あるセンター試験会場で起きたトラブル

マイスターです。

こんなブログを書いておりますと、様々な方からメールをいただきます。
最も多いのは大学関係者の方からのメールですが、他にもメディアの方、企業の方、学生の方、海外在住日本人の方など、様々です。こんなにも色々なお立場の方が読んでくださっているのかと、メールをいただく度、身の引き締まる思いになります。
ちなみに内容は、「ブログのネタになりそうなニュースを見つけたのでお知らせします」というものが多いです。実に愛のあるメールです。

また、今の大学教育についてのご意見や、大学について感じる疑問等もたまにいただきます。なるほどと頷けるご意見も多く、大変参考になります。

さて、そんな数多くのメールの中で、これは他の皆様にも読んでいただいた方がいいなと思うものがありました。

メールをくださった方のご許可を得て、ここに転載したいと思います。

先般、実施されました、センター試験におきまして、試験時間中に急病となった受験生の救済処置に対して、会場側の対処が明らかに受験生に不利にはたらいたが、再試験等の救済の対象とならなかった事例がございましたので、報告させていただきます。

これに先立って、入試センター本部には、電話にて報告し、救済処置の訴えをしましたが、再試験等の救済処置の対象にはあたらないとの回答を得ております。審議の上の最終回答と伺いましたが、納得がいかない理由による回答でしたので、所轄監督省庁への報告の形で、問題提起をさせていただきましたが、何の連絡もなく、大変不本意な点数(数学・化学が規定時間あたえられなかったため)のまま、○○大学の前期試験を受けざるを得ませんでした。

以下、詳細をご高覧いただければ、幸いです。

日時:2007年1月21日(二日目)午後
場所:センター試験会場:××大学

経緯:
・「数学U・数学B」の開始直後、吐き気に襲われる。
・開始5分後、試験監督官の許可を得て退場し、廊下で吐いた後、トイレに誘導される。(残り55分)
・開始20分後、試験再開の意思表示をし、別室使用を申出たところ、待機の指示を受ける。(残り40分)
・別室を準備され誘導されるまで、体調が悪いのに、トイレ入口で立ったまま、結果として20分間、待たされる。
・開始40分後、別室に誘導され、問題・解答用紙を渡される。 (残り20分)
・通常の終了時刻に回収され、終了。

・休み時間後、引き続き、別室にて、化学」の試験を受ける。試験最中に許可を得、袋に吐きながら、試験を所定の60分間受け、終了。
・帰路も、休み休み途中で、袋に吐きながらも、バス・電車・タクシーを乗り継いで帰宅。帰宅後、38度の発熱。嘔吐・発熱の症状が続く。下痢の症状も加わる。
・翌日病院に行き、感染性胃腸炎と診断され、40分間の点滴を受け、投薬処置後、帰宅。

新聞の報道によりますと、急病、鼻血の場合に再試験の対象となったとの救済例数が発表されている中、個々のケースの扱い方の不透明さと不公平さに非常に疑問を感じます。

センター本部から「救済処置の対象となりませんでした」との最終回答をいわれた以上、受験生側としては、あきらめざるを得ませんが、せめて、今回の不幸なケースが来年への、反省材料・検討課題として、真摯に受け止められなければ、とてもすくわれない気持ちでいっぱいです。

問題点としては、

@会場側の都合のため、試験時間を20分間Lossしてしまったことを会場側もセンター本部も認めながら、救済の対象にあたらないと判断したこと。(センター本部、△△さん談)

→20分間のLoss時間は、会場側の都合により、「会場内センター試験本部から許可を得る時間+教室の準備時間+問題・答案の移動時間」として、発生しています。

A対象とならなかった理由は、会場側が別室を準備するのに故意に20分間もかけたわけではなかったため。とのこと。(センター本部、△△さん談)

→受験生は、残り40分の時点で、再会の意思を示した。ただ、再び嘔吐を繰り返す予感のため、別室受験の伺いをしたところ、試験を再開できる時間を前もって知らされずに結果としてその後、20分間もトイレで立ったまま、待たされた。試験時間が20分も短縮されるのを知っていたら、即、元の席に戻って、試験の続きをしたはずである。

B.当該受験者は、翌日、病院に行き、感染性胃腸炎(ノロウィルス感染の疑い)と診断され(診断書提出可能)、40分間の点滴処置を受けた。医師からは、監督者側の対処に驚かれた。

→あきらかに体調が悪いとわかる生徒に対して、結果的には、20分間もイスも暖房も一切ない、トイレに立たせたまま、待たせた。

この対処は適切だったといえるでしょうか。人道上、保健上問題がなかったでしょうか。

以上、その時の監督者は、想定外で、精一杯対処された結果かもしれませんが、後から、対処が適切ではなかった事実が判明した時点で、救済の対象とすべきケースと考えます。

会場側の都合で20分間も試験時間を失ったことの弁償と、具合の悪い受験生を学校のトイレにいすも暖房(毛布)もない状態で20分間も立たせたままであったことは、保健上、問題があり、さらに体調を悪くした可能性も否定できません。今回のケースは、二つも大きな問題があり、非常に受け入れ難い回答と感じると同時に、今後のためにもこのまま打ち捨ててほしくないと考えます。

センター試験の全国の会場には、もともと、別室・保健室が設定がないと聞きましたが、季節柄、流行性感冒もさることながら、今回のような、感染性の病気の場合、他の受験生に考慮無に自席に戻ることが、果たして妥当だったのか。今回のように、別室隔離が、むしろ正しいのではと思われます。

