ニュースクリップ[-11/27] 「小中学生の情報セキュリティ実態調査」ほか

マイスターです。

今週も恒例のニュースクリップです。

今回は、ちょっとテーマ性を出してみました。

【教育関連ニュース】——————————————–

■「小中学生の情報セキュリティ実態調査」(NPO 情報セキュリティフォーラム)
http://www.isef.or.jp/report/index.html

■「肝心なのは『調べ方』」(読売オンライン)
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20051103us41.htm

■「先生と親対象 ネット講習会 総務省、来年度から」(産経web)
http://www.sankei.co.jp/databox/kyoiku/etc/051121-1etc.html

■「2006年度新規施策 安全対策にIT活用へ」(現代教育新聞)
http://www.gks.co.jp/2005/sonota/data/05103101.html

■「複数のメディアで一斉に情報を伝達する『子ども安全連絡網』(仮称)サービスの実証実験を開始」(NTT DATA)
http://www.nttdata.co.jp/release/2005/111500.html

■「最高情報統括監(CIO)募集要領」(佐賀県統括本部 情報・業務改革課 CIO選考事務局)
http://www.pref.saga.lg.jp/at-contents/kenseijoho/cio/cio.html

■「就職活動に関する意識調査」(株式会社マクロミル)
http://www.macromill.com/client/r_data/20051116recruit/index.html
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自宅パソコンでのインターネットを楽しむ子供が増加中のようです。
ブロードバンドが普及してきた近年でも、
「高校生までは、携帯電話でインターネットを楽しんでいる。PCでのネット利用は大学生から」
というのがIT業界の「隠れた通説」でしたが、それを覆すアンケート結果が発表されました。
-<2>家でパソコンを使ったインターネットの利用実態
(1)インターネット利用率は、小学校6年生68.2%、中学校3年生81.9%。全児童・生徒のうち、家でインターネットを利用しているとする回答(設問に「はい」と回答)は、小学校4年生で45.9%、小学校5年生では63.1%と6割を超え、中学校3年生になると81.9%と8割を超える結果となった。
(2)インターネット利用頻度は中学校3年生で「だいたい毎日」31.3%。
家でインターネットを利用していると回答した児童・生徒のインターネットの利用頻度は「1 ヶ月に1 回くらい」利用するとの回答が総じて各学年2割から3割あるが、一方で「だいたい毎日」利用するとの回答も2割から3割となっている。
特に中学校3年生になると31.3%が「だいたい毎日」利用すると回答しており、「2日に1回くらい」利用するとの回答をあわせると47.6%とインターネット利用者の約半数が2日に1回以上利用する結果となった。
NPO 情報セキュリティフォーラム アンケート結果報告書(PDF)より)
これまでの小中学校での情報教育の成果でしょうか。学校の広報戦略を考える上で参考になる数値になりそうです。

ものの「調べ方」を教える教育プログラム、実践中です。
「『調べ学習』は総合学習で盛んに用いられているが、調べ方の基本が十分教えられているとは必ずしも言えない」。
「『調べ方を教えずに調べてこい、というのは、泳げない子供を水の中に突き落とすようなもの』」
そんな想いから、情報の調べ方をきちんとしたプログラムで教えはじめたという取り組み報告です。
非常に、非常に重要な教育だと思います。
残念ながらこれまで、小中学校ではこうした教育はほとんど行われてきていなかったのではないでしょうか。
(大学生でも、webで検索して引っかかった情報をそのままレポートにコピー・ペーストする者がいるくらいです)
情報の洪水にもまれながら生きていく子供達に、こうした技術をいち早く教えるのには、個人的には大賛成です。

教職員と保護者向けの、インターネット講習会が始められます。
子供が安全にインターネットを使える環境を整備するため、教職員と保護者を対象に講習会を国が実施していくとのこと。
まずは関東と東海地域で試験的に実施し、平成18年度から三年間にわたって全国展開し、年間千回程度の開催を目指すそうです。
ちなみに主催者は文部科学省…ではなく、情報通信関係の政策を担当している総務省。
講師は通信会社の担当者などで、「ネットを悪用した犯罪の実態、料金の架空請求や迷惑メールへの対処方法などを説明する」内容のようです。
これも、「u-Japan」政策の一環ということでしょうか。

