悩み、暴れる、中国の大学生達 (最近の報道から)

マイスターです。

今日は、中国の大学に関係するニュースをまとめてご紹介しますね。
(かの国についての情報が、手元にたまってきているのです)

【教育関連ニュース】—————————————-

■「『本科の卒業証書を』中国・鄭州大傘下の学生暴れる」(Asahi.com)
http://www.asahi.com/international/update/0622/006.html
■「中国・鄭州大系列校の学生1万人が暴動」(nikkansports.com)
http://www.nikkansports.com/general/f-gn-tp0-20060619-48369.html
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中国河南省の最高学府、鄭州大学傘下の単科大学で、学生が「約束通り鄭州大の卒業証書を出せ」と大学側に抗議、校内の施設を壊すなどしたため、数千人の警察が校内に入る事態に発展した。中国の他大学でも、卒業資格を巡る同様の騒動が目立ち始めている。
香港紙や地元関係者によると、騒動があったのは昇達経貿管理学院。
(略)
同学院側が15日、来年度以降の卒業生には鄭州大学の名の入っていない卒業証書を出すと通知したのが原因。学生が「入学時には『鄭州大学の卒業資格が得られる』と説明していたはずだ」と反発し、授業料の返還などを求めた。
同学院は94年に台湾の篤志家の出資で設立され、運営管理に鄭州大学が参画。同大傘下の単科大学という位置づけになっている。全国統一入試の最低ラインが鄭州大学本科より低く設定されているが、卒業生には鄭州大の卒業資格が与えられていた。学生には、同大の名が卒業証書に入らぬことが、就職活動などに影響するとの心配があるとみられる。
Asahi.com記事より。強調部分はマイスターによる)

というわけで、大学の学生が暴れています。

理由は上記の通り。出身大学の名前が一生を左右する、学歴社会の一幕ですね。
キャンパス内で大暴れです。全学生に関わることですから、もしかするとほぼ全員が暴れたのかも知れませんね。数千人の警察がキャンパス内に入る事態ということですから、これは大変です。
と思ったら、

今後は卒業生に鄭州大の卒業証書を与えないと宣言したことに学生らが反発、15日から大学や周辺の銀行、スーパーなどで、窓ガラスを割るなどした。
学生側の人数は1時約1万人に膨れ上がり、武装警官数千人が出動
し18日にようやく収まった。けが人の有無は不明。
同紙によると教育省は03年、この系列大に対し鄭州大の卒業証書を今後与えてはならないと通知していたが、系列大は学生募集の際「鄭州大の卒業資格が取れる」と宣伝していたという。
nikkansports.com記事より。強調部分はマイスターによる)

キャンパスの外にも進出していました。1万人の学生が破壊活動を行う事態、想像できません。

でもこの事例は、大学側に問題がありますよね。
実態はどうあれ、「鄭州大の卒業資格が取れる」という売り文句で学生を集めていたのですから、約束を守ってもらえなかった学生達が怒るのは当然です。
(街を破壊するのはいき過ぎですが)

この記事では主として学生側の不満がクローズアップされています。でも、

「鄭州大学は何故、この系列校の学生に、
 鄭州大学の卒業資格を与えないことにしたのか?」

…ということを考えてみると、またちょっと報道のとらえ方が変わってくると思います。既に入学している学生さん達の待遇を変えるというのは、傍目に見ても無茶な処置です。何か理由があると思うのですけれど、一体どうしてなんでしょうか。

○鄭州大学の卒業資格を与えていたものの、昇達経貿管理学院の卒業生達の質があまりに低く、鄭州大学のブランド力を貶めるような事態になってしまったので、当初の契約内容の見直しを迫る事態になった。

○実態と異なる卒業資格がむやみに発行される事態を放置しておくと、中国の高等教育機関の評判が国際社会の中で悪くなるのではないかと、中央の指導部が恐れ、是正を「指導」した。

…といったところがぱっと浮かびました。他にも色々な理由がありそうです。
また、

「そもそも昇達経貿管理学院は、鄭州大学の卒業資格を売りにしなければならないほど経営に困っていたのかな? そんなにこの地方では、学校間の学生獲得競争が厳しいのかな?」

なんて疑問も浮かびます(かの国では、大学への入学は依然として「狭き門」であったはずですが……)。
今回の報道だけでは真相はわかりませんけれど、ニュースの奥には、何か様々な背景が隠れていそうです。

