北京オリンピック 現地の大学に影響も

マイスターです。

もうすぐ北京オリンピックですね。
現地では、大学も、何かと影響を受けているみたいです。

例えば、オリンピックの会場。
北京五輪の競技会場は、北京市内に31箇所あるそうですが、そのうち6会場は大学のキャンパス内に新しく作られるのだとか。
みなさんは、ご存じでしたか?

■「オリンピック施設紹介:北京大学体育館」(中国北京情報ナビゲーション)

■「オリンピック施設紹介:北京航空航天大学体育館」(中国北京情報ナビゲーション)

■「オリンピック施設紹介:中国農業大学体育館」(中国北京情報ナビゲーション)

■「オリンピック施設紹介:北京科技大学体育館」(中国北京情報ナビゲーション)

■「オリンピック施設紹介:北京理工大学体育館」(中国北京情報ナビゲーション)

■「オリンピック施設紹介:北京工業大学体育館」(中国北京情報ナビゲーション)

確かに大学なら、オリンピックが終わっても、何かと利用される機会がありそうです。
有名大学は、学生数も多そうですし。

メインスタジアムの「鳥の巣」に注目が集まっていますが、北京オリンピックの観戦に行かれる方は、かなりの確率で、北京の大学キャンパスに足を踏み入れることになるのですね。

特に北京科技大学は、柔道の会場ですので、日本からの観光客も多いことでしょう。
行かれた方は、ついでに中国の大学キャンパスツアーをお楽しみください。

中国国務院の陳至立委員は、このほど、北京の大学のオリンピック施設建設現場を視察し、「五輪用の大学施設を予定通りかつ高品質に完成するため、関連部門と大学が全力で協力し、厳格に管理すべきだ」と強調しました。
陳国務委員は、「大学のオリンピック用施設の建設は、『特色のあるレベルの高い』オリンピックを主催するのに重要な支えとなる。これは、大学においてスポーツ事業の促進やオリンピック精神の普及に重要な意義があり、競技のレベル向上に重要な役割を果たす」と述べました。
陳国務委員は、「工期を確保すると同時に、キャンパス内や周辺地域の環境を整備しなければならない」と指示しました。
「<北京五輪>陳国務委員 五輪用の大学施設の高品質な完成を求める」(CRI online)記事より)

↑このように、オリンピック開催に伴い、国家も大学内の環境整備を指示しています。
会場となる体育館だけではなく、キャンパス内の色々な物が、綺麗にされそうです。

さて、そんな恩恵に恵まれた大学ですが、困った事態も。

■「北京の大学『五輪中は留学生お断り』 家賃高騰を懸念」(Asahi.com)

今夏の北京五輪期間中、海外からの留学生受け入れを断る動きが北京市内の大学に広まっている。体育館が試合や練習に使われたり、五輪の影響で学校周辺の家賃が値上がりしたりする影響を考慮したためという。日本からの留学生も影響を受けそうだ。
五輪時に体育館が卓球会場になる北京大は、例年8月10日に始まる1カ月の短期留学プログラムを中止した。「五輪があるため、家賃や物価、航空運賃などすべてが上がるだろう。客観的に判断した」という。日本人学生は毎年100人弱が参加していた。
レスリング会場になる中国農業大や、米国選手団が練習などに使う予定にしている北京師範大もすでに受け入れ中止を決めたほか、中国人民大も「学内の寮が少なく、宿舎の確保が難しい。受け入れはまだ決めていない」とする。
北京語言大など例年通りとしている大学もあるが、中国留学をあっせんしている日中文化交流センター(東京)は「動きがどこまで広がるか分からないので、夏の北京は無理と考えている。学生には地方を勧めている」と話している。
(上記記事より)

オリンピック開催中は、世界中から人が集まります。
そのあおりを受けて、国際交流の動きが、一時的にストップすることになりそうです。

確かに、宿泊施設の確保が難しくなれば、実現は困難です。
参加を考えていた方々にとっては残念でしょうが、物理的に限界がある以上、仕方がないのかも知れません。

また、意外なところでは↓こんな影響も。

■「オリンピックで就職活動も前倒し、今年は売り手市場―北京市」(Record China Yahoo!JAPANニュース掲載)

今年はオリンピックが開かれるので、卒業生の就職活動は例年より早め。北京市人事局の規定によれば、北京の企業は4月末には卒業後も北京に残る人数を申告しなければならず、これはいつもより2か月近く早い。市教育委の規定では例年7月初めに発行する派遣証を、今年は6月中旬に発行するという。
清華大学就職指導センターの主任は、就職活動が前倒しになっているので、就職説明会の開催は例年より早く、回数も多いと語る。今年清華大が行う就職説明会は例年比25%増で、卒業までに400回に達する見込みだという。
(上記記事より)

どうしてオリンピックの影響で就職活動が早まるのか? と不思議に思う方もいるでしょう。
「北京市人事局の規定によれば、北京の企業は4月末には卒業後も北京に残る人数を申告しなければならず、これはいつもより2か月近く早い。」の部分が、その理由です。
早い話、行政の指導なのですね
当たり前ではありますが、中国は日本にも増して、行政の影響力が大きいようです。

ちなみに、つい最近まで中国では、「大学卒業者の進路は国家がすべて決める」という時代がありました。(「分配制度」や、「国家分配」などで検索すると、関連情報が出てきます)
国家が大学の学費を補助し、その代わり、大学卒業生の就職先はすべて国家が指定していたのです。
自分の将来はお上の考え次第というわけです。計画経済の究極の姿といって良いでしょう。
この結果、党などの有力者にコネがある学生は「運良く」都市部などの条件の良いところに残り、コネもなく運も悪い学生は、「泣く泣く」農村に就職させられる、ということが、しばしば行われていたそうです。

この分配制度、1989年の頃(つまり天安門事件の前後)を境に徐々に撤廃されていき、現在では、就職先は学生が自分で選べるそうです。
しかし農村部はまだ経済的に、非常に貧しいですから、自ら就職先に考える学生はあまりいないらしいのですね。その結果、農村はこれまで通り発展から取り残されたまま、都市部は経済成長を続けるというわけです。
農村出身の学生が地元に帰る……としても、故郷の仕事では大学の学費を取り返すだけの収入が得られない。貧しい中から期待を背負って進学し、無事に卒業できても、こんなジレンマが待っているのですね。
中国では、国内の、都市部と農村部の貧富の格差が拡大しているとしばしば報じられますが、その裏には、こういった大学生達の就職活動の動きもあるのです。

以上、北京オリンピックに関連した、大学ニュースをご紹介しました。
幸運にも北京に観戦に行ける方は、ついでに大学や、現地の大学生のことも見て、日本と違う部分や同じ部分を探してみてください。

以上、マイスターでした。

※この記事は、現役高校生のための予備校「早稲田塾」在籍当時、早稲田塾webサイト上に掲載したものです。