大学で、航空機のパイロットを目指そう

マイスターです。

今や、大学には様々な課程があります。「○○になりたい!」という夢に直結した学科もいっぱいあります。
スポーツ選手、学校の先生、科学者、看護師、弁護士、医者……子供の頃に描いた夢を高校生になってもそのまま持ち続けている人、すばらしいです。大学で夢を叶えてください。

さて、子供に聞いた「将来の夢」によく出てきそうな職業の中で、意外にも、これまで大学と切り離されていたものがあります。

それは、飛行機のパイロット。

というのも、これまで「飛行機のパイロット」を仕事にするためには、航空会社に入社するか、航空大学校に入学するしか選択肢がなかったのです。
両方とも、大学を卒業してからの話ですから、大学はあんまり関係していませんでした。
それがようやく(?)、変わり始めたみたいです。

【教育関連ニュース】—————————————–

■「大学でもパイロット養成 第3の道開く」(Asahi.com)
http://www.asahi.com/life/update/1128/013.html?ref=rss

■「東海大パイロット養成へ」(湘南新聞)
http://www.scn-net.ne.jp/~shonan-n/news/050806/050806.html
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大学に旅客機のパイロットを養成するコースを設ける動きが広がっている。東海大学(神奈川県平塚市)が今春開設したのをきっかけに、桜美林大学(東京都町田市)なども開設に向けて動きだした。これまで航空会社に入社するか、国が設置した専門校を卒業するしかなかったパイロットへ、より身近な第3の道が開かれつつある。

東海大の「航空操縦学専攻」の教室に今月、ジャンボ機の操縦席を模したフライト・トレーナーが登場した。提携する全日空から贈られた。「これに毎日、座れるのか」。学生らが興味深そうにスロットルや計器に触れている。

定員30人に160人が受験した。高校からの進学は6割で、残りは社会人や他大学から。商社を辞めて入学した横浜市中区の瀧本孝二さん(29)は「子どものころからの夢にどうしても挑戦してみたかった」と話す。
(Asahi.com記事より)

東海大学が全日空と協力し、2006年4月、パイロット養成のコースをスタートさせました。全国初の試みです。これにより、パイロットを目指すための「第三の道」が開かれることとなりました。
桜美林大学も後に続こうとしているなど、今後、パイロット養成は大学のコースとして本格的に根付いていく可能性がある……というわけでパイオニアである東海大学の事例が、今回Asahi.comの記事で改めて紹介されたのですね。

東海大学は、今ではかなり大きな総合大学ですが、もとは1943年に設立された「航空科学専門学校」が母体だという珍しい出自を持っています。今回のパイロット養成課程の創設は、その歴史に恥じない取り組みだと言えるでしょう。
設立までの経緯については、湘南新聞の記述に詳しいです。

現在、航空業界はパイロット不足が深刻化している。団塊の世代が大量に退職する「2007年問題」に直面しており、同年度から5年間で約1300人が退職するといわれ、全日空でも同5年間で約450人がリタイアする。全パイロットの4分の1が退職する計算だ。しかも羽田空港の便数29万回(現行)が2009年には40万回に増便。滑走路の再拡張に伴い、パイロット不足はさらに深刻化するとみられる。
同研究所(※ANA総合研究所)の豊島部長は「4年制大学の卒業生を自社養成でパイロットに育てることや航空大学校の卒業生を受け入れてパイロットにするだけでは、非常に心もとない。受け入れの多様性が必要と思い、その構想の中に東海大学の存在があった」
操縦士を育てる基礎となるのが航空工学。東大、九州大にも設置されているが、東海大と日大の2校に絞り、結果、東海大に決まった。卒業生の多いことも決め手になったという。
(「東海大パイロット養成へ」(湘南新聞)記事より)

このように、全日空側から大学に声をかけたのですね。
航空工学の専門課程を持っている大学、という点がベースにあったようです。これは工学系でも非常にレアな専攻ですから、選ぼうと思っても初めから数校しか候補に挙がりません。その中で全日空が連携相手として選んだのが、東海大学だったというわけです。

というわけで現在、四年制大学としては日本唯一のパイロット養成課程が、↓こちらです。

■「学科要覧:工学部航空宇宙学科 航空操縦学専攻」(東海大学)
http://prog.pr.tokai.ac.jp/tokai/TkpFacultyInfo?p_gakubuc=2190&p_shoc=060007&p_sisetuc=02

湘南新聞の記事で、この学科の当面の構想が語られています。

当初の入学定員は30人。男女関係なく入学が可能だ。ただ、現在、航空宇宙学科に在籍する学生や他の学科の学生の希望者についても受け入れる方針。(略)将来は「航空操縦学科」として独立させ、60人に拡大する方針だ。(「東海大パイロット養成へ」(湘南新聞)記事より)

