学校制度に関する保護者アンケートの結果

大学職員のマイスターです。

もっと大学関係のニュースを多くした方がいいのかともたまに思うのですが、

もともと大学院で公立学校の制度改革を調べていたゆえの個人的な興味と、

結局、教育はつながっているんだから、大学関係者に初等・中等教育のことをご紹介することにも意味があるだろう(その逆もまたしかり)

っていう理由で、ごちゃまぜなニュース紹介になっています。
ごかんべんを。

そんなわけで、今日はみなさんでこれ↓を考えてみませんか?

【教育関連ニュース】——————————————–

■「学校制度に関する保護者アンケート調査結果」(内閣府)

・概要版
http://www.kisei-kaikaku.go.jp/publication/2005/1007_02/item051007_02_01.pdf
・詳細版
http://www.kisei-kaikaku.go.jp/publication/2005/1007_02/item051007_02_02.pdf
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以前、

・学力向上には、学校よりも塾を信用する保護者が多い!
http://blog.livedoor.jp/shiki01/archives/50067337.html

という記事でご紹介した調査結果の、実際のレポートです。気づいたら、webにアップされていました。
ちょうど、公立学校教員の処遇に関する議論が白熱しているところですので、
カスタマーである保護者の声も、この際よく見てみようと思いたった次第です。

※<概要版>と<詳細版>がありますが、<概要版>の方に要点はまとめられていますので、こちらをオススメします。

で、アンケート結果を見る前にひとこと。

なんだかですね、調査の質問項目などを見ていると、
どうも恣意的というか、誘導っぽい臭いを感じるところがないわけでもないのです。

「臭い」なので、個人差がありますから、どう問題なんだと言われても困るんですが…アンケートの選択肢が、偏っている気がするのですね。

例えば、
「教員の指導力など教育の質を維持・向上させる上で、有効と思われる施策があるでしょうか」
という質問。

「指導力のすぐれた教員を優遇する制度にする」
「教職以外の社会人経験のある教員を増やす」

とかいったアグレッシブな選択肢が並んでいるのですが、

「教員の数を増やす」
「教員の労働時間を減らす」

といった項目はないんですよ。
ね、なんだか、恣意的でしょ?
マイスター、改革は大賛成なのですが、根本的な部分が聞かれていないような気がしないでもありません。

まぁ、そんな問題を感じるとはいえ、
貴重なカスタマー達の声であることには違いありません。

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<マイスターが気になったところ(以下、青色は「学校制度に関する保護者アンケート調査結果 概要版」からの抜粋)>

まずは、義務教育全体に対する評価。

• 保護者に現在の学校教育に対して満足しているかどうかを尋ねたところ、満足(「非常に満足している」と「満足している」の合計)が13.0%、「どちらともいえない」が43.9%、不満(「不満である」と「非常に不満である」の合計)が43.2%であり、不満を感じている保護者が4割強に達している。
• 公立の小中学校よりも、国私立の小中学校に子どもが通う保護者の方が現在の学校教育に対する満足度は高い。

これが前提です。
学校に満足している方は13.0%で、不満な方は43.2%
明らかに不満を持たれているのがわかります。

• 学習指導要領については、「最低基準であれば、それを明確にした上でもっとレベルを上げるべきである」が58.9%と最も多く、逆に「レベルを下げるべきである」はわずかに5.0%である。「個人の能力・適性は様々なので学校現場に委ね、最低基準を明確に定める必要はない」が28.3%である。
• ゆとり教育については、 「ゆとり教育は見直すべきである」が61.6%をしめるのに対して、「ゆとり教育重視を継続すべきである」という意見は5.0%にとどまっている。
• 学校と学習塾・予備校とを比較した場合、子どもの学力の向上という面ではどちらの方が優れているかを尋ねたところ、学習塾・予備校の方が優れているとの評価が70.1%とおよそ7割をしめる。学校の方が優れているという人はわずかに4.3%、どちらともいえないが25.5%となっている。

