就職課の「隠れた競合相手」

マイスターです。

こんな記事を見つけました。

【教育関連ニュース】—————————————–

■「好感度アップへ 就活をサポート」(読売オンライン)
http://osaka.yomiuri.co.jp/depa/de71221a.htm?from=ichioshi%22
————————————————————

バブル期以来の「売り手市場」といわれる今年の就職戦線。合同説明会の開催など就職活動の本格化に合わせて、各百貨店は会社訪問用の服飾品をトータルコーディネートできる売り場を設け、面接などの講座も企画。人生の岐路に挑む学生の心強い味方になってくれそうだ。

大学の街・京都の真ん中にあるJR京都伊勢丹。10月から3月まで9階に開設されている女性向け「リクルートスタジオ」には、スーツや靴、カバンなど就職活動に必須のアイテムが並ぶ。各フロアを歩き回らなくても関連商品を買いそろえられるよう、1か所に集めている。

自分に合う商品がどれか迷った時は、「就職コーディネーター」の店員にアドバイスしてもらえばいい。コーディネーターの細江真理さんによると、「今年のスーツは個性的なものより、社会人になっても使える着回しのきくものが人気。売り手市場のせいか、学生さんはせっぱ詰まった感じがなく、どこか余裕がうかがえる」という。

同じフロアの写真室では、履歴書用の顔写真をデジタルカメラで撮り、修整するサービスが好評だ。希望のカットを自分で選び、髪の乱れや吹き出物、目の下のクマなどを目立たなくし、肌の色まで調整する。8枚一組で5040円。口コミで広がり、多い日には1日50人が来店。3割は男性という。化粧品売り場では、全ブランドの知識を持つ「ボーテ・コンシェルジュ」が好印象をもたれるメークやスキンケアについてアドバイスしてくれる(要予約)。

また同店は数年前から、専門の講師による学生向けの無料講座も開いており、11月に「マナーと言葉遣い講座」を実施。1月27日には採用面接のポイントを指導する「面接講座」(事前申し込み)を開く。

(上記記事より)

タイムリーな話題なのでしょう。デパートによる就職支援サービスの話題です。
10月からスタートしている、というあたり、「早いなぁ」という印象ですね。

目を引くのは、「履歴書用の写真を修整する」サービス。
「まずは、書類審査で落とされないように」ということなんでしょうかね。
個人的には、写真うつりが悪いことを理由にして落とすような会社には、そもそも行かない方がいい、落ちて正解だろうと思うのですが、まぁ、その辺りの考え方は業種や企業によっても違うのかも知れません。
(面接に進めば、修正しているということが分かってしまい、かえって悪い印象を与えるんじゃないかと思ったりもしますが……うーん、でも実際のところ、どうなんでしょうね?)
いずれにしても、アドバイザーが「できることはやっておいた方がいいよ」と言えば、お金を払う学生もいるでしょう。

マナー講座や面接講座など、大学が行っているサービスをデパートが提供している、という点もポイントです。
それも、無料で。

就職のために、学生が少しでも多くの情報を集めようと努力するのは、悪いことではありません。
色々な立場の方の話を聞き、「そういう見方もあるかも」と考えを深めるのは、大事です。

ただ、デパートは、教育機関ではありません。
本業の一つとしてキャリア支援を事業として展開するというのならまだしも、ここで取り上げられているケースはおそらくそうではないでしょう。
この場合は、無料のサービスでお客を集め、有料のサービス、つまりデパートの本業である「買い物」の方に誘導するというビジネスモデルなのだと思います。
そうでなければ、デパートがわざわざ売り場の面積を割き、このような講座を行う意味はないのですから。

ですからこういった講座の多くは、「だから○○を買った方がいいですよ」という結論になるはずです。
大学の就職課・キャリアセンターなどが行う講座とは、若干、トーンが異なってくるのではないでしょうか。

こういった講座を利用する場合、その点を頭の片隅においておくと良いかもしれません。
しかし、大学の方は残念に思われるでしょうが、学生の中には、大学スタッフのアドバイスより、民間の企業などが提供するアドバイスの方に信頼を置いている人もいます。
両方のアドバイスを聞いたけれど、デパートの人の意見の方が明確でわかりやすかった、と感じる人だっているでしょう。なにしろ、デパートにはプロの接客業としてのノウハウがあります。

デパートに限った話ではありません。
今や、大学の方々想像しているよりもはるかに多くの企業や組織が、就職に関する情報を提供しています。

「他のところでアドバイスを聞いたから、就職課には別に行かなくてもいいんじゃない? どうせ同じような内容だろうし、面面倒くさいし」

……なんて考える学生も、実際には結構、いると思います。

大学のキャリアセンターにとっては、こういった「隠れた競合サービス」をどのように考えるかが、大きな課題なのだと思います。

以上、冒頭の記事を読みながら、そんなことを考えたマイスターでした。

1 個のコメント

  • 知人が新卒者向けの就職関連の仕事をしていて話を聞く機会があります。
    今や大学の就職課を一切訪れなくても就職活動はできるようですね。
    ウェブサイトや、外部の企業が行うセミナーは一見情報が多いようなんですが、結局は広告。
    ある特定の有名・難関大の学生と、目立って優秀な学生以外をはなから相手にしていない企業に、全国の大学から応募者が殺到し、自信をなくす学生も多そうです。最近は、大手・有名企業志向もあり、結局決まらず、フリーターへの道を歩んでしまう学生も増えているとか。あきらめてしまう前に、所属する大学の就職課に届いている求人票から探した方がいいようです。
    ただ、問題は、学生は、企業が行うセミナーなどのほうがわかりやすく、大学の就職課にいっても意味がないと軽視してしまったりするそう。また、優良企業であっても知名度が低いと、学生が集まらないという問題もあるようです。