学生に知事の話を

マイスターです。

小泉内閣のときに行われていた政策に、「タウンミーティング」というものがありました。
現役閣僚達が各地で国民達と直接対話する、という趣旨のイベントで、マイスターも地元の回に一度出かけたたことがあります。

■「タウンミーティング 小泉内閣の国民対話」(内閣府)
(↑すべての回の記録が、今も内閣府のサイトで公開されているようです)

一方的な講演にしないというのがコンセプトだったようで、この種のイベントとしては、会場からの質疑応答の時間がかなり長めに取られていました。

今でも印象に残っている場面があります。
マイスターが参加した会場では、中学生くらいの生徒が挙手して質問していました。で、マイクを握り、自分たちが行っている活動について大臣に説明をしたところ、ある大臣が既にそれを知っていたのです。
それどころか、

「彼らが、ずっと前から非常に意義のあるイベントを行っているのを私は知っています。
 それは、○○というイベントで……」

と、大臣が、その生徒に代わって会場に説明をし始めたのです。
事前アンケートなどがあったわけではないので、たまたまその大臣は知っていたのかも知れません。

大臣が語っている間、その生徒は、感激してずっと泣いていました。

タウンミーティングという機会がなければ、そんなやりとりも生まれなかったでしょう。
この生徒は、まさか現役の大臣が自分たちの活動を気にかけているなんて、想像できないままだったと思います。
おそらくこのやりとりを通じて、この生徒の、政治や政治家に対する意識は大きく変わったでしょう。それだけでも、タウンミーティングの意義はあったのではないかと、マイスターは思います。

間接的であるにせよ、すべての国民、市民は、政治や行政に何らかの形で関わっているはずです。
しかし、そのことを実感する機会は、選挙を除くと、普段の生活の中ではそう多くはありません。
そんな状況を改善するための方策の一つとして、国や自治体のトップで政治や行政を担っている方々の声を間近で聞き、直接、意見を交換しあう場を様々なところに設定するということは、大事です。

そんなわけで、特にそんな機会を利用してもらいたいのが、大学生の皆さんです。
いくつか、事例を探してみました。

【今日の大学関連ニュース】
■「知事トークinキャンパス:学生と意見交換 大学・短大など11校が開催希望 /三重」(毎日jp)

野呂昭彦知事が学生と意見交換する「知事トークinキャンパス」が、今年度も今月23日の県立看護大学(津市)を皮切りに開かれる。今年度は昨年度の倍以上の11大学・短大・高専から開催希望があり、今後、日程調整する。
「知事トーク」は昨年度から始まり、三重大学など5大学で実施。計1150人の学生や大学関係者が出席した。県が取り組んでいる「質の行政改革」や、県政運営の基本的な考え方としている「文化力」「新しい時代の公」について野呂知事が講演し、学生らと意見交換した。
(略)野呂知事は「07年度の開催では、私自身も若い感性の意見に大いに刺激を受けた。今年度はこれまでの講演形式にとらわれず、フリートークの時間を設けるなど工夫していきたい」としている。
(上記記事より)

こちらは三重県の野呂知事が昨年か実施されている「知事トークinキャンパス」の案内です。

■「平成20年度『知事トークinキャンパス』を実施します」(三重県)

三重県の発表によると、昨年は、延べ1,150名の学生や大学関係者が参加したとのこと。
好評を博したこともあり、今回は昨年以上の規模で開催されるとのことです。

大学にとっては、あらゆる学問分野を専攻する学生に話を聞かせられる、絶好のゲスト。
来てくれるというのなら、お願いこそすれ、拒む理由は何もありません。

学生にとっても、知事というのは非常に興味深い存在でしょう。
政治家であり、行政トップでもある知事の考えや働きかけは、自分たちの身の回りの様々な部分に反映される可能性があるわけです。
そう言う点では極めて身近な存在である一方で、しかし直接の対話ができる機会というのは、そうはありませんよね。
どんな話が聞けるのかとか、こんなことを伝えたいとか、気になるところだと思います。

知事(および三重県)の側にとっても、これから地域社会を担う若い学生に県の考えや方針を伝えたり、逆に意見を聞いたりできる場があるというのは、大きなメリットだと思われます。
県政をより身近に感じてもらえるようになるかもしれません。

もちろん知事としては、長期的に見た場合の、選挙に向けてのイメージアップというねらいもあるでしょう。
ともあれ、せっかくの機会ですから、学生さんにはぜひ活用していただきたいものです。