不満の一つは、学力の低下に関する問題であるようです。
特に「ゆとり教育」に関するブーイングがものすごいです。継続すべきと思う方は、5%だけ…!
こうした「教育政策全体の方向性」への不満が、学習塾や予備校にとって追い風になっている感じがしますね。

つづいて、「教員」に関する評価です。

• 保護者に現在の学校の教員に対して満足しているかどうかを尋ねたところ、満足(「非常に満足している」と「満足している」の合計)が27.3%、「どちらともいえない」が44.3%、不満(「不満である」と「非常に不満である」の合計)が28.4%であり、不満を感じている保護者が3割弱になっている。
• 公立の中学校よりも、国私立中学校に子どもが通う保護者の方が、現在の子どもの通う学校の教員に満足している割合が高く、教員に対する満足度(「非常に満足している」「満足している」)は58.0%をしめている。

公立と、国私立で、満足度にどえらい差がついています。
日々の報道で市民が不信感を口にしている、それは、公立学校の教員の場合であるもようです。
(もちろん、数も多いし、自分で選んだ学校な訳じゃないしで、公立の方が不満を言われやすいという前提はあります)

で、学年別のグラフを見てみると、
小学校高学年で、もっとも満足度が低く、不満が多いという結果になっていることがわかります。

これが何を意味するのか?

マイスターには、その理由は知るよしもありませんが、個人的に思うのは、
小学校高学年頃に、「学力の差が、子供の将来にどんな影響を与えるか」というのを、親は一度は考えるんじゃないかなあ、ってことです。
もちろん、もっと色々な理由があると思います。
こうした保護者の意識の変化については、実際に保護者に接している現場の教員の方が、きっと詳しいのでしょう。

• 現在子どもが通っている学校の教員に満足していると回答した方に、満足している点を尋ねたところ、児童・生徒に対する指導力(57.6%)、熱心さ(51.3%)、児童・生徒の学習に関する問題での対応力(42.9%)、児童・生徒の学習以外の問題での対応力(39.8%)が高くあげられている。
• 現在子どもが通っている学校の教員に不満であると回答した方に、不満である点を尋ねたところ、児童・生徒に対する指導力不足(69.7%)、児童・生徒の学習以外の問題での対応力不足(51.7%)、責任感の欠如(48.6%)、児童・生徒の学習に関する問題での対応力不足(45.8%)などが高くあげられている。

ここ、以前の記事でご紹介したとこです。
満足である場合も、不満足である場合も、やはり「指導力」が最重要の評価ポイントであるのは間違いありませんね。

公立学校の先生も、研修などをしていないわけではないようですが、あまり満足していない保護者が多いようです。
研修のやり方や、内容、頻度など、どこかに問題があるのだと思われます。

他の、不満足要因も、捨て置けないものばかりです。
例えば保護者から、「責任感の欠如」を指摘されてしまう理由は一体何なのでしょうね?
本当に、社会人として問題がある人が教員になっていることも考えられるし、
もしくはあまりに忙しすぎて、責任を果たせないのだという可能性も。

もちろん理由はどうあれ、保護者に「責任感がない人」と思わせてしまったら、プロとしてはアウトなのでしょう。
どんなに多忙なお店でも、多忙を理由にお客様の対応で手を抜いたら、「おまえはプロとして失格だ!」と言われちゃいますし…。
いずれにしても、この「責任感の欠如」の理由をもっと詳しく知りたいです。
これは推測ですが、なんだか、教員と保護者のコミュニケーションを密にすることで、ある程度解決する問題である気もするんですよ。

他にも、興味深い見方ができるデータがあります。

例えば教員の「熱心さ」を買っている保護者は51.3%ですが、
教員に不満な理由として「独善的姿勢(独り善がりである)」を選んだ保護者が30.3%います。
「社会的常識の欠如」が不満とする保護者も42.3%いますから、
センセイの熱心さも、一歩間違えると不満要素に化けそうです。熱血系の教員の方は、ご注意ください。

• 教員は基本的に年功等が同じであれば給与等の処遇が全く同じであるという状況についてどう思うか保護者に尋ねた結果をみると、「差をつけるべきである」が65.5%、「差をつけるべきではない」が9.1%、「どちらともいえない」が25.4%となっている。

教員はそれぞれ自主的に努力をしていて、お金で動くものではない、とされています。
また、教員の仕事の成果は評価が難しく、給与などに反映させるのも容易でないと、教員の皆様は言います。

でも、保護者からしたら、いい「先生」は評価して、長く現場で活躍して欲しいし、
悪い「センセイ」は、言葉は悪いですが、安い給料で駆逐されて欲しいんじゃないでしょうか?

