マイスターです。

今日は前置き抜きで、さっそくニュースをご紹介します。
報道から少し日が経っちゃいました。多くのメディアが大きく取り上げましたから、大学業界の皆様はおそらく既にご存じかと思います。

【教育関連ニュース】-----------------------------------------

■「私大の定員割れ4割超す」(日経新聞)
http://www.nikkei.co.jp/news/main/20060724AT1G2402I24072006.html
■「4年制私大、4割が定員割れ…過去最多の222校」(読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20060724i115.htm
■「定員割れ私大、40.4%と過去最高に」(朝日新聞)
http://www.asahi.com/national/update/0724/TKY200607240594.html
■「私大の40%定員割れ 今春入試、過去最悪」(中日新聞)
http://www.chunichi.co.jp/00/sya/20060725/mng_____sya_____002.shtml
■「私大定員割れ40% 地域・規模、二極化進む」(産経新聞)
http://www.sankei.co.jp/news/060725/sha025.htm
■「私大の4割 定員割れ 今春入試」(東京新聞)
http://www.tokyo-np.co.jp/00/sya/20060725/mng_____sya_____006.shtml
■「淘汰の荒波が押し寄せた 私大定員割れ」(西日本新聞)
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/column/syasetu/20060726/20060726_001.shtml

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定員割れを起こした私立大学が、昨年度から10.9ポイント増え、今年度は40.4%と過去最高になったことがわかった。24日、日本私立学校振興・共済事業団(私学事業団)が公表した。少子化で受験人口が減ったうえ、大学や学部の新設が影響している。ほかに、大都市部に比べて地方私大の不振という二極化も原因という。

事業団によると、4年制の私大は今年5月現在で、556校ある。このうち550校のデータを集計した。

それによると、今年4月の入学定員は約44万人。25校で定員枠を縮小したが、8校と50学部が新設されるなどした結果、定員数は昨年度比で約9300人増えた。

大学全体の定員に入学者数が達しなかった定員割れの私大は40.4%にあたる222校。昨年度は29.5%で、160校だった。女子大に限ると、44.2%で(昨年度は34.6%)で、私大全体の比率よりも高かった。

97年度に5.4%だった比率は00年度以降、30%前後で推移。この1年間で急激に伸びたことについて、事業団は、入学定員枠の増加のほか、少子化により18歳人口が約4万人、浪人生の数も約2万3000人、それぞれ減ったことなどを挙げている。

地域でみると、定員割れの比率は東京地区が12.4%、南関東(神奈川、埼玉、千葉3県)と京都・大阪が30%台。これに対し、中国は64.7%、四国は62.5%、北陸は60.0%だった。
Asahi.com記事より)

というわけで、定員割れを起こしている私立大学が4割に達したという報道です。

だいたいの内容は皆様ご存じでしょうから、ここでは、各メディアの記事の内容から、特徴的な部分を抜き出して整理しておきます。


「本当に」危険な大学の数は、4割ではない。

今回の報道の「定員割れ」の定義は、なんでしょうか?
もし「100%以下」、つまり、定員の99%を集めていても定員割れなんだという意味で書かれているのだとしたら、記事の印象はかなり違ってきますよね。

定員が100名の学科があって、受験生に合格を200人出して、101人に逃げられた(合格したけれど入学しなかった)なんてことは、ままあることです。
大学側は定員割れを避けようと合格者を増やし、総数は4.8%増の104万3518人。それに伴い合格率は37.05%と2.56ポイント上昇したが、合格者のうち実際に入学した割合を示す歩留まり率は45.26%で2.30ポイント低下した。各大学は想像以上に合格者に逃げられた形だ。(産経web)
・・・という指摘がありますね。
「逃げられ過ぎ」て、定員を割ってしまうというのも、もちろん良くない事です。
ただ、4割の大学が定員割れだからといって、「4割の大学の経営が瀕死」という意味ではありません。そこは、大学から社会に対して、説明をしておいた方がいいかもしれませんね。

