首都圏の私大、入学時に、5人に1人は借金?

大学の学部生の頃、地方から来て一人暮らしをしている友人が多かったマイスターです。

そうした地方組は、たいてい、日本育英会(現・日本学生支援機構)の奨学金を申請していました。マイスターは授業の合間の休み時間に、彼らが申請用紙を書いているのをよく横で見てました。
友人達が言うには、奨学金を受け取れるかどうかは、親の収入や家族の状況などに左右されるということだったようで、

「…昨年の冬、年老いた祖母が階段で倒れて緊急入院し、以来、母はその介護に時間をとられてしまっております…」
「…父の会社では、経営難によるリストラが進み、父もいつ職を失うかわからない状況です…」

…などという、申請用紙の類に書く内容とは思えない文章をびっしり記入していました。
実際には親父さんはまだ働いていたわけだし、おばあちゃんもわりと元気みたいでしたから、実際の2倍は不幸な家族に描かれていたんじゃないかと思います。

もっとも、首都圏で一人暮らしをしながら私立大学の理工系学部に通っていたわけですから、経済的な負担が大きかったのは確かでしょう。
彼のような学生が、奨学金を確実に受け取れるようになればいいのにと思いました。

今日は、学費に関する報道のご紹介です。

【教育関連ニュース】———————————
■「首都圏の私大、入学時4人に1人借金 平均166万円」(Asahi.com)
http://www.asahi.com/life/update/0313/006.html?ref=rss
■「首都圏私大入学生の親 借金5人に1人」(読売オンライン)
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/news/20060314ur01.htm
■「[私大入学費]保護者の『借り入れ』平均166万円」(毎日新聞:livedoorNEWS掲載)
http://news.livedoor.com/webapp/journal/cid__1773992/detail?rd

・「2005年度私立大学新入生の家計負担調査(エッセンス)(PDF)」(東京私大教連)
http://www.tfpu.or.jp/05kakeifutantyousa-essence.pdf
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結構いろいろなところで取り上げられていましたから、既に内容を読まれた方も多いことでしょう。

昨年春に、子どもを首都圏の私立大・短大に入学させた保護者を対象とした、東京私大教連(東京地区私立大学教職員組合連合)の調査結果です。
2005年5~6月に、早稲田大や中央大など関東地方の22私立大学・短大の新入生家庭、計3万2000世帯にアンケートを郵送して実施した調査であるとのことです。(回収率12.9%)

ただ、上記の記事の見出しだけ見ていると、お金を借りたのが「4人に1人」なのか、「5人に1人」なのかがよくわかりませんよね。
というわけで、東京私大教連の調査結果を見てみました。

1.入学費用を「借入れ」た世帯は21.9%と前回とほぼ変わらない。住居別でみると「自宅外通学」世帯では4に1人、「自宅通学」の世帯では5人に1人が「借入れあり」となっている。

2.借入れ額の平均は166万4000円で前回と比べて6万6000円の増額である。「自宅外通学」世帯の借入れ額は193万1000円で、「自宅」と比べ58万6000円も高く、自宅外通学世帯での家計負担の大きさがうかがえる。「平均」「自宅外通学」「自宅通学」のいずれの借入れ額も過去最高額である。

3.受験から入学までの費用の「負担感」は、全体平均でも9割が『重い』(「たいへん重い」+「重い」)と感じており、「借入れなし」の世帯であっても87.5%である。これは、入学費用が家計の限界を超えていることを示している。

東京私大教連調査結果PDFより)

…というわけで、全体としては21.9%の世帯が入学費用を借り入れているのでした。
自宅外通学、つまるところ下宿で一人暮らしをするようなケースになると、この割合が「4人に1人」に上昇するわけですね。確かに経済的な負担が増えるでしょうから、よくわかります。

ではそのようなケースでは、そもそもいかほどの出費がかかっているのでしょうか?

1.「自宅外通学者」の「入学の年にかかる費用」は、310万1156円であり、前回と比べ1万5162円(0.5%)増えた。しかし、父母・学生の裁量でいちばん出費をおさえることができる費目である「仕送り額」(-2万9800円)は前回同様に大幅に減額し、「受験費用」(+3600円)、「住居費」(+3万7600円)、「初年度納付金」(+3762円)はいずれも増え、この3費目で4万4962円の増額になる。

2.自宅外通学世帯の「税込収入」(967万4000円)に占める「入学の年にかかる費用」の割合は、32.1%であり、依然として家計に占める負担の重さを示している。

東京私大教連調査結果PDFより)

…初年度にかかる費用が310万円!
自分の引っ越しのための敷金礼金を払うだけで血ヘドをはきそうになっているマイスターには、この負担は天文学的に感じられます。世の中の多くの保護者の皆様(大学的には「保証人の皆様」)は、文字通り身を削って子供を大学や短大に通わせているわけですね。
その大学で働いている者としては、身が引き締まる思いです。
(なので、学生の皆様も学問に邁進してくださいね!)

その結果、仕送りの額が減り…しかしその一方で、学生さんの住居費その他は増加しているわけで、

○学費はほぼ横ばい
○だけど世帯収入は毎年減っている
→家庭の負担が増加
→家庭から学生への仕送り額が減る

…という、とてもよくない流れができてしまっています。

で、仕送りが減った分は、どこかで補われないといけませんよね。
だって仕送りの平均額を見ても、首都圏近郊ではとても暮らせないような数字ですし…。
思わず、

○学費はほぼ横ばい
○だけど世帯収入は毎年減っている
→家庭の負担が増加
→家庭から学生への仕送り額が減る
→学生さんの、アルバイトの負担が増加
→学業に悪い影響?