お次は↓こちら。

【教育関連ニュース】—————————————-

■「中国の大学入試、カンニング合戦過熱で負傷者も」(Asahi.com)
http://www.asahi.com/culture/enews/RTR200606200109.html
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今月に入って大学入学試験が行われている中国では、カンニングをもくろむ受験生とこれを阻止しようとする大学側との激しいハイテク合戦が繰り広げられ、一部では病院に運ばれる者まで出る事態となっている。20日付のチャイナ・デーリー紙が伝えた。
募集枠260万人に対し受験生が950万人という同国では、不正行為防止策として、受験会場にカメラを設置したり携帯電話の利用を阻止する技術を導入する大学もある。
一方で、受験生の間では「低品質の機器」を使ってけがをする例が出ているという。
湖北省の省都・武漢では、使用したイヤホンがあまりに小さかったため、耳の奥まで入り込み鼓膜が破れてしまったケースがあった。
また、取り出すのに手術が必要なイヤホンを使う者や、ヘッドホンと別の生徒の体につながっていた電子機器が爆発し腹部から出血した学生もいたという。
武漢の試験会場では、試験官が、衣服や財布、ベルトなどからイヤホンを含む100点以上の「カンニング・ツール」を発見している。 (上記記事より。強調部分はマイスターによる)

病院に運ばれる者が続出する大学試験ってなんですか!?

手術しないと取り出せないようなイヤホンとか、電子機器が爆発して出血とか、いったいどこのスパイの話だと思いますよね……。
一つの試験会場で、カンニングツールを100点発見って、多すぎです。

一昨年だったと思いますが、韓国の大学の入試で、携帯電話を使った大規模なカンニングが発覚しましたよね。その時は特に怪我人が出たという話は聞かなかったと思いますが、中国のカンニングはなかなか熾烈みたいです。

父母の期待を一身に背負った一人っ子達ですから、入試結果にかけられるプレッシャーも相当なものなのでしょう。
どのくらいプレッシャーが大きいかというと、↓このくらい。

■「統一大学入試、会場から出る受験生にどよめく親」(中国情報局)
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2006&d=0607&f=national_0607_002.shtml&pt=large

「大学入試は家族による総力戦」であるとのことです。

お次は↓これ。

【教育関連ニュース】—————————————-

■「中国で学生暴動多発 W杯のTV観戦禁止に反発」(産経web)
http://www.sankei.co.jp/news/060621/kok046.htm
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中国では最近、四川省や河南省の大学で学生暴動が相次いでいる。年々厳しくなる就職難や学校に対する不満などが原因とみられるが、暴動の直接的なきっかけは、学校側がサッカーW杯のテレビ観戦を禁止したためと伝えられている。
香港各紙によると、四川大学では12日未明、学生約9000人による暴動が発生した。発端はW杯時期と学期末試験が重なったことを憂慮した大学側が、学生が隠れてテレビを見ないように夜間の停電を実施したこと。
怒った学生らが構内の単車やコンピューターに放火、飲料水の樽などを壊すなどの暴力的行為に出た。学校側は保安要員を派遣したが、これが学生の怒りに火をつけ、舎監1人が負傷。その後、学校側は食堂だけ電気をつけ、学生のW杯観戦を許可したという。
(上記記事より)

サッカー禁止令が学生達の怒りに火を付けた結果、キャンパスにも火がついた模様です。

この記事で重要なのは、

年々厳しくなる就職難や学校に対する不満などが原因とみられるが

…の部分でしょう。
以前の反日暴動のときにもこうした指摘がなされていましたが、つまり、学生は日々なにがしかの不満を抱えながら過ごしていて、それがたまたま何かのキッカケで表面化したに過ぎないというのですね。
キャンパス内で起きたデモや暴動は、大学生が普段から抱えている不安や悩みに端を発したものであって、決して一時的な運動などではない。なるほど、確かにそういう面はあるでしょうね。

