ニュースクリップ[-10/22] 「有力国立大、後期日程相次ぎ中止 周辺校志願増の傾向」ほか

マイスターです。

週の終わりということで、今日も、一週間「大学職員.network」上にてご紹介し続けてきた大学関連ニュースクリップの中から、いくつかを選んでご紹介したいと思います。

国立大学の後期日程、廃止相次ぐ。
■「有力国立大、後期日程相次ぎ中止 周辺校志願増の傾向」(Asahi.com)
http://www.asahi.com/life/update/1016/009.html

京都大、名古屋大、東北大などの有力国立大が来春、多くの学部で後期日程入試を取りやめる。現段階では、その影響で、地域的に近い周辺国立大で後期試験の志願者が増加する気配を見せている。後期を廃止した有力大の志望者の併願先は、最終的にどの大学へ向かうのか。後期日程の廃止は、来春の国立大の入試状況を大きく左右する「台風の目」になりそうだ。

国公立大学の多くは、89年に始まった分離・分割方式を続けてきた。伝統的なペーパーテストで学力を測る前期に対し、後期は小論文や面接などを課し、異なるタイプの学生を集めようとのねらいだった。しかし、現実は――。旧帝大など有力国立大の受験生は、ブランドイメージもあり、前期も後期も同じ大学の同じ学部を受けることが多い。有力大には「後期は、前期の敗者復活戦の色合いが強まった。当初考えた前期合格者とは異なるタイプの学生の獲得につながっていない」などと、後期への不満が高まってきた。

03年には、分離・分割方式での入試を申し合わせていた国立大学協会が、一定数をAO(アドミッション・オフィス)入試や推薦入試で募集することを条件に、06年度入試から後期廃止を認める見解を出した。これを受け、来春から京大は医学部保健学科以外の全学部全学科で廃止。名大も法、工など5学部、東北大も工、農など4学部でやめる。全国で26校42学部が廃止するため、国公立大の後期の定員は、今春より1400人余り減る見込みだ。
(上記記事より)

国立大学は大体、前期、後期の2段階に分けて募集を行います。
マイスターは受験生時代、国立大学が第一志望だったのですが、前期試験が終わってから後期の出願をするものだと思いこんでいたため、後期を受けられませんでした。マヌケな話ですが、当時は笑えない失敗でした。事態に気づき、あわてて大学に電話で問い合わせ、入試課の職員さんからなぐさめられました。そんな自分が今では大学職員です。

そんな話はさておき、この前期/後期の枠が、今後少しずつなくなっていきそうです。記事にある通り、前期、後期に分けて募集をする意味が薄れてきているというのがその理由です。
さっそく、全国で26校42学部が廃止するとのこと。おそらく多くの大学にとって、分離・分割方式の募集はいろいろな面で負担が大きかったのでしょう。
このことにより、周辺の国立大学や私立大学の入試に影響が出ると、記事では予想しています。
入試日程など、各校の入試戦術に影響が出そうですね。

大学の生協食堂で、地産地消の取り組み。
■「大学も地産地消、県産米に切り替え好評」(宇部日報)
http://www.ubenippo.co.jp/one.php?no=3459

山口大工学部と医学部の生協食堂は、地産地消の一環として、米を北海道産から県産の「晴るる」に切り替えた。程よい粘りと甘みが特徴で「ご飯がおいしくなった」と、学生や教職員の間で評判になっている。
「晴るる」は、産地間競争を勝ち抜こうと一九九〇年、「コシヒカリ」と地元の主力品種「ヤマホウシ」を掛け合わせて作ったオリジナル品種。日本穀物検定協会の食味ランキングでは、Aランクの評価を得た実績もある。
 櫻井和夫店長は「味に敏感な学生からは早速、おいしくなった、という反応が返ってきた。コストや共同購入体制の問題があるが、旬のものをおいしく食べさせたいというのが基本的な考え方。生産者の顔を身近に感じるのは安心」と話す。
(上記記事より)

「食育」の取り組みが全国で進められておりますが、考えてみれば大学の食堂も、立派な食育実践の場ですよね。
キャンパスが立地しているその土地の生産品を使う「地産地消」は、食べる側にとっても、最もイメージしやすい取り組み。学生や教職員に、食物の生産から消費までを考えさせるいいきっかけになるかも知れません。

