境対策を専門とする研究者や大学本部の担当者が集まり、1年かけて検討を重ねた。その結果、省エネ改修で1%削減するには年間2億4000万円かかるという試算をはじき出した。過去の省エネ改修時の予算と効果を検証し、既存の建物の省エネ対策の現状と突き合わせて算出。さらに、毎年確実に2億 4000万円を確保する手法として「環境賦課金」にたどり着いたのだ。
環境賦課金の仕組みはこうだ。まず、大学本部と学部や研究科などの部局が、それぞれ1億2000万円ずつを拠出する。部局全体での拠出額が1億 2000万円で、文学部や工学部といった部局ごとの負担額は、前年度に使用したエネルギー量に応じて定める。電気は1kWh当たり0.5円、ガスは1立法メートル当たり 1.5円、水道は1立方メートル当たり10円で、使用料金の4~5%に相当する。エネルギー使用実績に応じて支払う“学内環境税”というわけだ。京都大学大学院経済学研究科の諸富徹准教授は、「確保したい金額から逆算して税率を決めるやり方は、環境税の導入手法としてはオーソドックスなもの」と説明する。
各部局に費用負担を納得してもらうために、環境賦課金の使途と割り当て方法にも工夫を施した。各部局が出した資金は、そのまま自分たちの省エネ改修費になる。さらに、改修内容の提案次第で、大学本部からの資金が上乗せされる。「拠出した資金の使途が明確で、かつ自分に戻ってくる点が学内の賛同を得られた理由だ」(吉田教授)。エネルギー使用量の大きな部局から重点的に対策できる上、各部局にとっては省エネのインセンティブにもなる。
(上記記事より)

京都大学が進める、「学内環境税」の取り組みです。

大きなキャンパスに多くの教職員や学生を抱える総合大学の場合、キャンパスが環境に対してかける負荷も無視できない規模になってきます。
そこで、環境にやさしいキャンパスをつくるべく、大学は努力をしているわけですね。
京都大学の取り組みは、大学業界の中では非常にユニークで、興味深いものだと思います。

もうひとつ。

■「【Interop Tokyo】「グリーン東大工学部プロジェクト」の省エネ技術を一堂に,グリーンITブース」(ITpro)

千葉・幕張メッセで開催中の「Interop Tokyo 2008」では,特設ブース「GREEN IT@Interop」において,最新の省電力化技術が披露されている(写真1)。目玉は,2008年6月9日に発足したばかりの「グリーン東大工学部プロジェクト」のパネル展示とデモ。東大本郷キャンパスのCO2排出量を2030年までに50%削減するという壮大な目標を掲げ,その実現に向けたグリーンITの要素技術を展示した。
プロジェクトの参加メンバーは,富士通,日立製作所,松下電器産業などのIT/エレクトロニクス・ベンダーを中心に,横河電機や山武などの計測制御機器メーカー,竹中工務店や鹿島などのゼネコンのほか,技術規格の標準化団体,通信事業者など34団体。もともと東京大学大学院情報理工学系研究科教授の江崎浩氏が,ITを活用したファシリティ・マネジメントによって大学を省電力化しようと提唱したことが発端となり,プロジェクトがスタートした。
(上記記事より)

こちらは東京大学の取り組み。
IT技術を駆使してキャンパスのCO2排出量を減少させようというプロジェクトの内容が、「Interop Tokyo 2008」で紹介されているようです。

両大学とも、ちょうど「G8大学サミット」にタイミングがぴったり合う形で、自校の環境対策がメディアに取り上げられていますが、これは嬉しい偶然でしょう。
環境対策というのは、短期間で内容を決められるものではありません。ずっと前から地道な努力を進めてきて、たまたま発表の機会がサミットにぶつかったというだけだと思います。

昨今では、環境問題に関心を寄せる高校生や大学生は少なくありません。
何らかの形で環境に関する学問を学んで社会に貢献したいと考える方はたくさんいますし、実際に、企業などの環境対策について調査を行ったりしている高校生もたまに見かけます。

そんな高校生の皆さんには、ぜひ、大学が行っている環境対策についても知っていただきたいです。

では、普段から大学が環境に対してどのような取り組みを行っているのか知りたい場合は、どうすればいいのでしょうか。

企業と同じく多くの大学は、「環境報告書」を作成し、一般に公開しています。
これは、その大学が一年間、環境対策をどのように進めてきたかというアニュアル・レポートで、客観的なデータを盛り込んで作られます。
こういった資料を読めば、どの大学が環境保護に熱心で、どの大学がそうでないかは、何となく分かるでしょう。

環境報告書は、通常、大学のwebサイトにPDFなどの形でまとめられ、公開されています。

親切な大学だと、読みやすいよう、PDFではなくHTMLの形式で、図表などをふんだんに盛り込んで見やすく編集した後、公開しています。
義務感で作った環境報告書をとりあえずPDFで公開する、というのではなく、積極的に広く知ってもらおうとする姿勢は、評価されるべきものです。

逆に、環境報告書に相当するものをつくっていなかったり、あるいは作っても冊子版しかなく、キャンパスに行かないともらえないような大学は、環境問題に対してそれほど熱心ではないということになるでしょう。

大学の場合、単に自校の環境対策を行うだけに留まらず、その取り組みそのものが社会の中で「お手本」になるという側面もあると思います。ですから、どのように環境対策を行っているか、という広報の面も大事でしょう。

ここで、便利なサイトをご紹介します。

■「大学の環境、社会・CSR報告書データベース」(エコほっとライン)

こちらは日本の大学の、環境関連コンテンツ一覧です。
環境報告書を探すことも簡単です。これは便利。
ぜひ、気になる大学の、環境対策を見てみてください。

同じようなコンテンツを持っていても、大学によって取り組みの内容や、コンテンツの見やすさに大きな違いがあることが、おわかりいただけるのではないかと思います。

「いちおう作りました」みたいな、1ページだけの短い報告を載せている大学がある一方で、かなり力を入れて充実したコンテンツを用意している大学もあります。

マイスターも、全部をじっくり拝見したわけではありませんが、いくつかの大学の環境コンテンツを見ていて、例えば↓こちらなどは比較的、力を入れられているなぁと感じました。

■「法政大学の環境問題への取り組み」(法政大学)

■「日本工業大学:環境への取り組み」(日本工業大学)

他にも優れたサイトやコンテンツはあると思いますので、皆様も参考になる表現や取り組みを探してみてください。
そうやってお互いにレベルアップしあった結果、「日本の大学はどこも環境対策に熱心だ!」と社会の皆様から思ってもらえるようになったら、すばらしいですよね。

G8大学サミットでどのような宣言が出されるかはまだわかりませんが、どのような内容であれ、実践されなければ意味はありません。
最終的には、大学の教職員、および学生全員で取り組むべきことです。

大学はじっくりと取り組んで、その過程と結果を環境報告書などの形で広く社会に発信してみてください。
企業関係者など多くの方々が、それを参考にされるかも知れませんよ。

以上、マイスターでした。

※この記事は、現役高校生のための予備校「早稲田塾」在籍当時、早稲田塾webサイト上に掲載したものです。