本当にピンチになりつつある大学は、↓この辺りだと思います。
入学者が定員の70%に満たない大学数も前年度の52校から62校に増加。(産経web)
定員充足率(入学定員に対する新入生の割合)が、経営に危機的な水準とされる50%を下回る大学は20校で、前年度より3校増えた。(NIKKEI NET)

定員の7割、5割しか集まらなかったというのは、おそらく、歩留まりを読み間違えたというレベルではないですよね。じりじりと、良くない方向に向かっている大学・短大だと思います。早めに手を打たないと、取り返しのつかない事になるのでしょう。


特に苦戦しているのは地方大学、中規模校、工学部、薬学部。
1校あたりの定員が100人未満の小規模校と、3000人以上の大規模校以外は、すべて前年度より充足率を下げ、中規模校の経営環境の悪化が目立った。。
志願者が減ったのは、最近、人気の低迷が指摘される工学部や今春に4年制から6年制に移行した薬学部など。地域別では、北海道と北関東、中国、四国、九州の各地が、入学定員充足率100%を割り込み、地方の苦戦ぶりが目立つ。(読売オンライン)
地域でみると、定員割れの比率は東京地区が12.4%、南関東(神奈川、埼玉、千葉3県)と京都・大阪が30%台。これに対し、中国は64.7%、四国は62.5%、北陸は60.0%だった。
東京周辺や京都・大阪には学生数が多い人気がある大学が集中しているためとみられる。地方に少なくない中小規模校は苦戦を強いられている。 (Asahi.com
このように、低迷している大学にはいくつかの共通点があるようです。
「小規模校と大規模校を除いて充足率が低下」というのは、「個性がハッキリしない大学は選ばれなくなっている」ということなのかもしれません。または記事にあるように「中規模校=地方に多い」ということで、地方の大学が苦境に立たされている事を間接的に示しているのかもしれません。大学によってその理由は異なるでしょうから、該当する大学の方は、自分達の大学について、より詳細な分析を独自に行ってみた方がよさそうです。

また、地方大学が厳しいというのは前々から指摘されていた事ですが、今回の調査でもその傾向が出ました。パーセンテージで出るとはっきりしますね。
ただ、こうした「苦戦地域」でも、未だに新設される大学はあるわけで、そういった学校はどういうマーケティング戦略を立てたのか、ちょっと気になります。もちろん地方でも勝負の仕方はありますが、データが示す限り、不利な状況には違いないようです。


定員割れの原因のひとつは、大学や学部の新設。
定員割れが急増したのは少子化で新入生が減っているのに、大学や学部の新増設に歯止めがかからないのが原因。新設された大学は8校、新設学部は50学部に上り、今年度の4年制私大の総入学定員は約9000人増加。一方、定員削減に踏み切ったのはわずか25校だった。(NIKKEI NET)
日本の大学の不思議のひとつは、どれだけ受験生が減って定員割れしようとも、大学の規模を縮小することを考えないことです。

「少子化のせいで、ウチの大学は定員割れしたんだ。別に、ウチの教育や経営が悪いわけじゃないんだ。社会環境の変化のせいなんだ。」と主張している大学関係者は少なくないと思いますが、だったら、18歳が増える事はもうないのだから、定員を減らせばいいのにと思わないでもありません。

もちろん本当は、「定員を減らさずとも勝負できる方法」を考えるのがベストですが、そういう大学改革を、日本のすべての大学が実践できるとも思えません。大学によっては、「縮小」という道を選択するところだって、あってもいいんじゃないかなぁと思うのです。コンパクトな大学にしかできないこともありますし。それもひとつの、マーケティング戦略の結果だと思うのです。

でも実際には、各校の定員は減らないし、それどころか学部を新設したり、大学が新たに設立されたりしています。ですから増えた分、どこかが減らないと、定員割れはいっそうひどくなるのは道理ですよね。少子化は18年前から予見されていたことなのですから、それにペースをあわせて減らすという選択肢があったはずですが、どこもそれを選択しなかったわけです。