将来は、学科として独立させるそうです。東海大学の目玉の一つになるでしょうね。

この学科、学びのスケジュールが特徴的です。一年半のアメリカ留学が組み込まれているのです。実際の飛行訓練をノースダコタ大学で行うためです。

■「工学部航空宇宙学科 航空操縦学専攻:学びのスケジュール」(東海大学)
http://www.u-tokai.ac.jp/gakubugakka/2006/kou/souju/schedule.html

前述した湘南新聞の記事には、東海大学教授であり航空操縦学専攻設置準備室長でもある松本亮三氏のコメントとして、

大学4年生でパイロットライセンスを取得するのは、日本の大学では皆無だが、アメリカでは普通のこと。航空操縦学科を設置する大学は全合衆国で110校あり、ノースダコタ大学には訓練用の飛行機が120機ある。1800人の学生のうち1000人は飛行訓練をしている。
(上記記事より)

といったお話が紹介されています。なるほど、さすが飛行機に乗る頻度が高い国。需要に応えるため、大学レベルのパイロット養成課程も充実しているのですね。
ノースダコタ大学は航空宇宙学部を持ち、その分野の研究で知られているほか、航空技術に関する教育プログラムも充実しているようです。

■「John D. Odegard School Of Aerospace Sciences:Aviation」(University of North Dakota)
http://www.avit.und.edu/f1_Home/index.php

東海大学は今回、このノースダコタ大学と提携を結ぶことで、パイロット養成課程の設立にこぎ着けました。したがって学生さん達はみっちり英語を学ぶことになりますが、航空パイロットに英語はつきものですから、これはむしろ良い機会かも知れません。

さて、そんな東海大学の「航空操縦学専攻」。なかなか夢がありそうなコースだなぁと、個人的には興味津々です。パンフレットは↓こちらですので、ご興味のある方はどうぞ。

■「学科案内(PDF)」(東海大学)
http://www.u-tokai.ac.jp/gakubugakka/2006/kou/souju/souju.pdf

パイロットにあこがれる方が読んだら、目をきらきらさせるに違いありません。
教員陣も、航空大学校の教官やANAの機長など、パイロットを目指す学生達の期待に応えられそうな方がそろっています。
(教員のプロフィールに「飛行経歴」という欄があり、そこに「YS-11」なんてのが含まれていたりするからたまりません)

さて、このようにきわめて特徴的かつレアなコースですが、気になるのは学費ですよね。はい、とっても高いんです。

東海大では高校卒業と同時に養成を受けられる。実機訓練を米ノースダコタ大学に頼むことで、授業料を約1700万円に抑えた。
(上記記事より)

自力で免許を取得することに比べればかなり安いみたいですが、それでも1,700万円! これは、親が躊躇する額です……。
そもそも全日空が大学にパイロット養成課程を作って欲しいと思う理由のひとつは、「自社で育成する場合コストが高くつく」からなんですから、訓練費用が高くつくのは予想できます。しかも留学までしちゃうわけですし。

もっとも、長期的に見れば、お金についてはそれほど心配いらないのかも知れません。

700~800万円が留学費用だが、大学から留学時に一律150万円の奨学金が給付されるほか、全日空から400~500万円の奨学金(貸与)が受けられる。「優秀な学生に対しては大学で審査し、返還免除の措置が取れるようにしたい」と大学側は特例的措置も考えている。
(「東海大パイロット養成へ」(湘南新聞)記事より)

……など、奨学金が充実しているそうです。
それに、そもそもパイロットの給与水準自体が高いです。(「人生ゲーム」をやったことがある方は、給与が最も高い職業が「パイロット」だったことを思い出されるかもしれませんね(^_^;))
パイロットの平均年齢は39歳、平均年収は1,381万9,000円(平成17年「賃金構造基本統計調査」(厚生労働省)より算出)です。もちろん、それに見合うだけの能力と責任とがあってこその額だと思いますが、パイロットになれれば奨学金を返済できるだけの仕事はできるのではないでしょうか。

訓練は厳しく、責任は重い仕事、パイロット。
航空大学校でも航空会社の育成プログラムでも、そして大学でも、パイロットになるための厳しさは変わりません。しかし、目指す価値のある、魅力的な仕事なのは確かでしょう。
空を目指す方々は、今後はぜひ「大学」という選択肢も検討してみてください。

以上、マイスターでした。

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(参考)
■航空大学校
http://www.kouku-dai.ac.jp/index.html
■「自社養成パイロット」(全日空)
http://www.ana.co.jp/recruit/unkou/main.html

※実際に働いているパイロットには、航空大学校や航空会社社員の他、「防衛庁出身」という方も少なからずいらっしゃるみたいですが、これは「民間企業のパイロットになる」ための選択肢ではないので、本文中では触れていません。