「大学サバイバル、主戦場は中国 学生確保へ現地入試盛ん」

最近、中国の話題ばっかりご紹介している気がするマイスターです。

そんなわけで今日は、日本の大学が、中国で受験生を集めているというニュースです。

【教育関連ニュース】—————————————–

■「大学サバイバル、主戦場は中国 学生確保へ現地入試盛ん」(Asahi.com)
http://www.asahi.com/edu/news/OSK200611200040.html
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「少子化社会」を迎え、私立、国公立を問わず国内の大学で、中国を中心としたアジアの留学生の獲得競争が熱を帯びている。日本は間もなく募集定員と受験者数がほぼ並ぶ「大学全入時代」。各大学は「国際競争に勝つ優秀な学生の確保」や「定員の確保」などを目指し、海外での留学生争奪戦を繰り広げている。
(上記記事より)

人口が減少し、国内の18歳だけを相手にしていては現在の活動規模を維持するのが困難だと思われる日本の大学。
日本という国家そのもののプレゼンスも低下してきています。
しかしその中で、なんとか世界トップクラスの研究力、教育力を持った大学を目指さねばなりません。

かたや中国は、世界一の人口を誇る国であり、かつ、現在アメリカに最も多くの留学生を送り込んでいる国。そして、高度経済成長が今まさに進行中の国です。
日本の大学としては、この市場を狙わない手はありません。

「国際競争に勝つ優秀な学生の確保」と「定員の確保」とでは目的も手法もかなり違ってくると思いますが、とにかく日本の大学が、中国からの留学生を本気で呼び込み始めたようです。

北京の首都師範大で今月6日、日本の12大学が中国の学生向けに大学院留学の合同説明会を初めて開いた。
北海道大、東北大、東大、名古屋大、広島大、九州大などがブースを設け、約250人の中国人学生にパンフレットを配ったり、奨学制度を説明したりした。
説明会の開催を呼びかけたのは、4年前に首都師範大内に事務所を設けた広島大。同大には727人(5月1日現在)の留学生がいるが、4割を超える321人が中国からの留学生だ。同大大学院理学研究科学生支援室は「中国人留学生は博士課程後期まで進む率が高い。優秀で熱心な学生を集め、レベルアップと大学院生の定員の確保を狙っている」と話す。
(上記記事より)

こちらは、どちらかというと「国際競争に勝つ優秀な学生の確保」を狙った活動でしょうか。
旧帝大クラスの研究大学がズラリです。ちょっと前なら考えられない光景だったかもしれません。

東大も、

「国内の人材だけに頼っているだけでは国際的な競争力はつかない。人口の多い中国から、これまで米国に留学していたトップクラスの学生をいかに東京大に呼ぶかが極めて重要になる」
(上記記事より)

と、中国の優秀な学生の獲得に期待を込めます。

上記は大学院生が対象ですが、学部や、その前のレベルで中国人留学生の取り込みをはかる大学もあります。

例えば、冒頭の記事でも紹介されている、同志社大学「留学生別科」。

現地入試を実施する大学も急増している。同志社大は、日本語や日本文化を学ぶ留学生別科の入試を昨年から北京で、今年からは上海でも始めた。以前は書類審査と日本語を吹き込んだ録音テープで合否を決めていたが、他人が書いたとみられる書類が送られてくるケースなどもあり、本人の能力や意思を正しく判断するため導入した。
今年6月と10月に実施した試験には、2カ所で計60人が受験。国際センターの沖田行司所長は「受験生の経済的負担が軽くなり、すそ野が広がってレベルの高い学生が多く集まるようになった」と話す。
(上記記事より)

この「留学生別科」は、公式webサイトによると「同志社大学をはじめとした日本国内の大学・大学院への入学を目指す外国人(私費留学生)や、交流協定校が本学に派遣する交換留学生などに日本語を教授し、日本文化に関する理解を深めてもらうことを目的としています」とのこと。同志社大学への推薦制度も用意されています。
場所も京都の中心ですし、留学生にとっては、日本の大学に進学する準備段階として魅力的な選択肢だと思います。

■「留学生別科について」(同志社大学)
http://www1.doshisha.ac.jp/~bekka/about/about.html

このようなコースを設け、大学への推薦の制度を作り、その上で現地入試を展開する。
なるほど、うまい流れを作ってますね。こういったプログラムを用意する大学が、今後は増えるのかもしれません。

日本にやってくる留学生の数は、この5年ほどの間に倍増しています。そして、その中でも特に伸びが目立つのが、中国人留学生です。
冒頭のAsahi.comの記事にグラフが出ています)

ということは、そろそろ「日本で学んだ中国人」がどどっと社会に流れ出すことになります。

ある学生は産業界に入り、ある学生は学業を継続して研究者になるのでしょう。
そして、ある学生は母国に帰り、ある学生は日本に残り、またある学生はアメリカなど他の国に移るのでしょう。

さて、今後、彼らがどう活躍していくのでしょうか。
かの国からの留学生を今後も獲得できるかどうかは、そこにかかっています。

日本の大学を出たことが、彼らにとってどういうキャリアになるのか。留学組の皆さんに聞いてみたいところです。学者を目指す場合、ビジネスマンとして活躍する場合、技術者になる場合……ケースによって、「日本留学」の意味合いは変わってくるような気がします。
学んだ内容や、築いた人間関係を、彼らがどう生かしていくのか。興味津々です。

さらに言うと、「日本留学組」がそのキャリアを生かしてどのくらい「稼ぐ」のかも、知りたいところです。
中国から留学生を呼び込むのであれば、この視点ははずせません。単なる自己啓発にしかならない、高い給料につながらないと認識されたら、留学生は増えていかないように思います。

その意味では、日本の製造業がどのくらい中国でプレゼンスを発揮できるか、それによって留学生も減ったり増えたりするのかもしれません。
日本の企業は、中国の大学と連携して、現地で幹部を養成する取り組みを始めていますので、うかうかしていると日本の大学は置いてきぼりにされるかもしれません。

(参考)
・ニュースクリップ[-11/19] 「松下グループ 幹部育成や人脈作り 大学との連携強化」ほか
http://blog.livedoor.jp/shiki01/archives/50264369.html

今後は、数年おきに「日本での留学体験はプラスでしたか?」という追跡調査を行って、留学生達の満足度を分析し続けていくことも大事になるように思います。
(おそらく、既に今もそういう調査がどこかで行われているんだと思います。ご存知の方がいらしたら、資料を教えていただければ幸いです)

留学にはトレンドがあるでしょうから、仮に留学生が増えていても、ちょっとした社会の変化によってたちまち他の国に地位を奪われてしまうかもしれません。

(参考)
・米国の大学教育関係者団が、アジアで留学をPR
http://blog.livedoor.jp/shiki01/archives/50262100.html

↑アメリカも、留学生を減らすまいと、あれこれPRに手を尽くしています。
そのうち中国や韓国も、世界から留学生を集める側にまわるでしょう。
留学生獲得競争、なかなか熾烈です。

国際広報や、学生獲得、学生生活サポート、就職支援まで、留学生の対応をする担当者はこれからが腕の見せ所です。この様子ですと、スペシャリストが活躍する土壌もどんどん整備されてくるように思います。我こそはと思う方は、存分に活躍してください。

以上、マイスターでした。