ニュースクリップ[-6/17]「替え玉受験 高校ぐるみ 優秀な2年生28人“選抜” 中国・雲南省『学校の名誉のため』」ほか

マイスターです。

日曜日ですので、一週間のニュースの中からいくつかを選んでご紹介したいと思います。

教育のあり方が破綻した市。
■「替え玉受験 高校ぐるみ 優秀な2年生28人“選抜” 中国・雲南省『学校の名誉のため』」(西日本新聞)
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/world/20070616/20070616_020.shtml

大学入試の季節を迎えている中国で、雲南省宣威市にある高校が学校ぐるみで成績優秀な高校2年生に替え玉受験を指示し、同高3年生になりすまして受験していたことが明らかになった。同高から大学入学のための全国統一試験を受験した計40人のうち、28人が替え玉受験だった。高校側は「学校として名誉を勝ち取るためだった」と説明しているという。中国紙の法制晩報が地元紙・雲南信息報の記事として伝えた。

同報によると、替え玉受験を指示していたのは同市の宣威第七中学(高校)。大学入学のための全国統一試験が行われた6月7日のほぼ1カ月前、教師らが2年生の生徒計147人のうち、成績が優秀な28人を集め、受験票を出した3年生に代わって替え玉受験するよう指示した。指名された高2生徒はその際、替え玉受験を拒否したり、外部に漏らしたりすれば「来年の大学入試を受験させない」と脅されたという。

(上記記事より)

とんでもない内容ですが、中国で実際に起こった出来事です。替え玉をさせられた2年生や、自分で受験させてもらえなかった3年生のことは二の次で、「学校の名誉」が一番大事だということでしょうか。

さらに驚きべきことに、記事によれば宣威市では約7万人の統一試験受験者のうち40%以上がカンニングを行い、試験監督官の高校教師も大半がカンニングを黙認したとのことです。

同市では高校間での大学進学率競争が激化。教師と生徒の間に「学校の名誉」を得るためには不正にも目をつぶる風潮がまん延しているほか、カンニングを発見した監督官は2万字に及ぶ経過報告書の提出が義務付けられており、「面倒だ」として監督する側もカンニングを黙認している。

(上記記事より)

もはや正常な教育機関とは思えません。この市の教育のあり方に深刻な問題が起きているようです。
個々の教師や学校にも問題はあるのでしょうが、記事を読む限り、まずこの地域の教育組織をコントロールしているシステムの方を改善させた方がいいような気がします。
「2万字の報告書」はカンニングを黙認する方向に機能してしまっているようですし、また「学校の名誉」がここまで極端に重んじられるのにも何か理由があるはずです。

「九州大学システム」?
■「国公立連携で『大九州大学』、政府計画策定に向け九経連提言」(読売オンライン)
http://kyushu.yomiuri.co.jp/keizai/ke_07061501.htm

九州経済連合会は14日、政府が来年夏をめどに策定を進めている国土形成計画の九州圏広域地方計画について、アジアの経済成長を取り込む「九州アジア・ゲートウェイ戦略」、九州の国公立大が連携する「大九州大学構想」の検討などを提言した。

九州各県、福岡市、北九州市、国の出先機関などで構成する九州圏広域地方計画協議会や、政府に提出する。

(略)将来の道州制をにらみ、米カリフォルニア大学をモデルに、九州の国公立大学を連合させて、各地の大学を九州大福岡校や長崎校などのように運営する「大九州大学構想」を検討し、競争力を高める必要があるとした。

提言をまとめた研究会の山崎朗・中央大教授(経済政策)は「提言の実現には、補助金を一つの予算としてまとめ、柔軟な運用を目指す予算制度など新しい仕組みも必要だ」と指摘した。

(上記記事より)

話としては以前からあがっている、大九州大学構想。
現在の宮崎大学や長崎大学、鹿児島大学などが、「九州大学宮崎校」「九州大学長崎校」「九州大学鹿児島校」になるということです。
この連携によって全体の競争力を高め、より良い教育・研究環境を作り出そうということですね。

記事にもあるように、これはアメリカで最大級の規模、および最高レベルの評価を受けている「カリフォルニア大学(University of California)」を意識した構想だと思います。

(参考)
■「Campuses」(University of California)
http://www.universityofcalifornia.edu/campuses/welcome.html

カリフォルニア大学は、全体で10のキャンパスと20万人以上の学生を擁し、「UCシステム」と呼ばれる巨大な大学組織を形成しています。この中には、UCバークレーやUCLAのように、世界トップレベルの研究大学としての評価を受けているところもあります。