いい先生も悪いセンセイも同じ給与で働いているのなら、悪いセンセイも、自分に問題があるとは気づかず、ずっと働き続けるんだろう。
そう、保護者は感じているのではないのかな。
その不安が、こうした意思表示として、アンケートに表れているのではないのかな。

なーんてマイスターは思うんですが…教員の処遇に差をつけることには、他ならぬ教員の皆様の反対も強いです。
じゃあ、問題のある教員をどうやって「辞めさせたり」、
「現場から追放してゼロから勉強し直させたり」してるんだろう? と、ちょっと疑問。
(教育現場らしく、「本人が自主的に伸びる」まで待つのかな?
 でもマイスター、伸びないまま10年以上教員を続けていると思われる人の授業を受けたことがあるんですが…)

• 教育の質の維持・向上に有効な施策を尋ねたところ、教職以外の社会人経験のある教員を増やす(56.4%)、指導力のすぐれた教員を優遇する制度にする(47.7%)、保護者や地域住民が教員を評価する(45.4%)、研修制度を充実させる(45.0%)があげられた。

なんだか、

「大学を出て、すぐ学校の現場に入り、以降ずっと教員しかやっていない」ということ自体に、
不信感が突きつけられているようにも思える回答です。
(マイスターも、実は、このことをすごーく疑問に思っている一人です)

これに関連して実は、教職課程についての質問結果もあるんです。併せて見てみてください。

• 教員免許のための教職課程を経ていることが教員の資質向上に役に立っているかを尋ねたところ、役立っている(「大いに役立っている」と「役立っている」の合計)が39.2%、「どちらともいえない」が最も多く49.2%となっている。役に立っていないという否定的な意見は11.6%と約1割程度である。
• 教員免許が必要とした場合の取得時期を尋ねたところ、「現行制度のように採用前の教員免許取得を必須とする」が44.6%、「教員として採用された後に教員免許を取得しても差し支えない」が39.4%と意見が分かれている。
• 教員免許不要という条件で教員を採用する(適任であればその後で通信教育等で教員免許を取得させる)という方法については、このような方法に賛成(「賛成」と「どちらかといえば賛成」の合計)が66.4%とおよそ3分の2をしめる。

いかがですか?

「教員として採用された後に教員免許を取得しても差し支えない」

なんてこと、現場の教員の方、あまり思いつかれないのでは?
保護者のみなさんが、現職の「純血の教員」のみなさんに対してどのような目を向けているか、ちょっと雰囲気が伝わるかも知れません。

教員に、面と向かってこんな大胆不敵な意見を言い放つ保護者は、いたとしてもかなりまれでしょうから、
こうしたアンケートでちらりと見える本音は、メモしておく価値があるかも知れませんね。
(マイスターも、「教職課程不要!」とまで言われているとは、正直、思っていませんでした…それほど、他業種出身教師が増えることが望まれているということでしょうね。
ただマイスター個人は、他業種出身の方をたくさん受け入れる教職大学院を整備し、そこで教師としてのスキルをある程度身につけてから参入していただく、という政策を希望しています)

