マイスターです。

大学組織というのは基本的に、拡大はしても、縮小はあまりしません。
学部学科の新設や、改編という話はしょっちゅう聞きますが、「学部を削減し、教職員をリストラした」とか、「キャンパスを丸ごと廃止した」という話はあまり聞きません。
(そういう話が出るときは、その大学が既にかなり崖っぷちに立たされているときだとされています)

でも考えてみれば、学問も、市場環境も、そして大学組織も日々変わっているわけで、ときには現状を見直し、組織を整理統合することだって必要です。
一時的には色々なダメージも受けると思いますが、崖っぷちに立たされてからではなく、余力がある内にそういった判断をしなければならないこともあるのかな、と思います。

さて、今日はこんな事例をご紹介します。
【今日の大学関連ニュース】
■「東海大:開発工学部廃止へ 10年度から募集停止--沼津校舎 /静岡」(毎日jp)

東海大学沼津校舎(沼津市西野)にある開発工学部(西山幸三郎学部長)が廃止されることが5日までに分かった。来春は入学生がいるが、その後の募集をストップする。
同大学長室企画課によると、理工系学部の志望者減少を受けて進めている学部再編の一環。開発工学部全体では5年間定員割れが続いており、廃止を決断したという。今年度は定員1440人に対し、学生数は780人にとどまっている。
同学部の5学科のうち、人気が高く唯一定員を満たしている医用生体工学科は、湘南校舎(神奈川県平塚市)に移転するが、他の4学科は廃止する。沼津校舎は研修センターなどへの転用を検討している。
(上記記事より)


というわけで、東海大学の開発工学部が、廃止されるそうです。
沼津校舎には開発工学部しかないので、キャンパス自体の廃止と考えて良いでしょう。
(研修センターなどに転用されるとのことですが、日常的に通う学生はいなくなります)

定員に対して学生数が半分程度という、深刻な定員割れが起きていたとのことです。

この決定に対し、地元からは以下のようなコメントが出ています。

沼津市によると、同学部は県東部唯一の理工系学部として、県と同市が熱心に誘致活動を行い、校舎の新築や改修に県が約45億円、市が約22億5000万円の補助金を出している。同市は「沼津市の産学官連携の拠点で、県のファルマバレー事業にも参加していただけに、廃止の影響は大きい」と話している。
一方、4日に地元の平沼自治会などが、同市に学部存続の要望書を提出。同自治会の杉沢正昭会長は「地元には学生向けのワンルームマンションを経営している人も多く、影響が大きい」と撤回を訴えている。
(上記記事より)


地元の沼津市政策企画課は「市内唯一の大学で住民からは存続の要望もある。今後の方針をきちんと提示してほしい」としている。
開発工学部は、組織改編で1988年に廃止された沼津校舎内の海洋学部教養部の後を継ぎ、91年に開設された。県と同市は学部の校舎整備などに約70億円を投じていた。

「東海大・沼津校舎の開発工学部廃止 来春入学生卒業後に」(中日新聞)より)


……というわけで、県と市が誘致を行い、補助金を出して誘致した開発工学部。
91年に開設されたとのことですが、このような結果となりました。

唯一定員を満たしている医用生体工学科は、他のキャンパスに移転されるとのことですが、ただ他の学科に所属する教員の方々や、沼津キャンパスで働いている職員の方々はどうなるのでしょうか。
また、キャンパスが廃止されるわけですから、現在学部生で、大学院への進学を考えていた学生の皆さんなどにとっても、不利益が生じることにはなりそうです。
他のキャンパスの大学院で受け入れるのかもしれませんが、影響は避けられません。
上記の記事にあるように、地元にも影響があることでしょう。

ただ、現在の定員割れの状況のまま学部を存続させるのは、確かに難しそうです。

「理工系離れ」、「ものづくり離れ」とメディアがしばしば報じるように、工科系は現在、学生募集に苦戦しています。
例えば工学部のみの単科大学であった東和大学が、2007年に募集停止し、2010年には廃校を予定。
実際には、学科によって事情が異なるのですが、他の工科系大学も、戦々恐々としている状況です。


さらに、東海大学ならではの状況もあるでしょう。

東海大学は現在、学部学科数では日本大学を上回り、日本一。
もともと大きな大学でしたが、2008年度に系列の北海道東海大学、九州東海大学を統合し、現在20学部87学科・専攻・課程。20学部というのは、国内ではズバ抜けています。
キャンパスも、札幌キャンパス(北海道)から阿蘇キャンパス(熊本)まで、文字通り全国に展開されており、最大級です。

ちなみにその20の学部の中には、以下のような学部が含まれています。

※( )内は、その学部にある学科・専攻・課程の数
<旭川校舎>
芸術工学部(2)
<札幌校舎>
生物理工学部(3)
<代々木校舎>
情報デザイン工学部(2)
<高輪校舎>
情報通信学部(4)
<湘南校舎>
情報理工学部(2)
工学部(13)
<沼津校舎>
開発工学部(5)
<熊本校舎>
産業工学部(4)


もともと航空学校だったこともあってか、理工学系が非常に充実しており、「工」の文字が入る学部だけで7つ。加えて情報通信学部も、実際には工学系の学科を擁しています。

しかし率直に言って、扱われている内容に重複がありそうな印象を受けないでもありません。
もともとキャンパスも違うし、別の大学だったわけですから問題はなかったのですが、こうして1つの大学に統合された今、分かりにくい部分もあるのは事実でしょう。

ちなみに上記の中にある「情報デザイン工学部」もまた、2008年度入試をもって募集を停止しています。
この学部は夜間開講学部ということで、事情はまた少し違うかもしれませんが、大学の総合的な経営戦略の中で、他の分野(法科大学院)へのキャンパス機能置き換えが進んでいます。

立地が離れているのだから、学生が集まっている限りはそれぞれ独立の大学のように考えて運営しても良いのでしょうが、上述したように工科系は厳しい状況。
大学として、集中的に設備投資などを行うことを考えたら、集中と選択を進めていくのもやむを得ないことなのではないかな、と想像します。


(過去の関連記事)
■千葉大学園芸学部 どうなる移転問題

↑以前、千葉大学園芸学部の移転問題をご紹介させていただきました。
昨今では、

●経営戦略上の判断により、大学がキャンパスの移転や廃止を検討
  ↓
●地元が反対運動


……という動きがちょくちょく発生しています。今後は、さらに発生するでしょう。
市が存続を訴え、市民の署名を集めたりするケースもあるようです。

ただ大学の方も、廃止したくてするわけではありませんし、廃止せずに維持できる方法があるなら、そちらを選ぶと思います。
もし地元が、大学の存続を切望するのであれば、反対を表明するだけではなく
「キャンパスが沼津に残った場合のメリットが、廃止した場合のメリットよりも大きい」
……ということを、説得力ある形で証明し、提案することが必要なのではないでしょうか。


以上、報道から、そんなことを考えたマイスターでした。

※この記事は、現役高校生のための予備校「早稲田塾」在籍当時、早稲田塾webサイト上に掲載したものです。

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