高校生が100にんいるむら

キャリア教育を考える上で、面白い動画がありますので、ご紹介させていただきます。

その名も、創作童話「高校生が100にんいるむら」。

出版されてベストセラーにもなった、『世界がもし100人の村だったら』のように、高校から先の、日本人のキャリアの送り方を、「100人の村だったら」形式で表現したものです。

YouTubeの動画説明には、以下のように書かれています。

本ムービーは、法政大学 キャリアデザイン学部  児美川孝一郎先生が、第17回京都FDフォーラムのシンポジウム「大学におけるキャリア教育を考える〜企業が求める人材って、大学で育成しないとだめ?〜」(2012年3-月3日)で発表した資料を参考に作成しました。

高校を卒業し、大学や専門学校を出て就職し、その後も会社を辞めずに働き続ける「ストレーター」は、100人のうち、44人。つまり実際の社会では、ストレーターではない人の方が多い。

にも関わらず、学校では、「ストレーター」を前提にしたキャリア教育が行われている。
そして、ストレーターではない56人は、「自分は忍耐力がない若者なんだ」と、どこか後ろめたさを感じている。

……と、そんな事実を紹介しながら、この映像は「ストレーターを増やすことが、キャリア教育の目的なのか」と問いかけています。

これを見た上で、どのような感想を持ち、どのような議論を行うかは、人によって違うでしょう。

「ストレーターを前提にしていること自体が、もはやおかしい。中退も転職も、人生の選択として珍しくない世の中なのだから、キャリアについての教育のあり方も変えていくべきだ」

……と考える方もいれば、

「ストレーターにならないと、様々な不利益を被る社会であるのは事実なのだから、やはりストレーターとしての道を外れないような教育をすべきだ」

……という思いを強くされる方も、やっぱりいると思います。
どちらが良い、悪いと決めることはできません。その人の立場や、背負っている役割によって、意見も変わってくるでしょうし。

ただ、このような議論が様々な場所で活発に行われるのは、社会によって良いことであるのは確かです。
そうした議論を行うきっかけとして、この映像はとても良く出来ていると思いましたので、ご紹介させていただきました。
「100人の村」という例えは、活発な議論を生む工夫として、とても良いですね。

他にも、同じように議論を活性化させるであろう例があります。
日本中退予防研究所の山本繁さんの、興味深いツイートです。

大学に100人入学したら12人が中退し、13人が留年し、残る75人のうち就職できるのは45人で、3年続くのは31人。いわゆるストレーターは31%。これが日本の平均。偏差値30〜40代の大学はもっとひどい。ということを知っていたら、400万円のローンはとても組めない。(@YamamotoShigeruより)

大学ではいま、中退者が増加しています。四年制大学だけでその数、年間6万人(日本中退予防研究所『中退白書2010』による)。大学にとっては経営上の問題でもあります。
その後も就職の問題があり、さらに入社した会社をすぐに退職する方が増えている、という事実があります。
それを「100人」で例えると、こんなに衝撃的なことに。

この数字を見て、31%のストレーターをもっと増やす(=中退や留年、早期の転職などを最小化する)ことが、学生のためには何より大事だ……と考えるひともいるでしょう。

一方、中退や留年、早期の転職者などを「もう当たり前の存在」と考え、中退しても本人や大学になるべくデメリットがないようにすべきだ……と考える人もいるでしょう。

これも、どちらも間違いではありません。というより、どちらも大事な発想です。
そんな議論を行う上で、この山本さんの「100人」の例えが、やはり良いなと思いましたので、合わせて紹介させていただきました。

最後に。

数年前、「高校生が100にんいるむら」と良く似た物語が話題になったのを、皆さんはご存じでしょうか。

それは、創作童話「博士が100にんいるむら」。
数年前にアップされ、Web上で話題となった、作者不明のコンテンツです。

「高校生が100にんいるむら」の制作にあたっては、この「博士が100にんいるむら」が参考にされたようです。こちらは最後まで見ると、暗い気持ちになりますが、日本の教育について考えさせる内容も含まれていますので、まだご覧になったことがない方は、どうぞ。

■創作童話「博士が100にんいるむら」

「○○が100人いる村」という例えは、やはり非常に分かりやすい。再び、流行り出しそうです。