受験者減 揺れる法科大学院

マイスターです。

最近、法科大学院関連の話題が続きました。

【今日の大学関連ニュース】
■「志願倍率6・8倍に低下 定員割れ46校、法科大学院」(47NEWS)

文部科学省は19日、2008年度の法科大学院入試で、志願者数が前年度から5652人減って3万9555人となり、募集人員に対する志願者の倍率が前年度の7・8倍から6・8倍に下がったと発表した。
文科省によると、定員割れは国立で23校中12校、公立で2校中1校、私立で49校中33校の計46校あり、前年度の36校を10校上回った。最も倍率が高かったのは千葉大の17・4倍。最も低かったのは0・8倍で、1倍を切った。
74校全体の募集人員5785人に対する4月1日時点の入学者は、法学既修者2066人、法学未修者3331人の計5397人。
入学者のうち社会人は29・8%に当たる1609人。出身学部別でみると、法学系が3987人で入学者の73・9%を占めた。
(上記記事より)

そんなわけで、法科大学院の受験者が減少しています。

法科大学院74校中、46校が定員割れ。
競争率が1.0を下回っている大学もあるとのことです。

ちなみに、社会人入学生の比率も3割を切り、4年連続で低下。

法科大学院は多様な人材の育成を理念に掲げているが、社会人の割合は04年度の48・4%から、05年度は37・7%に低下し、06年度は33・3%、昨年度は32・1%だった。
「法科大学院入学者、社会人割合は29・8%…4年連続減少」(読売オンライン)記事より)

……と、当初の理念に反する結果になっています。
冒頭の記事によれば、しかもそのうち、法学系出身者が73.9%。
多様な学問を学び、多様な分野で活躍していた人材が法曹として活躍し、新たな風を入れる……というイメージだったのが、実際には、法学既習者のための機関に落ち着いているようです。

理由はおそらく、低迷する司法試験合格率にあります。

当初は、合格率を7~8割にし、法曹人口の大幅な増加を図ると謳われていた法科大学院。
しかしふたを開けてみると、合格率は法学既習者のコースでも平均4~5割、法学未修者では3割程度。
興味はあるものの、「職を辞し、3年学んでまで挑戦するには、リスクが大きい」と感じ、二の足を踏んでしまっている方も多いのではないでしょうか。

当初の法務省・文科省の予想を超えて、法科大学院が数多く設立されたことが、この合格率低迷の背景にあります。
つまり、教育に自信のある限られた大学だけが法科大学院を設立すると思っていたのに、実際には「ウチもウチも」と、法学部を持っている大学がこぞって手を挙げる事態になったというわけです。

新しい法曹の育成に意欲を燃やす大学、
伝統ある法学部の沽券に関わると考えた大学、
そして中には、「なんとなく、無いと格好悪いから」と、他大学の様子をうかがいながら設立したなんて大学もあるでしょう。

その結果、法科大学院の定員は予想を大きく上回り、一方で司法試験の合格者数はそこまで増やせず、合格率が低迷しているというわけです。

この「合格率」も、大学によって千差万別。
合格率が、大学院によって数十パーセントも違う、なんて事態になっています。

以下は、過去2年間の、法科大学院の合格率ランキングです。

【平成18年度 法科大学院合格率(法学既習者のみ)】
(クリックで拡大します)

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【平成19年度 法科大学院合格率(法学既習者、法学未修者)】
(クリックで拡大します)

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特に平成19年がそうですが、平均合格率を下回っている大学院の方が多いのです。

中には「合格率ゼロ」という、厳しい大学院も数校あります。

なお受験者数の増減を報じる冒頭の記事に、

最も倍率が高かったのは千葉大の17・4倍。

……とありましたが、千葉大学法か大学院は、平成19年度の法学未修者の司法試験合格率が、全国トップ(88.9%)。
このように、司法試験の合格率がそのまま法科大学院のコストパフォーマンスを示す「実績」となり、受験生側の選択に影響を与えているものと思われます。

学士課程における大学選択が、しばしばブランドイメージなどで行われるのに対し、法科大学院ではより成果を重視する傾向があるのかも知れません。

逆に、二桁の人数が受験し、誰も合格しなかった大学院などは、翌年の受験生集めに苦労しているはずです。

さて、司法試験合格率が低迷し、受験生を思うように集められずにいる法科大学院もある中、各大学はどのような手を打ってくるのでしょうか。

■「法科大学院、10校で定員減を検討…司法試験合格率低迷で」(読売オンライン)

2004年4月にスタートした全国74校の法科大学院のうち少なくとも10校が、定員減を検討していることが読売新聞の聞き取り調査でわかった。
(略)法科大学院が乱立気味で定員割れが相次いでいることに加え、昨年の新司法試験の合格率が全体で4割と低迷していることが背景にある。各校が水準低下を防ぐため、授業料収入減を覚悟で少人数教育を選択せざるを得ない状況だ。
(略)福岡大は来年度から1学年の定員を50人から30人に変更する。同大の昨年の新司法試験合格者は6人で、定員の12%。今年度入試では、追加合格者を含めた入学者は定員より15人少ない35人だった。山下義昭院長は「少人数教育で、今より多くの法律家を輩出したい」と話す。
また、関東地区と関西地区の2校がそれぞれ調査に対し、匿名を条件に定員減を具体的に検討中と回答したほか、学習院大や神戸学院大、中京大など計7校が、具体的ではないが定員減を検討していると回答した。
複数の大学院関係者は「目先の授業料収入より、優秀な学生の確保を優先しなければ生き残れない」と話した。
(上記記事より)

この通り、定員を減らして競争率を上げ、少数精鋭教育でまずは司法試験合格率を向上させる、と考える大学が出てきているようです。

法科大学院は、実務家教員を一定の割合でそろえる必要があるなど、経営のコストも高くつくと思われます。規模を抑え、成果を上げる戦略は、間違いではないでしょう。
もともと少数精鋭で丁寧な指導を行うのが法科大学院の教育イメージだったと思いますし。

■「年間3千人の法曹」 計画を見直す? 法務省

以前の記事でお伝えしたように、法務省も方針を見直そうとしています。
法科大学院の実力が、試されるときです。

以上、マイスターでした。

※この記事は、現役高校生のための予備校「早稲田塾」在籍当時、早稲田塾webサイト上に掲載したものです。