最後に、学校選択制について。

• 小学校、中学校における学校選択制の導入については、賛成(「賛成」と「どちらかといえば賛成」の合計)が64.2%をしめている。反対の人はあわせて10.1%にとどまっている。
• 学校選択制を導入すべきであると考える理由として、「自分の子どもに相応しい教育を行っている学校に通わせることができる」が最も高く66.1%となっている。
• 学校を選択する際に必要は情報としては、 「学校で実施している教育方法」(75.1%)、「学校で実施しているカリキュラムの内容」(68.9%)、「他校と比較をした場合の学校の学力水準」(54.7%)などがあげられている。
• 児童・生徒数に基づく教育予算の考え方について尋ねたところ、賛成(「賛成」と「どちらかといえば賛成」の合計)が46.6%をしめている。「どちらともいえない」という人が42.6%をしめ、反対の人はあわせて10.7%にとどまっている。
• 児童・生徒数に基づく教育予算の考え方に賛成の理由を尋ねたところ、 「所得格差にかかわらず児童・生徒、保護者が自由に学校を選択することができるようになる」が62.4%、「公立間ないしは公私立間での学校間の競争が促進され学校の質が向上する」が58.5%となっている。
• 児童・生徒数に基づく教育予算の考え方に反対の理由を尋ねたところ、「人気の高い学校に児童・生徒が集中する傾向が加速される」が62.3%と最も多くなっている。

このアンケートを見る限り、もはや公立教育が全国平等だなんて、あんまり思われてないみたいですね。

むしろ、

「他の学校のどう違うのか、情報を積極的に開示して欲しい」

という声が強いんですね。

学校の姿勢も、教員の能力も、学校ごとに差があって当たり前だということを、保護者はとっくに知っているのでしょう。
これらのデータはもしかすると、現場の教員の皆様と保護者とで、最も意識がずれている部分かも知れません。

ちなみに「学校選択を行う上で学校から提供して欲しいと思う情報」として

「学校に在籍している教員のプロフィール」

というのが、40.2%あります(複数回答可)。

「スポーツ・文化的活動における学校の実績」は、33.7%です。

「サッカー部が○○大会に出場!」みたいな垂れ幕は、生徒の活躍を顕彰するといった教育的な意味は非常に大きいと思いますが、学校選択のための情報という面だけ考えたら、保護者は教員のプロフィールを屋上からぶら下げてくれた方がありがたいのです。

別に学歴とかじゃなくても、せめて、自己紹介とか、教育に対する考え方とか、学校同士を比較検証するための、教員に関する何かの情報はあってしかるべきですよね。
「入学希望者は学校で自由に閲覧可能」とかの形で開示すればいいと思います。

教員のプロフィールも個人情報ですから、限度はあるでしょうが、しかしいくらなんでも「教員の情報ゼロ」という学校は、異常ですよね。
これで選べと言われても、ムチャクチャですぜ。

以上、非常に長くなってしまいました…。

ここまでダラダラご説明しましたが、これらの回答を「保護者会」の席で出し、
保護者と意見交換をしたりするといいような気がします。

なんだか、設問の中には、

「単に、保護者と教員との間で十分な意見交換ができてないだけでは?」

と思うような結果も多々、あったような気がするんですよ。
もちろん、保護者から

「実は、私も以前から先生のこういうところが、気になっていました」

といったアドバイスをもらえることもあると思います。

ぜひ、前向きに進むための議論のたたき台として、活用してください。

早く保護者会に出てみたいマイスターでした。
(っていうか、それ以前にまだ、保護者にすらなってないんですが…)

2 件のコメント

  • こんにちは、またお邪魔しました。どうも、私は制度オタクのようなところがあり、この手の話が好きなものでして。
    内閣府の調査、さっそく現物を見てみましたが、いや~なかなかものものですね。すべてを規制改革路線に合わせようとしている強引さが、かえってすがすがしいです。
    総合規制改革会議は、文科省が打ち出している教職専門職大学院構想に対して、教職に対する参入規制だと反対しているのですが、保護者アンケートにもちゃっかりこれを入れているなんて、かなり手が込んでいますね。

  • マイスターです。
    いつもコメント、ありがとうございます!
    どうやら内閣府も、文科省&中教審も、お互いにアンケート等を使って自分のところの戦略を論理づけようとしてますね。
    情報化社会には、政府の活動においてもこまめなPR活動をしているか否かがものをいうらしいですが、同じ国の機関同士でこうした情報戦を繰り広げているのは、珍しいかもしれません。
    メディアの研究者などにとっては、非常に面白い事態だと思います。