ところで生協食堂って、結構季節限定メニューとか、大学オリジナルメニューを用意しているんですよね。全国津々浦々の大学食堂のオリジナルメニューを集めて紹介したら、面白そうですね。

ブラジルの日本人コミュニティ主導で、大学を誘致。
■「進展見せるパラナ100周年=大学建設と日本公園=ローランジャでもプロジェクト=西森氏『骨組みはできた』」(ニッケイ新聞)
http://www.nikkeyshimbun.com.br/061019-71colonia.html

二〇〇八年のブラジル日本移民百周年に向けて、着実に計画を進めているパラナ日系社会。ロンドリーナ市に連邦技術大学を誘致し、学内に日本教育文化技術センターを設置する計画、マリンガ市に日本公園を建設する計画に次いで、現在、ローランジャでも大きなプロジェクトを検討しているという。パラナ日伯文化連合会会長(リーガ・アリアンサ)の西森ルイス弘志パラナ会長(選挙中休職、パラナ州議)に話を聞いた。
 「二年前から計画を始めて、骨組みはもうできています。あとは細かいところを埋めていくことです」。
 百周年まであと一年八カ月。連邦技術大学の誘致はブラジルの法的手続きはすべて終了している。今年末の連邦議会で予算案が通れば、来年から建設を始められる見込みだ。西森氏は「百周年式典で建物の落成式を行いたい」と力を込める。
 工学、生物学など様々な分野での技術を学べるロンドリーナ連邦技術大学の設立。その中に、日本からの技術を取り入れた日本教育文化センターを設置する。日本の大学とも提携を結び、技術交流を図りたい意向だ。
 日本からの援助も、領事館を通じて申請している。「パラナから日本にお願いしているのはこれだけですから」。
 現在、パラナ州内に連邦技術大学はない。将来的にはクリチーバにも開校する方向で考えているが、ロンドリーナの大学設立がパラナでの第一号になる予定だ。
(上記記事より)

はるかブラジルの地、日系ブラジル人の社会で、こんなプロジェクトが着々と進められているそうです。
 このパラナ州初の連邦技術大学になるとのことですから、州の人々にとってメリットがある事業です。それを現地の日系人コミュニティが主導しているのですね。日本教育文化センターを設置したり、日本の大学と技術交流を行ったりすることも盛り込まれています。
 さすが、異国の地に根を張り、力強く生き抜いてきた方々だと思います。日本の大学人としても、何か協力できればと思います。

アメリカ大学教授の宗教事情。
■「『神は存在する』 米国大学教授の6割」(Christian Today)
http://www.christiantoday.co.jp/news.htm?id=687&code=int

米国大学教授の3人に2人が神、または人間を越える力の存在を信じていることがハーバード大教授らによる社会学調査でわかった。 残る3分の1は神の存在を否定するか、知ることは不可能と考えているという。米紙クリスチャンポスト電子版が12日伝えた。
大学教授は総人口と比べて宗教信者が少ないことになる。例えば宗教関連の礼拝または祭典に参加すると答えた大学教授は40パーセントだったのに対し、総人口は47パーセントだった。
短期大学教授を除いたこれまでの調査では大学教授の宗教人口は今回の数値を下回っていた、と今回の報告書は述べている。
また、短大教授は博士学位を提供する主要大学の教授と比べて宗教信者が多いこともわかった。一方で、これらの主要大学の教授における無神論者と不可知論者を合わせた割合は半数を下回り、また神の存在に疑いの余地はないと考える大学教授は全体の20パーセントに上った。
(上記記事より)

キリスト教メディアによる、ちょっと珍しい調査結果。アメリカの教授達の、宗教の信仰度(?)を調べたものです。
大学教授は総人口と比べて宗教信者が少ないとのこと。ただし、短期大学の教授は、ちょっと多めだそうです。
だからどうだと言うわけでもないのですが、自分も含めて、大学業界の人間はあまりこういうデータを見ることがないなぁと思って、ご紹介いたしましました。

