「実務家教育ではなく、専門家教育を」

大学の教員の皆様としこたま飲み、家に帰ってからブログを書くマイスターです。
こんばんは。

ちょっと前の情報になりますが、一度ご紹介しておきたかった記事なので、取り上げさせて頂きます。

『Between 12-1月号』の特集は、「教員養成システムの論点」でした。
大学職員であり、かつ、初等中等教育の教員システムに興味があるマイスターにとっては、願ってもない企画でした。

ほぅほぅと思いながら読んでいて、どれも大変勉強になったのですが、なかでも考えさせられたのが、以下の記事でした。

■「寄稿:『教職大学』の検討すべき課題」(東京大学大学院教育学研究科教授 佐藤 学)
http://www.between.ne.jp/cstmr/btm/200512/tokushu/tk0512.html#6

上記のリンクには、概要しか掲載されていませんので、気になる方は実際の雑誌にあたってみてください。
(大学なら、少なくとも一部くらいは、どこかにあります)

この記事には、

「実務家教育ではなく、専門家教育を」

というサブタイトルが付けられています。

記事の要点は、こうです。

「ロースクールや教職大学院などのいわゆる「専門職大学院」では、教員の何割かが、実務家であることが要求されている。
しかし、それは本当に正しいアプローチの仕方なのだろうか。

専門職大学院にはプロフェッショナルの育成が求められているわけだが、しかし、
プロフェッションというのは、「学識」と「実践」の結合ではじめて成立するはずである。
実際、欧米のプロフェッショナル・スクールでも、第一級の学術研究が専門家教育の基礎とされている。実務家が教授を務めているわけではない。

本来こうした大学院では「専門家教育」をするべきであって、「実務家」を育成することは求められていない。
過度に、「実務家養成の大学院」という性格に偏るのは危険である。

かといって、これまでの教育大学院が教師の専門家教育にふさわしい存在であったとも思えない。
今後は、専門家教育の本質である「理論と実践」の融合を旗印に、実践研究こそが重視されるようになるべきだ。」

なるほどなぁ、と思いました。

確かに、

「専門職大学院=実務家教員が多いほどよい」

というイメージは、なんとなくあります。
実際、現在議論されている「教職大学院」では、担当教員の4割以上が実務経験者であること、と定められるみたいですし。

でも、実務家が、本当の「高度な職業人」を育成できるかというと、必ずしもそうではないよなぁ、と思います。

以前、

・『プロフェッショナルスクール アメリカの専門職養成』
http://blog.livedoor.jp/shiki01/archives/50076030.html

という記事で、アメリカの専門職大学院(=プロフェッショナル・スクール)についてご紹介しました。
アメリカのプロフェッショナル・スクールの教員も、別に実務家が大半を占めるなんてことはないようでした。

教育実践や学校改革の事例研究、つまり実践研究が、専門職大学院の教育の中核を占めるべきというのは、理解できなくもありません。

というわけで、そんな信念のもと、東京大学が開設する大学院が、これです。

■東京大学大学院教育学研究科学校教育高等化専攻
http://www.p.u-tokyo.ac.jp/stam.html

この大学院は、今議論されている「教職専門大学院」とは、一線を画すものです。

研究大学としての東大の特色を生かした教育専門家の養成を目指しているのがわかります。
『Between』の佐藤学氏の記事の通り、実践研究を重視したカリキュラムになっているようです。
アメリカのプロフェッショナル・スクールに近いモデルであるように思います。

・教職開発コース
・教育内容開発コース
・学校開発政策コース

の3コース制です。

マイスターが個人的に気になるのは、「学校開発政策コース」です。

これまで、学校のガバナンスについてさんざん批判的な記事を書いてきているマイスターとしては、教育委員会なども巻き込んで、学校政策を立案できる人材が必要だと思うのです。
そんなプロフェッションを育てられそうなカリキュラムだな、と思いました。

意欲的なコースを用意している東大、オススメです。
募集人数は、各コースとも修士7名、博士4名と少なめですが、チャレンジしてみたい方はぜひどうぞ。
明日の日本の教育を変える近道かも知れませんよ。

なお、東大教育学部のサイトは最近リニューアルされたようでして、
↓このコースのページも新たに作られていました。

■東京大学大学院教育学研究科大学経営・政策コース
http://www.p.u-tokyo.ac.jp/gs/c8/index.html

大学職員の方には、こちらも気になるところでしょう。
あわせて、ご覧ください。

というわけで、
守りにはいるだけではなくて、こうして意欲的なコースを用意してくる東大というのはやはりスゴイなと思ったマイスターでした。