AO入試と一芸入試

AO入試で大学院に入ったマイスターです。

実際に自分で受験するまでは、AO入試について今ひとつ分かっておりませんでした。
「一芸入試」というのがあるのは知っておりましたので、似たようなものかな……? くらいに思っていたのです。

でも実際には、マイスターは、AO入試と一芸入試は、発想からして違うように思います。

いわゆる一芸入試というのは、自分で磨き上げた特技や、何らかの秀でた実績をアピールする入試スタイルです。特技のアピールを通じて、大学側は経験の豊富さ、物事に取り組む姿勢、周りに与える影響力の大きさといった「個性」「人間性」を見ているわけです。
一芸に秀でた学生は、大学の学びにも真摯に打ち込み、様々な点で周囲に好ましい影響を与えるだろうというわけです。

一方AO入試というのは「最初に大学の学びありき」です。

我が校が社会に送り出したい学生のイメージはこうである。
そのために4年間で行う教育のカリキュラムはこうである。
その我々のカリキュラムに対して、十分な知的好奇心や適性を持って、我々が予想する以上の成果をあげてくれそうな学生とは、どういう学生だろうか……

……という発想で、「自分達のカリキュラムに適している人」を探し出すのが、AO入試の発想だとマイスターは認識しています。
したがって、AO入試が成功しているかどうかというのは、入学後の成績や、卒業後の活躍ぶりを見れば分かるのです。

しばしば「AO入試で学生を集めるのはいいんだけど、AO組は卒業まで成績が悪いからなぁ」なんて言っている大学関係者を見かけますが、それは、AO入試としては失敗しているということです。
AO入試組は筆記試験を通っていないわけですから、入学後、一時的に基礎的な科目でつまづくということはあるでしょう。そこはフォローが必要です。しかし、「うちで伸びるのはこういう学生だ」という基準で学生を選んでいる以上、卒業までにAO組が頭角を現さなかったら、それは入試から教育までの流れがどこか破綻しているということです。選抜の方法が適切でないか、あるいは入学後の教育が十分でないかのどちらかでしょう。

AO入試と一芸入試は、学力試験以外の部分で評価するという点では一見似ているのですが、このように根本的なスタンスが異なります。

ですので、↓例えばこういった記事を読むと、誤解する人もいるんじゃないかな、なんて思います。

【教育関連ニュース】—————————————–

■「変貌する学び(7)ユニーク入試、大学に活力」(NIKKEI NET)
http://www.nikkei.co.jp/kansai/univ/39449.html
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けん玉や芸能活動など筆記試験以外の特技で合否が決まる一芸大学入試。導入が相次いだ1990年前後には入学後の単位取得を不安視する声が多かったが、多様な学生を得てキャンパスを活性化できる効用は大きい。最近は一芸入試が派生する形で、受験生が自らを大学に売り込むAO(アドミッションオフィス)入試を導入する大学も急増している。先駆的な試みが多い関西のユニーク入試を追った。
(上記記事より)

詳細は元の記事をご覧ください。
記事の大半で説明されている入試は、マイスターからすればすべて一芸入試のタイプに思えるのですが、「AO入試」という言葉がところどころに差し込まれていて、両者が混同されている気がします。

でもこの記者の方に限らず、一般の方、受験生、高校教員、そして大学関係者に至るまで、両者の違いを明確に理解している方はあまりいないのではないか……と思ったりもします。

日本の大学は、比較可能な数字以外で人間を評価・選抜することに、まだ慣れていないのだと思います。ですから一芸入試とAO入試、現時点ではどちらにも不完全な部分があるでしょう。
ただ、一生に関係する選抜をする以上、少なくとも入試を実行する側は立ち位置を常に認識しておくべきではないかと思います。
自分達は最終的にどのようなゴールを目指していて、そのために今、どのような方法を用い、何を入試選抜で達成しようとしているのか。その辺りをあいまいにしない方がいいように思われます。

以上、マイスターでした。

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(おまけ)

AO入試や推薦入試で受験が多様化……すると同時に、早期化しているというのは皆様よくご存じでしょう。

「本日、出願書類が締め切り」という入試があったのを、ご存じでしょうか。

■「首都大学東京 都市教養学部 理工学系 生命科学コース ゼミナール入試(PDF)」
http://www.tmu.ac.jp/resource/pdf/entrance/outline_fac/others/20semi_l_pamphlet.pdf

募集期間が、平成19年4月1日(日)から27日(金)まで。
マイスターが知っている中では、最も早い出願期間の入試です。

もっとも、上記の「ゼミナール入試」は、6月から9月にかけて実施されるゼミナールやサマーセッションに参加した上で選抜を行うという、ちょっと特殊なスタイルの入試なのです。で、今回の募集期間は、まずゼミナールに参加するかどうかを聞くものなんですね。進路に迷っているけどとりあえずゼミナールに参加してみて、結果的には首都大学東京を受けないという方も中にはおられるかもしれません。
そういう仕組みの入試ですから、募集時期が早いのも無理はありません。

ただそれにしても、4月の時点で入試に関する書類を書いている高校生がいるというのは、個人的にはちょっと驚きでした。