「『世界の東大』へ変身計画 外国人スタッフ1300人に」

マイスターです。

「外国人教員と接する機会は、語学の授業だけだった」という日本人って、どのくらいの割合なのでしょうか。おそらく、大多数がそうなんじゃないかと思います。旧帝大や有名私大などを出た方でも、外国語で専門科目の授業を受けたり、個人的に質問したりした経験があるという人は、そうはいないでしょう。
(大学院まで含めれば、研究指導を受ける機会がありますから、若干その割合は高まるかも知れません)

日本では、学生が語学の授業以外の目的で、外国人教員と接することはまだあまりないようです。なぜなら、そもそもキャンパスに外国人がいません。外国人教員の人数や比率は各種のランキングの調査項目になることも多く、大学人にとっては大きな関心事のようです。

そんなわけで、今日は↓こんなニュースをご紹介します。

【教育関連ニュース】—————————————–

■「『世界の東大』へ変身計画 外国人スタッフ1300人に」(Asahi.com)
http://www.asahi.com/edu/news/TKY200702230374.html
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東京大学は国際化を急ぐため、教授や講師、助手らの外国人スタッフを、現在の5倍にあたる1300人規模に増やす方針を明らかにした。世界各地に置く東大の研究所や事務所も5倍強に増やし、人材を発掘して日本に招く。日本の最高学府を自負する東大も、大学の国際比較で2けた順位に甘んじ、海外の人材活用などでは国内の他大学にも後れをとっている。危機感は強く、対策に本腰を入れる。

東大によると、外国人の学術スタッフは現在、約250人。日本人を中心とした全体では約5000人で、外国人比率は5%弱にとどまる。

国内の他の大学では、学術スタッフの範囲や常勤・非常勤の違いなどで統計の取り方が違うものの、外国人比率は上智大が48%、早稲田大で8%前後。東大は、「国際化」への優先課題として、外国人スタッフを充実させることにした。
(上記記事より)

東京大学が、教授や講師などの外国人学術スタッフを、現状の5倍である1300人に増やすという報道です。

全体の「1300人」「5倍」という数字が目立ちますが、その内訳も気になるところです。『大学ランキング』を見てみると、2005年度時点での東大の外国人教員(常勤の教授、助教授、講師)の人数は60人だとあります。
今回の報道の「学術スタッフ」の内訳は、どういった内容なのでしょうか。非常勤の方は含まれるのかとか、教授はどのくらいの割合を外国人にするのかとか、知りたいですね。

しかし、確かに東大の外国人教員の少なさは、しばしば諸外国の代表的な研究大学と比較して批判されたりします。「日本の大学は海外の大学に比べて閉鎖的である。だからダメなんだ……」といった話の象徴のように語られることもありますね。
我が国を代表する大学だからですが、色々な場面で引き合いに出されて大変ですが、東大に外国人スタッフが少ないのは事実です。今回の「5倍」構想を見る限り、関係者の間にもやはり、そういった点を改めようという動きがあるのでしょう。

個人的には、大変結構な話だと思います。世界トップレベルの研究大学を目指すなら、外国人比率5%というのはいかにも低過ぎるように思われます。
数値目標を掲げて無理矢理にでも外国人を増やすことが果たして本当に良いのか、批判もあるでしょうが、このまま放っておいたらいつまでも現状のままだと思いますし。

ところで、この目標をどのように実現するのか、マイスターは気になります。

記事では

○キャンパス内での英語教育プログラムを充実させる

○海外の人材の受け皿として、外国人向けの宿舎や奨学金の整備を進める

○東京・本郷キャンパスのそばに外国人の研究者と留学生向けに220室規模のゲストハウスを建て、千葉・柏キャンパスのそばにも施設を用意

といった構想が挙げられています。非常に大事な施策ではありますが、これだけで5倍になるわけではないでしょう。

研究環境の充実度や、組織の風通しの良さを改善することも必要です。また学問分野にもよりますが、東大は教員における自校出身者の比率(いわゆる「純血率」)も比較的高いです。そんな中にいきなり外国人をどさっと入れて、組織がうまくまわるのかどうかもわかりません。
欧米の大学の他、精華大学や北京大学、インド工科大学、香港大学などといったアジアの大学と比較されたとき「東大の方が、研究者としてのキャリアをのばせる」と思ってもらえないといけません。東大は多くの分野でアジアトップクラスの研究成果を誇っておりますが、記事にもあるようにスタッフの国際化という点では後れを取っています。他国の大学も常に優秀なスタッフを探しているでしょうから、それを退けて人材を呼び込むのは簡単ではありません。
外国人教員を増やすとなると、英語を操れる職員も相応に必要になるでしょう。大学による組織的なサポート体制も国際レベルにしないと、外国人スタッフ1300人の状態を維持することはできないような気がします。

ところで、外国人スタッフを5倍にするとして、そのお金はどこから出るのかも、個人的には興味深いです。
やはりその分、日本人を減らすということでしょうか。もしくは

海外の研究所や事務所は、欧米とアジアを中心に22の拠点があるが、この春で創立130周年を迎えるのにちなんで130カ所まで増やす方針を掲げた。東大の現状は早稲田大の9カ所、慶応大の8カ所などを上回っているが、海外拠点を積極的に増やしてきた京都大の34カ所(06年5月)には及ばない。
(上記記事より)

と冒頭の記事にあるのですが、外国人スタッフを5倍に増やすというのはひょっとして、この増加する海外拠点のスタッフの分が相当含まれているのでしょうか。

いずれにしてもそれなりのお金が継続してかかりそうですよね。

ちなみに朝鮮日報がこの朝日の報道を記事で取り上げているのですが、

こうした積極的な投資は、東大が昨年、日本最大の信用評価会社R&Iからトヨタ自動車などとともに最高信用等級のAAA評価を受け、低い金利で資金を調達することが可能になったためとみられている。
(「国際化目指す東大、外国人教授数を5倍増へ」より)

という分析でした。ほんとか、という気もしますが、ともあれこういった構想を実現させるくらいの資金を東大が持っているのは確かなのでしょう。

なかなか大変そうな取り組みですが、どのように東大がこれを達成するのか、注目です。

以上、マイスターでした。

1 個のコメント

  • とても興味深い記事です。たしかに、外国人が増えることはいいことだと思います。日本の大学内での就職競争率は上がるかもしれませんが、国際的に大学が成長していけば、海外の大学で教鞭を取る日本人が増えるかもしれませんね。大学院を卒業したあとの進路の選択肢に、海外の大学が含まれるなんて結構素敵な気がします。