ニュースクリップ[-10/29] 「定員割れで補助金大幅減」ほか

マイスターです。

「履修逃れ校」問題が大変なことになっておりますが、ニュースクリップでは、他の報道をご紹介していきたいと思います。

定員を大幅に割っているなら、補助金を減らします。
■「定員割れで補助金大幅減」(神戸新聞)
http://www.kobe-np.co.jp/kyodonews/news/0000150197.shtml

政府は26日、2007年度予算編成で、入学者数が定員を下回る「定員割れ」の私立大学に対し、経営改善の意欲が乏しく定員割れが解消しない場合に補助金の減額幅を拡大する方針を固めた。減額は全体で、11年度に05年度の最大3倍の約115億円を見込んでいる。一方で、有効な対策を講じた大学には、1校当たり2000万円程度の特別補助制度を新設する方向で検討している。

定員割れの私大運営は補助金への依存度が高く、経営改善を促す狙いがあり、私学助成制度がスタートした1970年代以来、初の抜本改革となる。少子化が進む中で、特に地域の私立大学では経営が厳しさを増しており、こうした大学を中心に淘汰が進む可能性がある。
(上記記事より)

わかりやすいアメとムチです。政府としても、

・限られた予算を効率的に配分しなければならない
・その一方で、優良な大学をより強化するための対策も進めなければならない

…というミッションを抱えていますからね。
個人的には、定員充足率が著しく低い状態が続くようであれば、その大学から補助金を引き上げるのもやむなしと考えます。
「社会からは厳しい評価を受けているが、補助金のおかげでつぶれずに済んでいる」という大学は、正しく淘汰されるべきです。

事業計画の甘い大学発ベンチャーが多い?
■「大学発ベンチャー 『数』より『質』」(読売オンライン)
http://osaka.yomiuri.co.jp/tokku/cp61026a.htm

今年7月、北九州市の音声認識システム開発会社の破産手続きが終了した。近畿大などとの研究成果を事業化するため、2000年に設立された大学発ベンチャーだ。信用調査会社の帝国データバンクなどによると、雑音除去など技術面の評価は高かったが、開発費が資金繰りを圧迫した。かつて技術顧問を務めた近畿大教授は「事業計画が甘かった」と振り返る。

経済産業省は01年、大学発ベンチャーを04年度末までに1000社設立する計画を発表した。大学に眠る「知恵」を社会に還元する狙いで、同省の調査では設立数は05年度末で1503社に達した。このうち倒産などに追い込まれたのは32社にとどまるが、「休眠状態の会社はごろごろある。真の成功率は50分の1以下では」(関西の公立大教員)との指摘もある。経産省は「研究者は事業計画より技術のシーズ(種)開発を優先しがち」と分析する。

そこで、大阪府は事業戦略の策定や市場調査に、1件あたり最大500万円の補助金を出す制度を05年度に導入した。公的支援は研究開発への助成が主流で、市場動向を無視して研究開発にのめり込む大学発ベンチャーが珍しくない。採算性などを見極めたうえで創業してもらうのが目的で、初年度は10件を採用した。
(上記記事より)

大学の研究成果を元にしたベンチャー企業の数は増えていますが、採算性が取れているのはごく一部では、という指摘です。まずは成功の可能性が高い「質」の高い事業を支援していこうということのようですね。

ところで、ベンチャー企業として勝負する以上、いかに技術が優れていても採算性がとれなければ成功とは言えません。事業計画はとても大切です。研究開発費と収益のバランスが崩れないように、うまく舵取りをしなければなりません。
研究者自身が事業プランを立てても良いのですが、そういったプロと組むという選択肢もあります。研究者がビジネスに追われるのは本末転倒ですから、個人的にはビジネス面を支えるプロをパートナーにする方がいいのではないかな、と思います。
大学ベンチャーの成長は重要ですから、研究とビジネスの両面でがんばって欲しいですね。

せんせー、iPodは研究費に入りますかー?
■「研究成果公開促進費:iPod購入…目的外使用目立つ」(MSN毎日インタラクティブ)
http://www.mainichi-msn.co.jp/today/news/20061021k0000m040092000c.html

