難易度が二極化している? 高校教科書

マイスターです。

毎年この時期になるとメディアが取り上げるニュース。それは、文科省による「教科書検定」の結果です。日本国民の知識量や考え方、物の見方に影響を与えるという点で、どのような教科書が使われるかは非常に重要です。
特に歴史記述に関しては、毎回、国内外のメディアが様々な報道を行っていますね。

それに加えて今回はどうやら、「学力の二極化」がトピックになっているようです。
生徒達の間で学力格差が拡がっていることを受け、教科書も発展的な内容にチャレンジするものと、易しい内容を易しく教えるものとに二極化しているということのようです。これは大学まで直接的につながってくる問題ですので、皆様も気になっているのではないでしょうか。

いくつかの報道をご紹介したいと思います。
まずは、学力「低下」に対応する動きから。

今回は多くのメディアが「漫画入り教科書」を、学力低下の象徴のように紹介していました。その漫画入り教科書、実際にどのような内容なのか、各紙の紹介を拾ってみることにいたしましょう。

高校用では、もともと難易度に差をつけた教科書を出す出版社が多い。3種類が主流の数学IIでは、新興出版社啓林館が今回、さらに内容を易しくした4種類目を出し、合格した。

183ページ中、半分以上にイラストがある。うち20ページ弱には吹き出しつきのマンガが載る。「数学が苦手な生徒に入り口のドアをノックしてほしい。マンガやイラストは思わず開いてみたくなるように使った」と担当者。学習指導要領の範囲を超えて学べる「発展」は、もちろんない。

検定申請時には合格本の3倍以上のマンガを盛り込んだ。だが、「学習内容との関連が不明確」などの意見が大量についた。同様にマンガを入れて1年前に合格した数学Iに、教師から「かえってポイントが絞りづらい」との指摘が寄せられたこともあり、大幅に減らした。ちなみに文部科学省は「マンガがダメなのではない」と説明している。
(「高校教科書、二極化 学力格差浮き彫り」(Asahi.com)より)

漫画は同級生の男女5人が1冊の教科書を拾うところから始まる。誤って教科書を破ってしまったところ、古代ギリシャの数学者アルキメデスが登場し、5人はピラミッドやヨーロッパの宮殿など異次元にタイムスリップ。宮殿にいた人物やアメリカ先住民、武士らの指導を受けながら数学の問題に挑戦し、解き方を理解すると、現代に戻ってこられるストーリー。

武士が登場する三角関数の章では、一定の間隔で波打つ三角関数のグラフを見て、男子生徒が「知ってるよ~、しょっちゅうやってるもん。イェーイ!」とサーフィンを始め、武士も「いぇーいでござる」とウインクしながら答えている。
(「漫画教科書:数2に登場 ユニークだが…半分は削除 理系離れ歯止めに試行錯誤」(MSN毎日インタラクティブ)より)

……検定では、解法に悩む生徒に教師が「どうだ。できまい。はっはっは!!」と嘲笑(ちょうしょう)するシーンに「何を意図してこのような発言をしているのか理解し難い」など修正を求める指摘が相次いだ。検定意見数はずぬけて多い102件。結局、合格本ではストーリーも消え去り、漫画は添え物程度に使われるにとどまった。
(「どこまで「あり」? 教科書の漫画多用」(SankeiWEB)より)

うーん……実際のブツを見てみないと何とも言えませんが、「漫画を使う理由が不明確」という点で色々と指摘を受けているようです。
イラストを多用して解法をわかりやすく説明する、という範囲の教科書はこれまでにもありましたが、上記のはさらに「教科書全体が、漫画的なストーリーで演出されている」というレベルにまで踏み込んだもののようですね。

検定の場では批判を浴びたようですが、教科書会社の側にも、こういった物を作ったそれなりの理由があるのでしょう。推察するにこれは、「教科書を読んだが、解法がわからない」というレベルにすら辿り着かず、「教科書を読んでくれない」というレベルにとどまっている高校生達が少なくない、ということなのではないでしょうか。

「演出部分」があまりに多いようだと、かえってどこを学べばいいのか、ポイントがつかみづらくなるおそれもあります。演出に気合いを入れすぎるのはよくありません。ただ、現状がそれだけ厳しいということは、こういった教科書が登場することからも、よくわかります。

これに関連して、以下のような指摘も見かけました。

ある教科書関係者は、「学力低下が問題視され、教育再生会議からは『教科書が薄い』といった意見が出されましたが、学校現場からは『児童・生徒が興味をもつように、文字量を減らしてビジュアル化を図ってほしい』という声が多いのです。最近の児童・生徒は文字よりもビジュアルになじんでいて、文字だけの教科書では関心をひけないというのが現実のようです」と話す。

実際、現在の教科書を見てみると、小中学校のものはほぼフルカラー、高校のものもイラストや写真が多用されている。

「学ぶ楽しさを知ってもらうためには教科書を開いてもらわないことには始まらない。また、学校現場からの支持がないと教科書を採択してもらえない。だからといって、興味をひくためだけの仕掛けや単に子供側におもねっただけのつくりでは肝心の学習が身につかない。教科書編集では、各社がそのライン引きを試行錯誤しているのでしょう」(前出の関係者)。
(「漫画入り教科書 板ばさみになる教科書関係者」(アメーバニュース)より)