・「u-Japan政策」総務省
http://www.soumu.go.jp/menu_02/ict/u-japan/index2.html

文部科学省も、安全対策のために情報ネットワーク技術を利用する研究を進めています。
総務省に負けてはいません。
文科省は2006年度の新規事業案に「子どもの安全に関する情報の効果的な共有システムに関する調査研究」を盛り込みました。
かつては「子供を監視する」という批判も聞かれていたであろう内容ですが、子供を狙った凶悪犯罪の報道が増える中で、こうした取り組みに着手したと言うことでしょう。
調査研究だけでなく、継続事業として「地域ぐるみの学校安全体制整備推進事業」も進められます。
地域、そして警察など関係機関が協力して学校の安全を守る取り組みをさらに推進するための事業ということです。
個人情報保護などの問題をきちんとしたルール作りで解決できれば、もともと高度情報ネットワークの技術は、こうした安全確保のための心強い武器になりうるものです。
犯罪者も情報力を持っている以上、学校も情報の力を活用しなければいけない時代なのですね。

NTTデータ、公立小学校まるごと1校協力による安全連絡網の実証実験を開始です。
文科省の取り組みに対し、民間企業も独自の調査・研究開発を進めています。
情報処理最大手のNTTデータが動き出しました。
「本サービスは、従来の電話連絡網にかわり電話・メール・FAX等、保護者が希望するメディアに対して学校から一斉連絡するもので、迅速・公平・確実な情報伝達を実現します。」
というわけで、個人情報保護と、子供の安全確保の両方をにらんだサービスの実証実験です。

セキュリティ会社や携帯キャリア会社など、同様のサービスを打ち出している企業はありましたが、
今回の実験は、公立学校全生徒700人とその保護者会の全面協力を取り付けての、大規模なもの。
企業にとっても、これから市場が拡大していく分野と思われるだけに、極めて重要な実験となることでしょう。

佐賀県、最高情報統括監(CIO)募集を公募です。
佐賀県の野心的な試みです。
1:佐賀県庁を全国の自治体で最もIT化の進んだ組織とし、常に最新の情報機器を使って、仕事を進めていく組織であらしめていただきたい。そのために、佐賀県職員を全国で最もITスキルの高いレベルに引き上げていただきたい。
また、佐賀県のポータルサイトは、そのIT最先端県佐賀県のシンボルとして、チャレンジドの方たちの利用を含め、アクセシビリティ、セキュリティ、コンテンツなどの点で常に全国の最先端を行くものとしていただきたい。
2:佐賀県という地域にもっとITが身近なものになり、それにより県民生活が豊かで便利なものとなるよう、ブロードバンド接続可能率を3年以内に100%にするための方策を提案し、実行していただくとともに、実際の接続率も50%を超え、医療、教育、防災などあらゆる分野でITが当たり前になるようにしていただきたい。
3:すべてのチャレンジドの方たちがITを活用できる「チャレンジドだれでもパソコン十か年戦略」をサポートし、また、佐賀県内の企業のIT高度化、佐賀県内のIT関連企業の育成についても助言をいただきたい。

以上のミッションを達成する人材を、佐賀の情報政策トップとして1名、雇用するそうです。
「以上の3箇条を実現するために必要な人的及び財政的資源並びに組織的権限については、必要に応じて知事から付与される。」
とのことですから、かなりの権限を与えるのでしょう。これは佐賀、本気です…!
「民間企業、教育機関又は研究機関等における情報分野の実務経験を有し、管理職などのマネジメント業務の経験があり、行政の業務にも一定の知識があって県の業務改革を推進できる者」が応募条件。年齢制限もありますが、35~59歳ですから、かなりゆるめです。
残念ながらマイスターは資格がありません。どなたか、我こそはと思う方、挑戦してみてはいかがでしょうか。
大学の管理スタッフの方とか、どうですか? 適任の方がいるような気がしますよ。

しかしこの挑戦的な文面…うむむ、佐賀県なかなかやるな!という感じです。見てるこっちもわくわくします。
「チャレンジド」という言葉を使っているあたりも好印象です。

大学生の就職活動は「インターネット」「新聞」「携帯電話」が三種の神器です。
最後は、大学生のネット活用について。
「就職活動において重要だと思うツールをお知らせ下さい」という質問に対して、回答者の95%が挙げたインターネット。
57%の「新聞」を引き離し、ぶっちぎりの一位です。
裏を返せば、インターネットで情報が見つからない会社は、学生にとっては「存在しない」も同然ってことです。
本当は、探せば他のメディアにも情報はあるのですが、こう情報がインターネットに集中してしまうと、学生もそういう意識を持ってきます。