県知事の方の取り組みとしては、他にも↓こんな事例を見つけました。

■「マンスリー知事学校訪問」(神奈川県)

神奈川県の松沢成文知事の取り組み。
毎月一回程度のペースで、教育現場を訪問し、生徒・学生やその保護者、教職員などとの意見交換を行っておられるようです。

上記のサイトを拝見する限り、大学の他、幼稚園から小・中学校、高校などまで、訪問先は色々。
県立の学校だけでなく、私立の学校も積極的に回っておられるのがいいですね。国公私立、区別がありません。
訪れる学校の種類も、養護学校や工業高校、私立の中高一貫校、警察学校、中華学校などまで、実に多種多様です。
ときには、大学の政治学科で講義を行ったりもされています。

■「知事講演」(福井県)

↑福井県の西川一誠知事も、大学での講演実績が結構おありの様子。
それも、政策系の大学院での講義が多いのが特徴的です。

こういった、専門家を目指す学生に対して講義を行うというのも、非常に意義のあることだと思います。
講義終了時の質疑応答では、会場から鋭い意見も出ることでしょう。
講義をする側に、それなりの自信や意識、覚悟がないと、なかなかこういった取り組みはできないのではないでしょうか。

このように、県知事というお立場の方は、大学で学生相手に講義や講演をされる機会が比較的、多いように思われます。
知事の側から企画をする場合もあれば、大学側から講演依頼を行うこともあるでしょう。

大学側の企画として、特に知られているのは、↓こちらです。

■「全国知事リレー講座」(読売オンライン)

全国の知事が京都・立命館大学の教壇に立ち、地方自治の実際を講義します。大学連合体「大学コンソーシアム京都」に加盟している50大学の学生らが聴講できる正規授業です。2002年4月にスタートし、2008年4月から第4期が始まります。「知事が語る地方の現場」をテーマに、分権時代における具体的な地方行政政策について講義が続いています。
(上記記事より)

■「多彩な講師陣による特殊講義・連続講義:全国知事リレー講座」(立命館大学)

立命館大学が主催し、「大学コンソーシアム京都」加盟大学の学生すべてが受講できる、「全国知事リレー講座」。

読売オンラインの記事では、2008年度の最新の開催予定の他、過去4年間の講義要旨とルポを読むことができます。
上でご紹介した知事の皆様のお名前もありますね。

普段から様々な知事の話を聞いている学生達の前で講義を行うわけですから、他の知事と比較されると思います。目の肥えた学生達から内容を評価されるわけです。自分の生い立ちや体験談ばかりではなく、実際の政策の方針や、これまでにあげた実績などの話も求められるでしょう。
講義する側は、なかなか大変そうです。

一方で、知事側にとっては、今後全国で活躍するであろう学生達に対して、県そのもののをアピールする絶好のチャンス。(密かに、そのうち国政に打って出ようなんて考えている方だと、さらに気合いも入るでしょう)
大変な場ではありますが、メリットも大きいはずです。

将来の人材育成という点で、非常に意義のある取り組みだと思います。
京都の学生達は、非常に恵まれていますね。

ちなみに、立命館大学は、市長のリレー講義も開催しています。
こちらも面白そうです。

■「全国市町村長リレー講義『自治体外交の挑戦~市町村長・わがまちの国際戦略を語る』」(立命館大学)

……と、このように、知事や市長といった方々が学生に直接講義をされる事例を、いくつかご紹介しました。

いくつかの大学や自治体が、こうした取り組みを行っているようです。
ここでご紹介した他にも、実際にはおそらく様々な事例があるでしょう。

学生の方は、情報を集めて、様々な機会を利用してみてください。
大学や自治体の方々にはぜひ、こういった企画をどんどん行っていただきたいです。

学生が直接、政治家や行政関係者と意見交換をする場があるというのは、大事なこと。
大学や自治体には、そんな場を生み出す役割が期待されているのではないかと、マイスターは思うのです。

以上、マイスターでした。

※この記事は、現役高校生のための予備校「早稲田塾」在籍当時、早稲田塾webサイト上に掲載したものです。

1 個のコメント

  • タウンミーティングでは「やらせ」が問題になりました。中学生と大臣の話を読んで、これも実は「やらせ」なのじゃないか…という疑惑を持ったのは私だけでしょうか?