「生徒が興味を持つように」という高校からの要望もあるようです。教える教員だけではなく、学ぶ高校生達がどのように「漫画入り教科書」を評価するのかも気になるところですね。

いずれにしても、教科書制作側の悩みは深そうです。

見せ方云々ではなく、実際に学ぶ内容が削減されている、あるいは難易度が落とされている教科書も多いようです。こちらは、漫画の使用・不使用よりも重大な問題です。

啓林館や数研出版などでは、小学校で習う分数の計算を復習用に載せている。「発展」の逆の発想もある。東京書籍は、やや高度な内容に「チャレンジ!!」の印をつけ、省略が可能なことを暗に示している。

(略)世界史Aでは実教出版が、今回初めて2種類目を出した。ページ数は15%の減だ。記述量を少なくし、図版を多用。視覚に訴えようと、ブックデザイナーに初めて全ページの割り付けを頼んだ。「見開き2ページを1時間の授業で」が目安だ。

英語では、単語の読みをカタカナで表したものもある。大修館書店は「高校進学時にアルファベットが書けない生徒さえいる。やはり読めないと始まらない」。

中学校用の「動詞の不規則変化表」を載せた本も。文英堂は「11レッスンのうち、5までは中学の内容です」という。
(「高校教科書、二極化 学力格差浮き彫り」(Asahi.com)より。強調部分はマイスターによる)

思わずぎょっとしてしまうような内容ですが、世の中には勉強が得意な生徒と、苦手な生徒がいるわけです。
ただ、今はその差が開く傾向にあり、勉強が苦手な生徒に難易度の高い教科書を与えても改善は期待できないということで、このような教科書が作られるのかな……と想像します。

ただそうは言っても、目指すゴール自体を易しくしてしまっていいのか、という心配はあります。

ある教科書会社の担当者は、「大学全入時代を迎え、昔ほど必死に勉強しなくても大学に入れる、と考える中間層の生徒数が増えてきた」と分析。こうした中間層向けの教科書について、別の担当者は「内容を絞り込めない」と打ち明けた。
(「学力多様化で対応苦慮…教科書会社」(読売オンライン)より)

↑こんな指摘もありました。ここは、大学にいた人間として、うっと身につまされるところです。

以上、学力低下に対応する動きについてでした。

学力が高い生徒のための教科書は、どうなっていますでしょうか。

難度の高い教科書では、各社とも大学入試を意識している。

英語IIで東京書籍は今回初めて3種類の「選択的教材」を入れ、規定数の英単語に加えさらに200語学べるようにした。担当者は「リーディング用はもっと入試対策を打ち出し、予備校で教えるような『読解技術』も充実させた」という。

全ページ数に占める「発展」の割合が5.5%と最も高い教科の化学II。数研出版は2種類のうち難しい方で、「発展」の項目を前回検定の3倍にした。東京書籍は「化学反応の速さと平衡」に力を入れ、約60ページ、教科書の厚さで25%分増やした。担当者は「入試で多く出題される分野だからと、高校から要望があった」という。
(略)指導要領を超えた内容でも、入試の問題文で説明される事柄は各社が「発展」で扱う。物理IIだと、「多原子分子のモル比熱」や「RLC直列回路」などがそれにあたる。アインシュタインの「相対性理論」を扱う教科書もある。
(「高校教科書、二極化 学力格差浮き彫り」(Asahi.com)より。強調部分はマイスターによる)

「入試」という言葉が頻繁に登場しているのが分かります。入試で出るからここも押さえておこう、あそこも教えておこうとなるみたいです。
こちらはこちらで少々心配です。何でもかんでも詰め込んだ生徒が、大学入学後に力を発揮できるかというと、そうとは言い切れません。「入試を突破するために全部教えよう」という発想で果たして本当に質の高い人材が養成できるのか疑問です。
教科書を元にして大学入試の範囲が決まるのではなく、大学入試を元にして教科書が作られているように思えてしまいます。

教科書会社の方としても、入試に強いというのがウリになるのでしょう。「先生、ウチの教科書が一番厚いですよ、大学入試のためには一番良い教科書ですよ」という売り方になってしまいそうです。

ただしこれについては、そういった対策を強いてしまう現状の大学入試の仕組みの方にも、大きな責任があるように思います。

以上、長くなってまいりましたので、この辺にします。

易しい教科書を採用した学校と、発展的な内容を盛り込んだ教科書を採用した学校。
教科書の難易度の幅を拡げることが、学校間の学力格差をより拡大させることにつながる可能性もあります。
高校にとって選択肢が増えたのはいいことですが、選択はくれぐれもご慎重に。

マイスターでした。

1 個のコメント

  • 押尾学逮捕!!野口美佳所有の問題の部屋での乱交パーティー映像流出!!
    http://oshio-movie.blogspot.com/
    今回の映像では薬物を使用した様子は見られないが、なんとテレビで見たことのある人が・・・
    押尾学逮捕!!野口美佳所有の問題の部屋での乱交パーティー映像流出!!
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