という、さらに良くない流れが頭をよぎってしまいます。
(本当にアルバイトの負担が増えているかどうかはわかりません。マイスターの個人的な予想です)

別に、「本当は就労目的でやってきた外国人学生」ではないのですから、ちょっとくらいバイトをしたっていいとは思うのですが、あまり時間をとられすぎるのも考え物。

この流れを断ち切れるものがあるとしたら、その一つは、奨学金の充実でありましょう。
そのあたりの状況を見てみますと…

1.日本学生支援機構(旧日本育英会)を含む奨学金の希望者は全体の59.4%を占め、ほぼ例年並みである。
2.希望者のうち「実際に申請した」割合は、前回、調査開始(1986年度)以来初めて5割を占めたが、今回も同様に54.2%となっている。住居別では「自宅外通学者」で前回と同じく6割を占め、「自宅」でも5割に近い。

東京私大教連調査結果PDFより)

…と、奨学金を申請している方は年々増加の一途を辿っている様子です。(上記のPDFには、1995~2005年の、申請者の割合が掲載されています)
というわけで、奨学金、これまで以上に求められています!
改めて言うまでもないことですが、やはり奨学金制度の存在は非常に大切なのです。

でも実際には、

3.日本学生支援機構の奨学金受給率(05年度実績)は、短期大学を含む私立大学生では僅か21.4%(国公立大学生=30.3%)に過ぎない。また、先進国のなかで給費制奨学金がないのは日本だけである。

東京私大教連調査結果PDFより)

と、とてもニーズを満たせている状態ではありません。

(っていうか、今までマイスター、日本学生支援機構の奨学金をもらっている学生さんが私立大より国立大の方に多いなんて知りませんでした…そうなんですか?)

そもそも奨学金以前に、高等教育を無償化すべし!という論議があることも、アタマをよぎります。

(参考)・進学に影響するほど、日本の大学の学費は高い? :「『経済格差』高校・大学で認識差」
http://blog.livedoor.jp/shiki01/archives/50151684.html

しかし奨学金にせよ無償化にせよ、財源が必要なことですから、そう簡単に国ができることではないですよね。無償化なんて、やろうとする気配もありませんね。
「教育の予算を増やせー!」と叫び続けることはもちろん非常に大切ですが、正直、あまり期待はできません。
(赤字国債を発行、つまり未来から借金している状態の国に暮らしているという意識が強いからなのか、それともベンチャー出身者だからかはわかりませんが、マイスターはどうも、国にあまり期待しない体質になってしまったようです…)

で、「企業からお金をもらって、それを奨学金に」とか、国に頼らない方向であれこれと考えてみるものの、これはという案はそうそう浮かびませんね。

フォスター・プランなどの開発NGOのシステムに倣って、
「企業が特定の大学に対して奨学金の寄付を支払い続ける代わりに、その奨学金をもらっている学生は、学業の成果を定期的に企業で発表したり、インターンをしたり、開発プロジェクトに参画しなければならない」
…なんて仕組みはどうかな、とふと思ったのですが、まかり間違えると、青田刈りを助長するだけの仕組みになってしまいそうな気もします…。

結局、最も現実的かつ効果が大きそうなのは、寄付に関する税制度の改定などなのでしょうね。
やっぱり国か。うむむ……。

どなたか良いアイディアがあったら教えて…いや、実行しちゃってください。

そんなことをあれこれと考えたマイスターでした。

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(おまけ)
↓こんなニュースを見つけました。

■「ソルボンヌ大、ドバイに分校 産油長者の子弟あてこむ」(Asahi.com)
http://www.asahi.com/international/update/0313/002.html

すんごいタイトルですが、こないだ機動隊が突入していた、ソルボンヌ大学の試みを紹介する記事です。

ドバイ校では文学や歴史などの学士課程を設け、本校の教員を派遣。仏側は、本校と同様に、男女共学と政教分離の原則を貫くとしている。
パリの本校で学ぶ場合は年間約160ユーロ(約2万2700円)の登録料を払えばよいが、ドバイ分校の登録料は100倍の約2万ドル(約240万円)になる見通し。「ブランド力」を武器に、産油国の富裕子弟の入学に期待をかけている。

上記記事より)

一見、金儲けの案にも思えますが、フランス国内と外国とでは学校の設立や運営のコスト自体にかなりの差があるでしょうから、おそらくそんなには儲かってないんじゃないかと思います。

分校開設のねらいはむしろ、(フランス語の普及を含めた)文化的な影響力の拡大や、中東エリート層の間での人的ネットワークの構築にあるのでしょうね。

そういう基盤が整えば、今はあまり儲からなくても、いずれ卒業生が巨額の寄付を落としてくれるようになるかも知れませんし…(あ、最後はやっぱりお金も儲かるのか)。

1 個のコメント

  • 私も奨学金かりて、
    今、毎月返しています。。
    確かに日本の大学は学費高いと思いますね。。
    あとは、、その高い学費が本当に
    ただしいやくにたつことに使われているのならしょうがないと思えますが、、
    きっとどこかで、使わなくてもいいことに
    使ってるのでは。。
    そういうのをなくすまではいかなくとも、
    減らせば。。もっと、どっかちじめられると
    思います。。
    私個人として。