今後の課題とするべきと思われます。

いただいたメールの内容は以上です。
上記は、このトラブルに遭遇された受験生の方の保護者の方からのメールです。
このブログにこうしてご報告をくださるくらいですから、さぞご本人も保護者の方も、悔しい思いをされたのでしょう。

なお文中にあるイタリック体の伏せ字部分ですが、ご本人の許可をいただいた上で、マイスターの判断により伏せました。
ご本人の身元が特定されないようにするため、そしてこれは特定の会場に限らず、広く共有すべき問題だと思うことがその理由です。

ちなみにマイスターには、上記の出来事が事実なのかどうか、わかりません。
ですので、とりあえず事実だと仮定して、以下にマイスターの考えを述べます。

個人的には、これらの対応は問題の多いものなのではないかと思います。
試験上の不利益もさることながら、「病人を長い時間放置しておいた」ということが特に気にかかります。上記のメールの内容が事実なら、会場のスタッフの対応は社会通念の上でも許されるものではないと思います。
その他の部分を見ても、様々な対応がうまく回っておらず、結果的に受験生の側がとても納得できないような結果を引き起こしてしまっているようです。

なぜこのようなことが起きてしまったのでしょうか?

センター試験というのは、国を挙げてのイベントです。全国の会場で同時に行われるわけですが、現場でそれらを仕切るのは大学入試センターの職員ではなく、試験会場となる大学の人間です。したがって大学側のスタッフの仕事は、すべて大学入試センターの用意したマニュアルによりあらかじめ指示されています。
トラブルが起きた際の対応も、マニュアル通りに行わなければなりません。何か起きたら「まずマニュアルに従う。わからないときはセンターの指示を仰ぐ」というのが原則です。

これはマイスターの予想ですが……上記のケースでは、受験生を待たせる間、大学側はこの辺りの判断に窮していたのではないでしょうか。

「試験中に体調を崩す受験生が出た」なんてケースは、わりと起こる可能性の高いトラブルであるように思われます。別室受験者が出るくらいのことは、どの会場でも想定済みだったでしょう。
ただ今回の場合、担当者達「試験の途中で別室に移る」という辺りの扱いが判断できず、センターに指示を仰いだが、そのあたりに手間取り、予想外の時間を食ってしまったのではないかな……などと推察します。
(※すみません、マイスターはセンター試験の業務についてはあまり詳しくありませんので、どなたかお詳しい方、この辺りについてのご推察・ご意見くださいませ)

ただ、理由はどうあれ病人をトイレの前で長時間放置して待たせておくというのは、やはり論外でありましょう。
規則から外れないよう、上の指示を仰ごう……という焦りが先立つあまり、もっと大事なことを忘れてしまったのかなと思います。日々、学生の安全を預かっている教育機関としては、はなはだ疑問を覚える姿勢です。

また救済対象とならなかった理由の、「会場側が別室を準備するのに故意に20分間もかけたわけではなかったため」というのも、受験生側としたら到底納得のいく説明ではないでしょう。なんだか、「運が悪かったね」と同じレベルの説明であるように感じます。

もしかしたら、知られていないだけで、上記のような対応にあった受験生が他にも少なからずいるのではないか、そんな気がしてしまいます。
なにしろ何十万人もが一斉に受ける試験です。ICプレーヤーの不具合や交通機関のトラブルといったわかりやすい被害だけではなく、上記のような人的トラブルだって何件も起きているはずです。いちいちメディアが取り上げないだけかもしれません。
でも受験生にとっては非常に貴重な機会なのです。マスメディアが取り上げなくても、関係者はちゃんと情報を共有しておくべきです。

もうすぐ入試シーズンも終わります。
そうしたら、マイスターも含め、大学入試に関わった人間は、

「自分達の会場でも同じようなことが起きていたのではないか?」
「もし、同じようなことが起きたら、自分達はちゃんと対応できただろうか?」

ということを振り返ってみた方がいいのではないかと思います。

以上、問題共有のための転載をご許可いただけましたので、今日はいただいたメールをご紹介いたしました。

マイスターでした。

2 件のコメント

  • 私は、2007年1月のセンター試験で、関東地方のある私立大学で、最初から別室の個室で受験した、中心おじさんです。
    私はもう、10回以上、センター試験と2次試験を受験した経験があります。
    上記の、数学の途中で吐き気をもよおした方の
    悔しさを、お察しします。
    私個人の感触では、上記の方の場合、大学入試センター本部の担当者が、ずいぶん官僚的かつ高圧的だったように思えます。

  • 私も、九州地方の国立大学で、試験終了後に、
    高圧的な大学事務職員と遭遇した覚えがあります。
    漫画にでてきそうな、ふてぶてしい態度で何かしゃべっていま
    した。椅子に座って、ふんぞり返って、自分の髭を
    目玉クリップでつまみながらしゃべっていました。
    内容は、第2外国語の選択についてでした。
    以前、千葉大学の教育学部英語教員養成課程の入試で、
    受験生の抗議で試験やりなおしが認められた事が、朝日
    新聞に掲載された事がありました。
    上記の方も、マスコミの力を借りた方がいいかもしれません。
    今の世の中、裁判所の判決ですら、マスコミに左右される
    事がよくある事ですから。