「国立大、推薦・AO枠5割に拡大」

マイスターです。

ちょっとご紹介するタイミングが遅れましたが、先週、大きなニュースが一つありました。

【教育関連ニュース】—————————————–

■「国立大、推薦・AO枠5割に拡大」(読売オンライン)
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/news/20061107ur01.htm
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国立大学協会(国大協)は6日、定員に対する3割を上限としてきた国立大の推薦入試枠を見直し、AO(アドミッション・オフィス)入試での募集も含めて上限を5割まで認めることを決めた。

 ◆2008年入学から学生確保のため緩和

2008年春に入学する学生を選抜する入試から適用する。少子化の影響で国立大でも地方の工学部などを中心に一般入試の志願者が減少していることを受けた措置で、学生確保のため、協会内部からも上限の緩和を求める声が出ていた。

推薦入試は、高校の推薦に基づき、内申書や面接などで選考。AO入試は書類審査や面接、集団討論などで、意欲や個性も含めて評価する。

旧文部省は1995年度入試で国公私立大に対し、それまで明確でなかった推薦入試の枠を学部や学科などの募集単位ごとに3割と通知。国大協も96年度から推薦枠を3割までと決めたが、同省が上限を5割まで引き上げた00年度以降も、上限3割を維持してきた。

しかし、ここ数年、地方国立大では工学系学部などで一般入試の志願者数の減少が続き、志願倍率が2倍を切るケースが続出。受験人口の減少に加え、04年度以降、多くの国立大がセンター試験で5教科7科目以上を課し受験生の負担が増えたこともあってか、今春の入試では7大学で欠員が生じ、2次募集を行う事態となっていた。
(上記記事より)

既に、皆様の大学でも話題になったことでしょう。

マイスターも何人かの私大関係者から、

「ただでさえ公平な競争とは言いがたいのに、このうえAOを本気でやられてはたまらない」
「以前は私大の3教科入試やAOをバカにしていたくせに、自分達も追い詰められたらやるんじゃないか」

などという声を聞きました。
(国立大学の方々がどうお考えかは、まだ伺えておりませんので、関係者の方、よろしければご意見等いただければと思います)

記事には、

文部科学省の調査では、今春の国公私立大入学者のうち推薦・AO入試による入学は41・6%だったが、国立大は13・5%。私大の中には推薦・AO入試で6割以上を選抜する学部もある。
(上記記事より)

とあります。
そう、いまや私立大学は、推薦やAOなしでは学生募集が成り立たないのです。
したがって私大関係者は、このAOという市場(?)を、国立大学によって荒らされるのが不安なのですね。

もっとも、現在だって3割までAOで選抜できるのに、実際には13.5%しかとっていないわけですから、上限を引き上げたところで急に世の中の国立大学がいっせいにAOをやるとも思えません。それに、センター試験を課して(私大に比べて)学力バランスのいい学生をずっと入学させてきた各国立大学にとっては、AOを急激に拡大させることにも不安があるのではないかと思います。

個人的な考えを言いますと、マイスターは、AO入試はそう悪くないと思います。
ただし、「やり方次第」です。
うまく設計すれば、これまでにないタイプの学生を呼び込み、学内を活性化できると思います。が、ちゃんと考えて行わないと、不毛な結果になると考えています。

私大が行っているAOも、成功から失敗まで、色々です。
<その学科にあった学生>を採用するのがAO入試の本来の主旨ですが、中には、単なる青田買いの手段になってしまっているところもあるように思われます。
例えば、

「AO入試組は、成績悪いからなぁ。でも、AOやらないと学生が集まんないしなぁ」

なんて呟きが聞こえるようなら、あなたの大学は黄色信号かもしれません。

理屈で言えば、AO入試組が一番いい成績を独占しなければおかしいですよね。だって、<その学科で成果を上げそうな人>を採用しようとしたはずなんですから。
AO入試で入学した学生の成績が振るわないということは、すなわち、AOのやり方が間違っているのです。

例えば冒頭の記事では、

少子化の影響で国立大でも地方の工学部などを中心に一般入試の志願者が減少していることを受けた措置で、学生確保のため、協会内部からも上限の緩和を求める声が出ていた。(略)AO入試は書類審査や面接、集団討論などで、意欲や個性も含めて評価する。

とあります。
でも工学部では、入学後に必ず数学や物理学をみっちりやるわけで、「書類審査や面接、集団討論」だけで学生を入れてしまって本当にいいのか? と思いませんか。
意欲があることは、確かに最も大切な要素ではありますが、これだけではいけません。だって、確実に、入学後に基礎学力も必要になるのですから。
(ですから、入試段階では意欲を重視するということなら、入学後に理数系科目の補習を充実させるなど、リメディアル教育にも力を入れる必要がありますね)

一方、逆に入学後の学びと選抜方法とがうまくあっていれば、非常に高い成果を上げる可能性もあると思います。

・日本の大学は、AO入試を勘違いしている?
http://blog.livedoor.jp/shiki01/archives/50021771.html

↑以前にご紹介しましたが、聞くところによると、慶応義塾大学SFCでは、AO入試組の成績が最も高いのだそうです。(ただ、この話を聞いたのは数年前ですから、現在がどうなっているかはわかりません)

また、マイスターがこれまでに知った中では、↓東京工業大学が行っている入試などはとてもユニークです。

■「数学だけ5時間…東工大『究極の1科目入試』今秋から」(読売オンライン)
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/news/20060311ur21.htm
以前のニュースクリップでも取り上げました。)

論理を導く力が問われる「超難問」にチャレンジし、それを乗り越えられる知的体力を持っている学生を取りたい。いかにも東工大らしいなぁ、とマイスターは感じました。

「AO入試」と言っても、別に面接や討論、プレゼンテーションといった形にこだわることはありません。
国立大学は、これまで「バランスのいい学生」をとることに腐心してきたのですから、そこを突き詰めて「脅威の10科目入試」みたいな枠をAOで用意したっていいのです(審査するほうが大変ですけど……)。医学部や教育学部など、バランスの取れた人材を地域に供給するための学部では、こういう入試を試してみてもいいように思います。

逆に東工大のように、ある種の知的体力を求める入試にするのも手です。
国立大学には日本を代表する研究大学が多くありますから、案外この路線は流行るような気もします。

…とこのように、AOも、入学後の学びにあわせて柔軟に捉えてみたら、国立大学の学生募集も、より多様になっていいんじゃないでしょうか。どうせなら単なる青田買いでなく、バリエーション豊富な人材を獲得するための方法としてAO入試を活用していただきたいと思います。
そして学生の入学後には、きちんと効果検証をしましょう。改善を重ねることで進化していくというのが、AOの大事なポイントです。
(もちろん、これらは私大についても言えることですよね)

以上、そんなわけで国立大学がどんなAOを行うのかをけっこう楽しみにしている、マイスターでした。

1 個のコメント

  • 調べてみたのですが、推薦・AO枠の学部定員に対する割合は国立大の中でも差があるようです。東大や東京外大のように枠がまったくない大学もあれば、25%を超えるような大学もあります。元々枠の大きい大学は、今回の上限の緩和によって30%、場合によっては40%以上に推薦・AO枠を拡大してくるかもしれません。
    ちなみに公立大には既に50%に達している大学があります。