ブラジルで急成長する高等教育  伸びている学問分野はどれ?

マイスターです。

以前のニュースクリップで、↓こんな記事をご紹介しました。

■「86学部設立要請:各州立大学から殺到」(サンパウロ新聞)
http://www.spshimbun.com.br/content.cfm?DA_N_ID=14&DO_N_ID=12594

ブラジルで、すさまじい学部新設ラッシュが起きている、という報道でした。この報道について、ブログで

ブラジルに関する報道です。各州とも、現在の1.5倍とか2倍とか、すごい勢いで学部を新設してます。そんなに需要があるのでしょうか。「BRICs」の一角ですから、やはり工業発展を支える理工系学部なのかな? どんな学部が増えているのかも気になりますね。
それだけ供給不足であるなら、場合によっては日本の大学に留学生を呼び込むチャンスになるかも知れませんよ。

……といったことを書かせていただきました。

これに関して、もうちょっと詳しく調べようと思ったのですが、資料があまりありません。ブラジル教育省のサイトになんとか辿り着いたものの、ポルトガル語オンリーらしく、解読はあきらめました。
図書館においてある各種の発行物にも、あるいは国連の関連機関サイトなどにも、昨今の学部増加に関する記述はありません…(いやもしかするとどこかにあるのかも知れませんが、未熟なマイスターには見つけられず…。誰か、データを見つけた方がいたら、教えてくださいな~)

ううむ、気になる。

……と思って悶々としていたら、サンパウロ新聞日本語版の記事で、もうちょっと詳しい報道がありました! マイスター以外にも、気になっている読者が多かったのでしょうかね。
というわけで今日は、そちらをご紹介します。

【教育関連ニュース】—————————————–

■「10年間に650%:大学教育課程が急成長」(サンパウロ新聞)
http://www.spshimbun.com.br/content.cfm?DO_N_ID=12743
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最近、高度発展を遂げた分野に高等教育がある。大学生の数が激増し、94年には学部数は633学部であったのが10年後には1789学部と約3倍、学生数は官立69・0万人が97・0万人と40%増、公立大学では69・0万人が117・8万人となり、69%増に過ぎないが、私立大学では97・0万人が298・5万人と3・1倍と大幅の増加を見た。

この内訳を調べてみる。文化系では人文学および美術関係が525科から571科へと8・7%の増加に対し、数学および電算機の分野では621科から1484科へと2・4倍、法学は354%、経営学が544%、社会学566%の伸びを示した。農業関係および獣医のコースは少なく僅かに172コース。これでも94年と比較すれば42コースと4倍に増加している。健康厚生の学部は94年の354コースから1603コースへと約4倍に増え、この中で医学関係は112%の増加率であった。

教育学部は94年308コースから2891コースへの8倍、サービス業関係の学部ではホテル業が1706%、観光業が1806%、モーダ業が1000%増と選ぶコースによっては急激な増加を呼んでいる場合もある。工学部、生産工学、建築学は94年155コースに対し、04年は786コースであった。

この通り、おおざっぱではありますが、学問ごとの伸び率が記されています。全体の感じをつかむ参考にはなりそうですね。

記事の中の記述はわかりにくいので、以下、見やすくまとめてみました。

【ブラジルの、学部学科の増加率】

ホテル業        :1,706 %
観光業         :1,806 %
モーダ業        :1,000 %

教育学部        :8倍
社会学         :566 %
経営学         :544 %
工学部、生産工学、建築学:507%

農業関係および獣医  :4倍
健康厚生の学部    :4倍
(内、医学関係     :112%)
法学          :354 %
数学および電算機    :2.4倍
人文学および美術関係  :108.7 %

サンパウロ新聞の記事内容を元に作成)

かなりおおざっぱな情報なので、ホントに、ざっくりとした印象をつかむ程度の範囲で、参考にしていただければと思います。(学部の伸びなのか学科の伸びなのかも、結構あやふやですし…)

さて、各学部とも、すさまじい増え方なのは間違いないのですが、こうして整理してみると、なんとなく傾向が見えてきますね。
マイスターは、

<BRICs = 工業分野が急成長中 → 理工系の学部が急増?>

……と想像していたのですが、実態は、イメージと少々違っていたみたいです。理工系学部の伸び率はおよそ5倍で、これは平均以上ではありますが、想像していたほど突出しているわけではありません。社会学系の伸び率の方が高いくらいです。

際だった増加ぶりを見せているのは、実は、観光関係の学部なのですね。

ホテル業に関するコースが、10年前の17倍に増えています。
元々少なかったのかも知れませんが、いずれにしてもこの急増ぶりは、

「この分野の人材が求められるようになった」
「この分野が産業として成長している」

ということを反映した結果であるのかな、と思います。

実際、ブラジル政府は観光産業の育成に力を入れているようです。国策により、2004年実績で400万人だった外国人観光客を、2007年には900万人に増加させようとしているという記事もありました。

(参考)
■「ルーラ大統領が訪日:新時代迎えた日本ブラジル関係」(中南米新聞)
http://www.chunambei.co.jp/column/060605.html

この国策に従って観光系学部を急増させている……のかどうかまでは、わかりません。ただわかるのは、この先、観光系学部を出た人々が、ブラジルにあふれるだろうということです。受け皿、ちゃんとあるのでしょうか。
日本みたいに、一度作った学部を簡単にはつぶせない、という状況だとしたら、大変ですよね。ブラジルではその辺、もうちょっと柔軟なのでしょうか……?
(どなたか詳しい方がいらっしゃいましたら、教えてくださいませ)

ちなみに、教育学部の増え方も目立ちます。

94年308コースから2891コースへの8倍

と、伸び率もさることながら、コースの数も非常に多いです。初等中等教育の普及率をあげるための国策などと、関係あるかも知れませんね。

以上、今回は限られた情報の中で推測をしたに過ぎません。でも、これだけ急激に高等教育が普及している国で、一体どのようなダイナミズムが働いているのか……と考えると、ブラジル国内の動きはとても興味深いです。
大学の動きと国家の成長とがダイレクトに影響し合っているような状況なのかなぁ……、と想像します。
(先進国よりも、両者の関係がより密接であるのかな、なんて思います。ただその分、市場に振り回されたり、国策に振り回されたりする度合いも激しいのでは、と思います)

ブラジルの大学関係者に、話を聞いてみたいですね。

以上、マイスターでした。

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※「モーダ業」という言葉がどんな分野を指しているのか、マイスターにはよくわからないのですが、観光系学部の一つであることから、「モード業」つまりファッション関係かな? なんて勝手に想像してます。どうなんでしょうかね?

3 件のコメント

  • はじめまして。教授。
    今回授業の研究でブラジルの教育情勢について報告することになり、調べているうちにこのブログにたどり着きました。
    かなり参考になりました。
    この記事を少し引用させていただいて宜しいでしょうか?

  • 岐阜の大学院生さま:
    こんにちは、マイスターです。コメント、ありがとうございます。
    この記事が少しでも何かのご参考になれたのであれば、とても光栄です。うれしいお知らせ、ありがとうございます。
    引用ということですが、論文執筆時と同じ引用のルール(ブログ名やURLを明記し、どこからどこまでが引用なのかわかる形で記述するetc.)を守っていただければ結構です。
    授業、頑張ってくださいね。

  • ありがとうございます。
    情報科学・教育特論という授業でレポートを提出しました。大変参考になりました。
    文献ページを掲載した上で引用させていただきました。