不正経理発覚の健康科学大学 前理事長が調査に協力しない?

マイスターです。

昨今では、「大学経営」に関する様々な報道を目にします。

少子化で受験生集めに苦労している上、金融不況により資産運用も不調。
国立大学の法人化や、国家的な財政の引き締めも行われています。
日本の大学教育全体がユニバーサル・アクセス型に移行するにつれて、これまでとは異なる教育支援体制も必要になってきます。

このような時代だからこそ、大学の経営者に注目が集まります。
教育、研究、地域貢献で成果を上げることはもちろん、様々な形で公的な資金を受けて活動している以上、社会に対する説明責任もあります。
大学経営者の責任は極めて大きいと言えるでしょう。

そんな責任の大きい立場であるにもかかわらず、大学の経営陣がしばしば、不祥事などを起こすことがあります。
最近も、こんな報道が続きました。

【今日の大学関連ニュース】
■「健康科学大の不正経理:人件費不足隠し、設置財源も不透明--運営の法人会見 /山梨」(毎日jp)

私立健康科学大(富士河口湖町、学生数966人)などを運営する学校法人・第一藍野学院(同町)に2億円の使途不明金がある問題で、同学院は9日記者会見し、開学時の人件費不足を隠すために不正経理があったことを明らかにした。
同学院は8日、内部に設置した調査委員会の報告書を文部科学省に提出。調査の結果、開学時に必要とされる設置財源約50億円についても不透明な会計処理が繰り返されていたことが判明した。
学院によると、大学開学準備中の02年4月、文科省に自己資金約50億円の残高証明書を提出した。内訳は、当初14法人からの寄付計41億円、当時の小山英夫理事長個人からの寄付が9億円。ところが、小山氏の9億円はすべて借入金でまかなわれており、国の大学設置基準に違反していた。
また、41億円も残高証明書が提出された直後から次々に引き出されていた。折茂肇・学長兼理事長代理は「50億円全額が『見せ金』だった疑いもぬぐえない」と述べた。
使途不明金2億円は、開学時に4年間の人件費として大阪府の建設会社から6億円を借り入れたのが発端。03~04年度に架空の支出を計上して年間2億円ずつ返済したが、05年度には同様の手法がとれず、会計監査で不正が発覚したという。
(上記記事より)

■「健康科学大学」

ちょっと前から、使途不明金があるということで問題が報じられていた、健康科学大学と、学校法人第一藍野学院。
その第一藍野学院で、さらに驚くべき不正があったという内部調査の結果が、明らかにされました。

上記の記事にあるとおり、大学設置時に、借り入れたお金を財源として申請。
これらは申請後にすぐ「返済」されていたそうで、全額が「見せ金」だったのではないかという疑惑も生じているようです。

大学の設置認可には、様々な基準があります。
(それが本当に必要かどうかという議論はさておき)ルールとして現実に定められている基準を、もし不正な方法でくぐり抜けていたのだとしたら、やはり許されることではありません。

今回、公認会計士による監査で、こうした不正が明るみに出たのだそうで、外部の人間による監査ってやっぱり大事なんだなぁと再認識させる事件です。

今回の報道で、気になるのは↓こちら。

記者会見で折茂学長は「自治体や学生、保護者におわびしたい。失われた信頼を取り戻し、健全な大学運営を目指す」と謝罪。しかし「資金の流れなど詳細な経緯や目的は、当時の理事長らから話を聞けていないので違法性の認識などの確認は取れていない」とし、組織内の調査が不十分であることもうかがわせた。
学院は、監査の回数を増やすなど再発防止策を講じることを強調。今後は、小山氏への損害賠償請求や刑事告発も含め理事会で検討するという。
文科省高等教育局私学部は「不正行為の意図や責任の所在を精査し、対応を決めたい」としている。
「設立に借入金9億円 健康科学大 使途不明は架空支出」(山梨日日新聞)記事より。強調部分はマイスターによる)

文科省私学助成課は「調査報告書を精査した上で事実と分かれば厳しい処分をする」としている。
残高証明を発行した50億円について「審査に通るために金を持っているように見せかけたのではないか」との質問に、深沢行雄事務局長は「当時の理事長らが答えず分からない」と繰り返した。折茂肇学長も「誰が不正経理や借金の指示を出したのかが分からなかった」と話した。
同学院は3月の理事会で、小山英夫前理事長ら創設者一族の理事辞任を決め、理事会を刷新した。折茂学長は「監査の徹底など体質改善と信頼回復に努めたい」とし、当時の理事長らに損害賠償請求を行うことも検討しているという。
「開学申請時50億「見せ金」か」(読売オンライン)記事より。強調部分はマイスターによる)

不正事件の発覚を受け、3月の理事会で理事長などの辞任を決定したとのこと。

新体制のもと真相の究明が待たれるわけですが、不正に関して、肝心の理事長が「答えない」ため、不明な部分が多く残っているもよう。

「答えない」って、何だそりゃ。
と、誰もが思うことでしょう。

理事会は、前理事長への損害賠償請求や刑事告発も検討しているとのこと。
今回の記者会見からは、これまで理事長などによって隠されてきた問題をすべて明らかにする、といった姿勢が伝わってきますが、それだけ、以前の体制に問題があったということでしょうか。
ガバナンスにも、不透明な部分が多かったのかもしれません。

■「理事長 ごあいさつ」(健康科学大学)

↑サイトには、まだ前理事長の「ごあいさつ」が掲載されていました。
学生に対し、「プロとしての品格」の重要性を説かれています。
現在はご自身が経営者として、プロとしての品格を問われている場面。少なくとも、疑惑を持たれている部分をきちんとすべて明確に説明する責任があるように思います。

ところで報道を見たとき、「藍野」という言葉に聞き覚えがあるなと思っていたのですが、どうやら↓これでした。

■「支援グループに億単位融資 経営破たん東北文化学園大」(47NEWS)

民事再生法の下で経営再建中の東北文化学園大(仙台市)が2005、06年度に、経営支援に乗り出している藍野グループ傘下の医療法人などに億単位の短期融資を行っていたことが23日、分かった。融資は既に返済したとしているが、文部科学省は経営支援を受ける側の大学が支援をする側に融資するのは異例の事態と認識、大学関係者らから事情を聴くなど実態の把握に乗り出している。1999年に設立された東北文化学園大は、元理事長による脱税疑惑など経営の乱脈ぶりが次々と表面化し、経営破たん。04年6月に民事再生法の適用を申請した。
(上記記事より)

民事再生法にもとづき、再建支援を受けていた東北文化学園大学が、「支援する側」である「藍野グループ」に対し、約7億8000万円もの額を融資していたと報じる、2008年1月頃の一連のニュース。

誰もが「?」と思うこの融資は、理事会を開くこともなく、しかも教育や研究に関係ない目的で行われました。それらの点が問題視され、文部科学省から指導を受けています。

何かと、メディアに登場するグループのようです。
だからこそ今は、問題を徹底的に洗い出し、説明責任を果たす場面だと思いますが、いかがでしょうか。

以上、マイスターでした。

※この記事は、現役高校生のための予備校「早稲田塾」在籍当時、早稲田塾webサイト上に掲載したものです。