学部や大学が増えるのは、「新しい時代のニーズにあった教育を行うため」という意義がありますから、一概に否定はできませんが、だったら、需要がないのに古い時代の教育をずっと続けている学部などは順次、ほかの学部に改組されるとか、とり潰されるとかしなければ、計算があいませんよね。
同事業団は「少子化による競争激化で、時代に合った学部の新設で生き残りをかける大学が増える一方、不人気学部の廃止などスリム化が進んでいない」と大学の経営努力不足を指摘している。(東京新聞)
↑実際、こんなご指摘もありました。

大学が学部や学科をおいそれと減らせない理由は、もちろん社会的な使命感によるところもあるでしょうが、それよりも「大学のガバナンスがそれを許さないから」というのが一番大きいのではないかと、マイスターなどは思います。
大学では、大きな決定事項は教授会が決定して(承認して)います。学校教育法第59条の「大学には、重要な事項を審議するため、教授会を置かなければならない」という記述がその根拠だとされていますが、ご覧の通り「重要な事項」という記述はあいまいです。困った事に、経営に関する事項の多くが、教授会の審議事項になり、教授達の反対にあって取り潰されているのですね。
その典型例が、学部学科のスリム化というわけです。自分達の居場所をなくすような提案が、教授会を通るわけがありません。(でも誰だってこの状況なら反対して当然です。ですから教授達が悪いというよりも、ガバナンスの仕組みに欠陥があるのだと思います)
いくつかのメディアが、大学のスリム化の必要性を訴えていましたが、おそらくこの部分だけは、社会からの声が大学に届く事はないんだろうな・・・と思われます。マイスターは、それで本当にいいのかと、日本の高等教育の行く末が心配です。

市場はどう考えても縮小しているのに、大学定員が増え続けている現状を見て、マイスターは、建設会社の話を思い出しました。
バブルが弾けて大規模な不況に見舞われた90年代、各種の工事は減っていたに違いないのに、建設会社の数は、何年もずっと増え続けていたのだそうです。しかし当然のことながら、不況が長続きする中で、そういった会社もどんどんつぶれていき、最終的には企業数は減少する結果になりました。最初から事態が理解されていれば、業界のスリム化・合理化も早めに進んだでしょうが、経営者達の「もうすぐなんとかなるだろう」という根拠のない見通しが、途中、よけい多くの失業者を生む結果になったのです。
大学は、どうなのでしょうか。


浪人生の減少。
さらに、今回特徴的なのは、新教育課程での初めての入試が受験生に敬遠され、浪人生が昨春より2万3000人ほど減少した点だ。少子化に伴う志願者減少傾向に拍車をかけている。(産経web)
現役主義の受験生が増えているというのも、前々から指摘されていた事ですが、「昨春から2万3000人」という減少幅は、すごいですね。教育課程の切り替わりも原因だと書かれていますが、それだけが原因でもないんだろうなと思います。



以上、各メディアの記事に書かれた内容を、ざっとですが整理してみました。
みなさまも、どうぞこの記事を、備忘録代わりに使っていただければと思います。

最後に、西日本新聞の記事から。
右肩上がりの経済成長と大学進学率の上昇に歩調を合わせ、私大は新設や学部・学科の増設を繰り返してきた。だが、こうした一本調子の拡大路線では、急速に押し寄せる淘汰(とうた)の荒波に対抗できないのは明らかだ。

私大の改革は時間との闘いでもある。日常の授業や得意な研究分野で受験生のニーズを先取りするような個性に一段と磨きをかける努力が欠かせない。教職員の陣容や学部・学科の構成・規模も含めて、身の丈に合った経営環境を整えるのも急務だろう。大学全入時代を迎え、私大は大胆な発想の転換と経営戦略の再構築が求められている。(西日本新聞)


本当に、大学人が一刻も早くなんとかしなければならない問題なんだよな、と思うマイスターでした。

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