日本食大学院 関西に設立の動き?

旅先で、地元の料理を食べるのが好きなマイスターです。

海外なんかに行くと、たまに「なんじゃこりゃあ!」と思う味や、「その食材、ほんとに食べられるんですか?」と思うビジュアルの料理に出会うこともあります。
でも、そうやってカルチャーショックを受けることも含めて、楽しみです。

マイスターが申し上げるまでもないことですが、食というのは大変な文化資産です。
同時に、様々な切り口で研究することができる、非常に興味深い素材でもあります。

【教育関連ニュース】—————————————–

■「『食の大学院』関西に設立構想 経産局が主導」(Asahi.com)
http://www.asahi.com/kansai/news/OSK200707180161.html
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和食の本場、関西に日本食を総合的に研究する「食の大学院」を作ろう――。そんな構想が近畿経済産業局を中心に動き始めた。実際の調理法、もてなしの作法や料理店経営のノウハウなどを教える機能と、日本食の歴史や献立などを文化として研究する機能の両方を備えた大学院を、早ければ2010年にも設立する計画だ。
(略)
内容は、飲食店の調理師や接客係の人を、日本料理店の経営者やマネジャーに育て上げる社会人向けの大学院となる予定だ。「食文化」「調理」「栄養」「食経営」など、実技を含めた授業を用意する方向だ。

日本料理を研究する場にもする。同局企画課の細川洋一課長補佐は「欧米には自国料理を専門的に研究する大学院がある。日本料理の奥深さを、関西から世界に発信したい」と話している。

(上記記事より)

というわけで、日本食を総合的に研究する大学院を設立しよう……という動きがあるようです。

日本食の歴史や献立などを文化として研究するというのは、なかなか意義深いことです。
今や日本食は世界的にも注目されていますから、研究成果を海外に発信したら、注目されるかも知れません。

もっとも、「実際の調理法、もてなしの作法や料理店経営のノウハウなどを教える機能」というのは、正直、個人的には今ひとつピンと来ません。

飲食店の調理師や接客係の人を、日本料理店の経営者やマネジャーに育て上げる社会人向けの大学院

……と上記の記事にはありますが、果たしてこれは大学院に求められている役割なのでしょうか……マイスターにはよくわかりません。

なんとなく、「実際の調理法」とか「もてなしの作法や料理店経営のノウハウ」を知りたい方は、大学院に来ないような気がします。

誰がどういう人達に、どういう形で教えるのか。
その大学院で学んだ結果、どのようにいいことが起きるのか。
そのあたりの打ち出しがまだまだ不明確なのかな、という印象を受けます。

……なんてことを思いながら、ネットを検索していたら、↓こんな報道を発見しました。

■「日本食文化研究で関西に大学院を 近畿経産局が活性化策提案」(京都新聞)
http://www.kyoto-np.co.jp/article.php?mid=P2007071800149&genre=B1&area=O10

近畿経済産業局は18日、アニメや映画などのコンテンツ(情報の内容)、芸能、食といった文化産業の振興を通じた関西活性化策をまとめた。本年度の取り組みとして、産学連携による映画人材の育成事業や日本食を研究する専門職大学院の開設準備などを掲げた。

イベントプロデューサーやコンテンツ製作会社社長らと検討会議を設けてリポートをまとめた。文化産業の重要性として、アニメや日本食といった日本独自の文化に対する関心が世界的に高まっていることを指摘。関西ならではの振興策を推進するように提言した。

(上記記事より)

というわけで、これ、最初から「経済振興策」のひとつとして考え出されているのですね。

「大学院で日本食を学びたい!」という人が多いから設立するのではなくて、「関西らしい活性化案を考えだそう」というゴールが先にあり、その結果、大学院という切り口が浮上してきたということのようです。
大学院の位置づけにあまりピンと来ないのは、そのあたりに原因があるのかもしれません。

↓こちらに、報告書の原文もあります。ご興味のある方はどうぞ。

■「文化産業の振興を通じた関西の活性化について」(経済産業省 近畿経済産業局)
http://www.kansai.meti.go.jp/7kikaku/bunkareport/bunka.html

もっとも、日本食は研究対象としては非常に面白い素材ですし、特に関西においては、関わっている方々も多いです。
まだ最初の構想段階だからブラッシュアップされていないだけで、これから計画を詳細に詰めていったら、面白そうな大学院になるかもしれません。

独自の食育カリキュラムを策定するとか、
大学が中心になって日本食の料理人のネットワークを構築するとか、
栄養系大学とは少し異なるアプローチで社会に存在感を発揮するという道もあります。

もし本当に設立するのであれば、せっかくだから面白い機関になって欲しいと思うマイスターでした。

1 個のコメント

  • マイスターさん、
    そんな構想が関西にあるとは知りませんでした。いろんな関連記事をありがとうございました。おもしろかったです。マイスターさんの集められた記事に目を通していて、一つ思いだしました。亡くなった前農林水産大臣が、アメリカの日本食は日本食じゃない!という発言をされて、その結果、和食の認証制度なるものを作る必要があると新聞などに載っていましたよね。「食の大学院」を設立し、「研究成果を海外に発信」するなら、この大学院は海外でどういう役割を果たすと思われますか。sushi policeなどと呼ばれることになる可能性がないとはいえないと思うのですが。