日本でも、宗教団体が母体になっている大学ってありますよね。大学によっては、一定以上の職位の教職員には、改宗を求めているところもあると聞きます。
(課長以上の職員が全員坊主頭、という大学はあります。大学同士の勉強会で見かけて、ちょっとびっくりしました)
大学教職員の宗教事情に関する調査結果があったら、見てみたいかも……。

共産主義の国で、重い教育支出。
■「中国家庭の教育支出、総所得の3分の1近くに」(Asahi.com)
http://www.asahi.com/international/jinmin/TKY200610160217.html

中国社会科学院の発表した「2006年度経済・社会白書」によると、学費の高さが人々の生活における新たな問題となっていることが明らかになった。零点調査公司が全国の都市・農村における4128人を対象に行った無作為調査によると、教育支出が世帯総所得の3分の1近くを占めていることがわかり、この事実をさらに裏づける形となった。2004年10月~2005年10月の1年間に、通園・通学する子どものいる世帯では、教育費は平均3522.1元に上り、年間総所得の30.2%を占めていた。
(上記記事より)

中国では今、多くの家庭が、子供の教育費のために貧困にあえいでいます。特に農村部で、その影響が著しいとのこと。
農村を中心に平等な社会を築くはずだった共産主義国で、こういうことが起きるのは皮肉な話です。
高度経済成長を遂げ、政治的、経済的に躍進を続けている中国ですが、こうした問題への対策がどのように行われているかはあまり聞きません。大丈夫なのでしょうか。
余計なお世話だとは思いますが、ちょっと心配です。

ソウル大学、全国津々浦々から学生を必ず進学させる施策。
■「全国の各郡から1人は進学させる ソウル大が検討中」(東亜日報)
http://japanese.donga.com/srv/service.php3?biid=2006101885918

ソウル大学が、早ければ09学年度から全国のすべての市郡区で、少なくとも1人以上の入学生を輩出するよう、地域均衡選抜基準を変更する方案を検討中だ。
ソウル大学地域人材育成協議会(共同議長=カン・インヒョン淳昌郡守、李ジョンジェ・ソウル大学生処長)は17日、「立ち後れている大半の市郡では5年、10年経っても、ソウル大学に1人も入れないという事例が多い。市長と郡守が推薦すれば毎年1人ずつ、ソウル大学に入れるようにして欲しい」と言う内容の建議書を、李長茂(イ・ジャンム)ソウル大学総長に伝えた。
(略)
協議会共同議長であるカン郡守は、「地域均衡選抜制度は良い趣旨であるにもかかわらず、本来の意図を充分に生かせないでいる。ソウル大学が、合格者を輩出できない立ち後れた地域から1人ずつ選んであげれば、その学生たちの奨学金は、その地域で負担するだろう」と述べた。
ソウル大学は、地域均衡選抜定員を現在の670人余りから07年度には800人余りに、さらに、08年度には1000人余りに増やす予定だ。
(上記記事より)

ソウル大学の、かなり大胆な案です。一種のアファーマティブ・アクション(積極的差別是正措置)と言えるのかも知れません。
日本で言うと、「県知事の推薦を受ければ、毎年各県から、最低数名ずつは東大に入れる」という感じでしょうか。

こういう施策には賛否両論があると思います。学力が足りなくても地域枠のおかげで入学できることになる受験生が出る一方で、彼らより学力があるのに入学できない受験生が出てくるからです。

ソウル大学では、既に地域均衡選抜制度を実施しており、今回はその枠を拡大しようということのようです。
こういう施策を採ることで本当に地域の格差解消に効果が出るのか、この地域均衡選抜制度で入学した学生がちゃんと学習成果をあげているか、といったことをチェックすることが大事だと思います。

(過去の関連記事)
・用語解説:「アファーマティブ・アクション」とは
http://blog.livedoor.jp/shiki01/archives/50211090.html
・四国学院大学が採用するアファーマティブ・アクション
http://blog.livedoor.jp/shiki01/archives/50213261.html

以上、今週のニュースクリップでした。
今回は、海外の話題を多めに取り上げてきました。

今週も、一週間本ブログを読んでいただき、ありがとうございました。
明日からも、どうぞよろしくお願いいたします。

マイスターでした。