財務省が05年度の「研究成果公開促進費」(30億5000万円)のうち、47件7億3100万円について調べた。それによると、指定された専用口座で予算の管理を続けていたのは12件だけ。補助金を大学の口座に振り替えたり、専用口座を研究者の個人口座同様に使うなどのずさんな管理が目立った。

研究成果を一般公開するための「データベース作成事業」では、予算の6割を事業と関係ない消耗品やシュレッダー、iPodなどの購入に充てていた例があった。
(上記記事より)

これは大学の問題であると同時に、「予算で動く組織」全体に共通する一面もある気がします。請求した予算を消化できなければ、翌年から予算が減らされる……という意識のもと、必要でもないものを買ったりするわけですからね。3月に急増する道路工事に憤る大学の知識人達ですが、自分も組織の中では同じことをやっているわけです。

研究成果を紹介する学術刊行物では、ほとんど使用されないまま廃棄されるなど、調査対象3億300万円の約9割が不要な刊行物作りに使われていた。
(上記記事より)

↑これなどは、必ずしもすべてが無駄とは言えないような気もします。ニーズのある研究だけをやっていれば良いというわけでもありませんからね。しかしそれでも可能な限り効率的に進めたいものです。本来ならオンデマンド出版にするなどの方法もあるのですが、年度ごとの予算消化主義では何かと都合が悪いのでしょう。
やっぱり、予算執行をもっと柔軟にするための方法を考えないことには、この手の問題はなかなか解決しないような気がします。

母校出身の大学教員ばっかりな中国。
■「中国の大学で『学閥人事』が深刻」(中国情報局)
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2006&d=1024&f=column_1024_009.shtml&pt=large

中国人民大学の教授らが北京大、清華大など国内17大学経済系の教師987人の出身大学を調査したところ、その中で604人の最終学歴がその母校卒で、直接母校に留まり、教職についたのが全体の62%を占めたという。
(上記記事より)

日本でも、教員の流動性をいかに高めるべきかという議論は尽きません。「東大卒、東大助手、東大助教授、東大教授」の4行で履歴書が終わる方こそ、従来の日本の正統エリートの典型だった、なんて指摘も聞きます。しかしこういった人事ばかりでは、組織が停滞します。
中国でも、こんな閉鎖的な人事が幅をきかせているのだとか。

「学閥人事」のため、ここ十数年の中国の学術は停滞しており、学生は教師を超える勇気はなく、大学は各種異なった学派を自由に論争させる空気を作り出せない。目下の現状は知名度の高い大学ほど、「学閥人事」の定着程度も著しい。
大学の「学閥人事」の弊害は実に多い。教師と学生が容易に小さな社会を形成していまい、それは排他的な心理となる。このような状況下では異なる観点、見解は生まれにくい。学問の単一化は新しい思想を創造するのに不利だ。
(上記記事より)

ううーむ、我が国でもしょっちゅう耳にするようなご意見。お互い、がんばりましょう。

(過去の関連記事)
・「4行教授」という言葉から思うこと
http://blog.livedoor.jp/shiki01/archives/50220758.html

「楽しさ」と成績の両立に悩むアメリカ。
■「米国の数学教育に警鐘、『楽しさ』と成績は別物と」(CNN.co.jp)
http://www.cnn.co.jp/usa/CNN200610220004.html

楽しくて身近な数学を、生徒が自信を持って学べるように――。全米の数学教師たちが心を砕いてきた授業方針が、実は必ずしも良い成績につながらないとの研究結果が報告され、波紋を呼んでいる。世界各国の統計を比較すると、生徒たちが数学について「楽しくない」「自信がない」と感じている国ほど、むしろテストの成績が良い傾向がみられるという。

この研究は、世界各国の小学4年生と中学2年生を対象に算数・数学の問題と好き嫌いなどの質問への回答を求めた03年の調査に基づいて、米シンクタンク、ブルッキングズ研究所のブラウン教育政策センターが実施した。調査結果を分析したところ、特に中2のレベルで、意外な傾向が明らかになったという。