大学キャンパス内の雰囲気は、かの国の政治や経済がうまくまわっているかどうかを示すバロメーターの一つなのかも知れません。

最後は、↓こちらをご紹介します。

【教育関連ニュース】—————————————-

■「中国の出稼ぎ労働者、偽造戸籍つかまされ子弟受験できず」(Asahi.com)
http://www.asahi.com/international/update/0622/015.html
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中国の全国統一の大学入試で、出稼ぎ労働者が偽造の戸籍をつかまされたために、一緒に連れてきていた子弟が受験できなくなる事件が起きた。落胆する親子らに同情が集まり、警察は悪徳業者を摘発。大半の子弟は出身地に戻って受験し、一応の決着を見た。しかし、1億人を超える出稼ぎ労働者の子弟の教育問題は、貧富の格差の是正を目指す胡錦涛(フー・チンタオ)体制にとって頭の痛い問題だ。
河北省の大衆紙・燕趙都市報によると、河北省から天津に出稼ぎに来ていた労働者の子弟100人余り対し、地元政府の担当部門が5月、「受験資格なし」と通告した。いずれも天津の高校に通っていたが、受験に必要な戸籍が偽造だったことが判明したからだ。
(上記記事より)

共産主義国家だけど、貧富の格差が年々拡大している国、中国。本来の国家コンセプトからすればおかしな事態なのですが、中国の経済発展が当然のことのように報じられている昨今では、ついこの前提を忘れそうになりますよね。

マイスターは途上国の子供達のために開発援助を行う国際NGO「プラン・インターナショナル」の日本支部「プラン・ジャパン」に毎月寄付をしているのですが、中国は今でもプランの援助国のひとつです。

■「中国でのプランの活動」(プラン・ジャパン)
http://www.plan-japan.org/home/about/project_chin.html

実はマイスターがプランで支援していたのは、中国のとある村だったのですが、文通相手の一家が何ヶ月か前に突然、家族ごと失踪してしまいました。現地のプラン事務所によれば、「経済的に貧しい途上国では、より経済条件の良いところを目指して移動を繰り返す家庭は珍しくない」とのことでした。(もしかしたら帰ってくるかも知れないので、現在、現地からの報告を待っているところです)

そんなわけで、海岸沿いの大都市はすさまじいスピードで経済発展していても、内陸、とくに農村部は貧しいままであるということを、マイスターは身近な話として体験してしまいました。中国の革命って、元々は農民のために行われたということになっていたとマイスターは記憶しているのですが、その点、今のこの状況はなんだか皮肉だなぁと思います。
何度か手紙をやりとりしたあの子も、やがていつかは将来のことを考えなければならないわけで、悪い人に騙されないと良いけどな、と、こんな報道を見るとつい考えてしまうのでありました。

中国の大学は、様々な問題を抱えていると思いますが、この「国内の貧富の差」というのは、かの国の大学について考える上で、重要なポイントだと思います。

つい最近まで中国では、「大学卒業者の進路は国家がすべて決める」という時代がありました。
(「分配制度」や、「国家分配」などで検索すると、関連情報が出てきます)
国家が大学の学費を補助していたため、大学卒業生の就職先はすべて国家が指定していたのですね。自分の将来はお上の考え次第というわけです。計画経済の究極の姿といって良いでしょう。
この結果、党などの有力者にコネがある学生は「運良く」都市部などの条件の良いところに残り、コネもなく運も悪い学生は、「泣く泣く」農村に就職させられる、ということが、しばしば行われていたそうです。

この分配制度、1989年の頃(つまり天安門事件の前後)を境に徐々に撤廃されていき、現在では、就職先は学生が自分で選べるそうです。しかし上述のように、農村部はまだ非常に貧しいですから、自ら就職先に考える学生はあまりいないらしいのですね。

その結果、農村はこれまで通り発展から取り残されたまま、都市部は経済成長を続けるというわけです。

農村出身の学生が地元に帰る……としても、故郷の仕事では大学の学費を取り返すだけの収入が得られない。貧しい中から期待を背負って進学し、無事に卒業できても、こんなジレンマが待っているのですね。

以上、キリがないのでご紹介はこのくらいにしておきます。
でも、いかがでしょう? 大学に関する報道だけを見ても、そこから社会の様々な問題や矛盾がかいま見えるような気がしませんか?

かつての日本のような急激な経済発展を遂げつつある中国。
成長が急激な分だけ、表面化する問題も多いと思います。今後も、中国の大学に関する報道には、目を配っていきたいところです。

以上、マイスターでした。

1 個のコメント

  • 大学の様子が具体的によくわかり、勉強させていただいております。