マイスターです。

海外の有名大学の中には、経済的な支援を充実させて、世界中から学生を集めているところがあります。(というか、そもそも学費がほとんどかからない国もあります)
そういった大学と留学生争奪戦を繰り広げるには、日本の大学も学生を経済的にサポートする体制を整備しなければ、残念ながら話になりません。

そんなわけで、日本の大学院が相次いで学費の無料化や奨学金の支給を打ち出し、優秀な学生の獲得を競い合っているということを、↓以前の記事でご紹介いたしました。

■「大学院生に対する経済支援 各大学が競う」(2008年01月24日)


でもやっぱり、世界の壁はけっこう、厚いです。
【今日の大学関連ニュース】
■「年収1000万円でも授業料ゼロ=お金の心配無用です-米名門大」(時事ドットコム)

米西海岸の名門私大スタンフォード大は20日、学生への経済支援策を大幅に拡充し、年収10万ドル(約1080万円)未満世帯出身者の授業料を全額免除すると発表した。「授業料高騰で富裕層以外の子弟が締め出されている」との批判に対処し、米大学で最も気前が良い支援策を導入した。
ヘネシー学長は「学費を心配して本校への出願を断念することがあってはいけない」と強調。年収6万ドル(約650万円)未満世帯の子弟なら、授業料に加え寮費も無料にするという。
同大の授業料は年間3万4800ドル(約380万円)と10年前に比べ1.6倍に高騰し、中所得層にも負担がずしりと重い。支援策の財源には171億ドル(約1兆8470億円)と米大学3位の規模を誇る基金の一部を充てる。
(上記記事より)


スタンフォード大学と言えば、IT産業のメッカとして知られる「シリコンバレー」の中心部分に立地し、世界屈指の大学として知られる名門大学です。

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このスタンフォード大学が、上記の記事にあるような発表をしました。

スタンフォード大学の学生の所得分布を調べようとして、ちょっと見つけられなかったのですが、いずれにしても、大胆な経済支援です。
世帯年収1,080万円未満となると、いわゆる中産階級の方々も、学費無料の恩恵を受けられることになるでしょう。

どらどらと思ってスタンフォード大学のwebサイトを見てみたところ、以下のようなリリースが。

■「Stanford enhances undergraduate financial aid program」(Stanford University)

Stanford University today announced the largest increase in its history for its financial aid program for undergraduates.
Under the new program, parents with incomes of less than $100,000 will no longer pay tuition. Parents with incomes of less than $60,000 will not be expected to pay tuition or contribute to the costs of room, board and other expenses. Students will still be expected to contribute their earnings from work during the summer and academic year.
The program also eliminates the need for student loans.
Other significant enhancements have been made to the program that will benefit aid recipients at all levels of income.
"This is the third consecutive year we have allocated substantially more money to financial aid for lower- and middle-income families," said Stanford University President John Hennessy. "We are committed to ensuring that Stanford asks parents and students to contribute only what they can afford for an education we believe is among the absolute best in the world. By devoting more resources to financial aid, we seek to underscore what has long been the case?that no high school senior should rule out applying to Stanford because of cost. We understand how families face serious financial pressures, and we are doing all we can to assist them."
These changes bring Stanford's undergraduate financial aid program for the 2008-09 academic year to more than $114 million, making it one of the largest programs in the nation. The amount spent on financial aid next year is projected to equal half the total undergraduate tuition revenue Stanford expects to collect for the year.
(上記記事より)


日本語のニュースでは「スタンフォードの学生」とだけ書かれていましたが、どうやら実際には「undergraduate」、つまり学士課程の学生が対象になるようですね。
学費負担を気にせず進学先を選び、学ぶことができるようにするための取り組みだと書かれています。

結果として次年度の経済支援額は、学士課程生から徴収できる学費収入総額の、およそ半分にも達する見込みだとも書かれています。
つまり単純に言えば、学士課程生からの学費収入が半減するのと同じだと言うことです。

そう聞くと、「大学の経営は大丈夫なのか!?」と思われる方もいるかも知れません。

■「2007-2008 Student Budget」(Stanford University)

上記のページには、スタンフォード大学の学生が負担している金額の内訳がざっくりと書かれています。
これによると、学費は $34,800。寮の部屋代などに $10,808。書籍や生活用品などに $1,335。その他、個人的な出費が $1,995。
年間の学費が$34,800って、かなり高いですよね。こんなに高い学費を取っているのだから、これが半額になったら、大学の経営にも影響が出そうだと普通、思います。

でも、実際には、そんなに影響はなさそうなんです。

■「Stanford Facts 2007:Finances」(Stanford University)

上記のページにはスタンフォード大学の収支の内訳などが書かれていますが、同大の場合、もともと学生から学費として集めるお金は、2割にも満たないのです。
企業などからの研究費や寄付、巨大な基金の運用益、それに医療収入などが、同大の強力な経営を支えているのですね。
ですから、学費を無料にしても、その分、優秀な学生が集まってくれるのであれば、おそらく安泰です。
(日本の主要な研究大学はおそらく、「いつかこういう経営をしたい」と、ひそかに目標にしていると思います)


では、今回のこの取り組みによって、一体どのくらいの学生が恩恵を受けることになるのでしょうか。
CNNが、以下のように報じていました。

■「Stanford eliminates tuition for some students」(CNNMoney)

Stanford tuition is expected to rise to $36,000 in the fall. Room and board will cost about $11,000. About a third of the university's 6,700 undergraduates are expected to qualify for the tuition break.
(上記記事より)


スタンフォード大学の学士課程生6,700人のうち、1/3くらいの学生が、学費値下げの資格を得ると見こまれるそうです。これは大きいですね。

これって、逆に言うとスタンフォード大学の現在の学士課程生のうち残りの2/3は、年収1,100万円以上の家庭だということですよね。この数字を見る限り、これまでは高い学費のせいで低所得者層~中産階級の優秀な学生が進学を避けてきていたと確かに言えそうな気がします。
今回の取り組みによって、これまではスタンフォード大学への進学をあきらめていたような学生が来てくれるということなら、意義があることです。

でもそうなると、

「じゃあ入学者選抜のときに、なるべく経済支援の不要な学生を合格させようとするんじゃないか?」

と考える人も出てくるかも知れません。ごもっともです。

それについては、以下で説明されています。

Stanford remains one of the few private universities with a "need-blind" admission policy for U.S. citizens and permanent residents, which guarantees that students will be accepted to the university regardless of their ability to pay?and be offered the financial support they need to attend Stanford.
「Stanford enhances undergraduate financial aid program」(Stanford University)より)


アメリカの奨学金は、大きく「Merit-based Aid」と「Needs-Based Aid」に分かれています。
前者は、学業成績や課外活動での活躍によって支給されるもの。
後者は、学生の家庭の支払い能力に応じて支給されるものです。

上記のスタンフォード大学のリリースでは、「"need-blind"admission policy」という言葉が使われていますね。
これはつまり、「選抜の際に家庭の支払い能力があるかどうかは見ない、考慮に入れない」、というアドミッション・ポリシーであるということです。
ちゃんと、今回の取り組みのリリースに書かれていましたね。


そんなわけで、スタンフォード大学のちょっと大胆な、しかしとても戦略的な取り組みをご紹介しました。
日本の大学には、おそらくまだここまでの支援は実現できないと思いますが、「いつかこうなりたい」という姿ということで、参考にしていただければと思います。

以上、マイスターでした。

※この記事は、現役高校生のための予備校「早稲田塾」在籍当時、早稲田塾webサイト上に掲載したものです。

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