「数学は楽しい」と答えた生徒の率が高かった上位10カ国は、いずれも成績が平均以下。逆に下位10カ国は、全て優秀な成績を出していた。また、数学を日常生活の場面に結び付けて教えようとしている国ほど、成績が悪いことも分かった。生徒が「数学は楽しくない」と答えながら、テストで好成績を示した国の例としては、日本、香港、オランダが挙げられる。一方、米国は「楽しさ」、成績ともほぼ中位だった。シンガポールで「数学に全く自信がない」と答えた生徒のグループと、米国で「数学に非常に自信がある」と答えたグループを比較すると、シンガポールのグループの方が得点が高いなど、生徒の自信と成績が一致していないことを示すデータも得られたという。
(上記記事より)

アメリカは、大学教育では世界のトップを走っておりますが、初等・中等教育段階の成績は、国際的にそう高くはありません。PISA等の国際成績比較調査では割と下の方で、日本や韓国などに負けています。そんな結果に対するする危機感があるでしょう、上記のような調査も行われているのですね。

「意外な傾向が明らかになった」と記事にはありますが、日本の教育現場からすれば、「何を今さら」と思う内容かも知れません。日本は各種の調査において、特に理数系で世界トップクラスの成績を出していますが、数学や理科が好きと応える生徒はそう多くありませんよね。我が国では「楽しい教育」と「レベルの高い教育」は別物だという考え方が一般的なんじゃないかな、と思います。

研究をまとめた同センターのトム・ラブレス氏は「成績の良い国は総じて、生徒への要求水準が高いようだ」との見方を示す。「だから生徒は数学を楽しんでいないし、自信もないと答える傾向があるのではないか」
(上記記事より)

…と、このような指摘もされていますが、少なくとも日本に関しては、学習指導要領に書かれた内容を詰め込むことに注力し、自分で考えさせることをすっ飛ばしたことの成果というだけではないかと個人的には思います。
かといって、アメリカのように「楽しさ」とか「生活に役立つ」とかいった面ばかりを重視するのもどうかと思います。数学は、純粋に論理として扱うことに意義があるんじゃないかと思いますし……。
どの国も、教育に関してはそれぞれジレンマを抱えているんですよね。

タイで、NGOが大学周辺の広告を問題視。
■「大学周辺に密集するアルコール飲料広告」(バンコク週報)
http://www.bangkokshuho.com/news.asp?articleid=537

NGO団体の調査により、バンコク都内の大学12校の周辺にアルコール飲料広告とアルコール販売店が密集していることが明らかになった。調査を行った青年保護団体「Y-Act」では、こうした環境が若者の飲酒癖を助長するとして、大学の半径500メートル以内でのアルコール飲料広告、販売を規制するよう政府に強く求めている。
(上記記事より)

……とのこと。この辺は、国によって考え方が異なるところかもしれません。ドイツなどでは、キャンパス内の学生向け食堂でビールを販売している大学もあると聞きます(かの国では、ビールはジュースと同じような認識なのかも?)。その国の文化や、宗教の教義などにもよるのかなと思います。

ちなみに日本ではというと……うーん、どうなんでしょう。建築基準法の用途地域の規定により、大学の周りにはいかがわしいお店などが作られないよう制限がかかっています。ただ、「広告」までは制限していないような気が。
アルコールについて言えば、むしろ大学の周りに飲み屋街があるほうが良い、という雰囲気がありますね。飲みながら学術論議に花を咲かせるというイメージでしょうか。そんなわけで広告も、わりと見かけるような気が。
やっぱりお酒の扱いに関しては、お国柄によって違いがありそうですね。

以上、今週のニュースクリップでした。

テレビでやっていたのですが、今、小学校の飼育小屋が危機に立たされているそうです。鳥インフルエンザの流行などもあって、子供と動物がふれあう機会がいっそう減る傾向にあるのですね。
そこで、地域の獣医師の方々が学校を訪ねて、子供達に命の大切さを伝える教育をしたりしているのだそうです。特殊な機械を使ってニワトリやウサギの心臓の鼓動を聞かせるなど、獣医さんならではの語り方。なるほど、こういう関わり方もあるのですね。
社会の中の様々な人々が教育に関わる。それが「美しい国」に相応しい学校のあり方なんじゃないかなと、個人的には思います。

今週も一週間、本ブログを読んでくださって、本当にありがとうございました。
これからも、どうぞよろしくお願いいたします。

マイスターでした。