九州で同じモデルが実現されるのだとしたら、それは非常に興味深いことではあります。
九州経済連合会の提言書は↓こちらから閲覧できます。ご興味のある方はどうぞ。

■「国土形成計画 九州圏広域地方計画策定に対する意見(PDF)」(社団法人 九州経済連合会)
http://www.kyukeiren.or.jp/katsudo/pdf/1906kokudo.pdf

大阪大学、東大を抜く。
■「阪大と大阪外大が統合へ、学生数は国内最大に…改正法成立」(読売オンライン)
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20070612ia22.htm

大阪大と大阪外国語大を統合する改正国立大学法人法が12日、衆院本会議で可決、成立した。

施行は10月1日。統合後の大阪大は、国立大では学部学生数で東大を抜いて国内最大となる。

(上記記事より)

大阪大学と大阪外国語大学の統合が、正式に決定されました。
これまで国立大でもっとも学部学生数が多かったのは東京大学で、
「東大は、確率的に見て、最も入学しやすい国立大学です」
というネタが成立したのですが、それももう使えなくなります。

ちなみに大阪大学は、初年度のグローバルCOEプログラムの採択数で東大や京大を上回っています。何だか勢いに乗っています。

もっとも、上述した九州大学のような広域的な大学の構想が実現したら、こうした競争の状況も大きく変わるのかも知れません。

ローンに苦しむアメリカの大学生達。
■「高金利ローンで学生借金苦 米大学、金融機関と癒着か」(U.S. FrontLine)
http://www.usfl.com/Daily/News/07/06/0613_004.asp?id=53931

米国で学生ローンを扱う金融機関が大学職員らに金品を渡し、学生に高金利ローンを優先的に紹介してもらっていた疑惑が相次いで発覚、大学と業者が癒着したとの見方が強まっている。十分な知識がないままローンを組んだ学生も多く、社会に出た途端に借金苦に陥るなど事態は深刻化している。

米メディアによると、問題になっているのは米銀大手のバンク・オブ・アメリカやシティーグループ系の子会社など。JPモルガン・チェースの場合、大学関係者200人を豪華なクルーザーで接待し、大学職員に最高で2000ドルを渡していた。

(略)米国では親などに頼らず自分で授業料などを負担する学生が多く、学生ローンは年間850億ドルもの巨大市場。一方、授業料は過去20年で2倍前後に値上がりし、私立大学の1年間の授業料は平均約2万2000ドル。低金利の政府系に加え、複数のローンを組んでやりくりしているのが実情だ。

(上記記事より)

よく「アメリカの大学生達は、奨学金を活用するなどして、自分で学費を捻出している。自立していて(日本の学生より)立派だ」……なんて言われたりします。
それは確かにそうなのですが、その陰に、上のような社会問題が存在していることも忘れないでおきたいところです。

粗製濫造?
■「大学1万3400学部を指導へ=教育省=低下傾向の学力=1000学部は名ばかり=優良はわずか118学部」(ニッケイ新聞)
http://www.nikkeyshimbun.com.br/070613-21brasil.html

教育省は十一日、大学の質向上を目的に大学の七%に当たる一万三四〇〇の学部を指導すると発表した。全国で在学生の学力テスト(Enade)を行った結果、卒業をまじかに控えた約一〇〇〇学部の学生の学力が、学力テストに合格した学生に比べ、最低基準すら満たしていないことが判明した。これらの学部責任者は教育省査察官の訪問を受け、学部の質向上を期する念書を提出することになる。また優良と認められた学部は、わずか〇・八八%の一一八学部に過ぎなかった。

全国の大学の七%に当たる一万三四〇〇学部が、教育省の指導を受けることになった。さらに下の一〇〇〇学部に至っては、名ばかりで大学の体を成していないという。(略)名ばかりの大学は三三学部。うち私立が二一、国立が八、州立が二、市立が二。

(上記記事より)

ブラジルの報道です。

アメリカでは、(お金次第で)学位を簡単に取得させてしまう「ディプロマ・ミル」と呼ばれる大学の存在が問題になっています。その多くは私立大学だと聞いています。

が、ブラジルでは、国立大学や州立大学でも「名ばかりの大学」という評価を受けてしまったところがあるようです。

(過去の関連記事)
・ブラジルで急成長する高等教育  伸びている学問分野はどれ?(2006年09月08日)
https://unipro-note.net/wpc/archives/50241763.html

ブラジルではこの10年ほどの間に、大学教育課程が急拡大しています。
その辺りに、こうした「名ばかり大学」が増えた原因がありそうです。

以上、今週のニュースクリップでした。

今週も一週間、本ブログを読んでくださいまして、ありがとうございました。
今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。

マイスターでした。