就職活動を開始した学生のうち、ほぼ全員の94%が「リクナビ」に登録済みという結果も、まぁ予想通り。
ちなみにリクナビは、情報を掲載するのに莫大なお金(ほんとに高い!)が取られるので、必然的に大企業の情報が中心になります。
ベンチャーや、技術力で勝負する中堅企業、クリエイティブプロダクションなどは載ってないことが多いです。
そうした情報をお捜しの学生さんは、リクナビにないからといって諦めないように。

逆に言うと、
「リクナビに載っていない情報が多数閲覧できます!」というフレーズは、学生さん達の関心を引くはずです。

高校・大学の就職支援担当の方は、リクナビに載ってない情報も多数お持ちだと思いますから、こうしたキャッチフレーズを就職課の掲示板に貼りだしてみてはいかがでしょうか?
就職コーナーを訪ねてくる学生が、ちょっとは増えるかも知れませんよ。

以上、今回は情報通信技術を中心に、記事を集めてみました。

ちなみに、日本では情報技術=「IT」という言葉が疲れていますが、これは日本だけの略称。
世界的には、「ICT」という言葉が一般的です。

<ICT=Information and Communication Technology>

です。
今回クリップでも取り上げた総務省のu-Japan政策などでは、この「ICT」の言葉が正式なワードとして使われています。
総務省が発行してきた「IT政策大綱」も、2004年度版からは「ICT政策大綱」に名称変更されていたりします。

「ユビキタス」も「ICT」も、
通信インフラの爆発的な進歩を通じて、コミュニケーションを革新させる、
という意味合いが多分に含まれている言葉のように感じます。

ところで教育における情報通信技術の活用というと、
教育のために直接その技術が使われる(e-learning等)イメージが強いですが、
個人的にはむしろ、

 今回ご紹介した子供の安全確保のためのシステム、
 学校の管理運営支援システム、
 コミュニティ内の連絡・コミュニケーション支援システム、
 教員の業務サポートシステム

など、教育支援サイドで、もっと活用される余地があるんじゃないかなぁと思っています。
学校を、足下から支える技術として、そのうちぜひご検討いただければと思います。

また、情報技術の力を教育現場に持ち込もう!と主張すると、
「人と人とのコミュニケーションは、やっぱり対面が基本であるべきだ!」
というご意見が来そうですが、情報ツールの導入=アナログなコミュニケーションの放棄ではないのです。
ですので、どんなにツールが便利になったとしても、ぜひ対面コミュニケーションは維持してください。

むしろアナログなコミュニケーションをより豊かにするための補助として、情報ネットワーク技術をご活用いただければいいんじゃないかと思います。

これまで物理的、時間的に対面コミュニケーションがとれなかった人との情報交換に使うとか、
対面コミュニケーションの間の期間に、こまめな情報提供を行うために使うとか、
これまで学校に無関心だった保護者との交流を情報ネットワークで行い、最終的に対面コミュニケーションの場に引っ張り出すためのキッカケにするとか。

ちょっと個人的な想いの話になりますが、
人間がやらなくてもいい雑務については技術の力を思いっきり借りてしまい、
その分「想い」や「あたたかさ」、「気配り」が必要な仕事や、
新しい「企画」や「提案」が必要な仕事に時間を割くというのが、マイスターが思う未来の学校の姿です。
情報技術は、教育の中心ではなく、そうした豊かさを手に入れるために支援的に使われる存在だと思います。

言うなれば、「サイバースクール」ではなく、

「サイバード・スクール」(cybered school=情報メディアの力によって支援された学校)

です。
全国のあらゆる学校が情報の力を利用して、その結果それぞれ今よりも豊かに時間を使えるようになるという未来イメージです。
特に、今は多忙な教員のみなさんが、労務から少しでも解放されることを願います。

(情報技術の活用は、最初だけは大変だと思いますが、そのうち簡便なシステムが開発されることでしょう。
それに、情報ネットワークの専門技術を持った事務職員を雇用して、その人に技術のことは任せればいいのです。
技術に明るく企画提案力もある優秀な職員を、コミュニケーション・コーディネーターとして今のうちに学校に抱え込んでおくことをオススメします)

今はまだ夢物語な部分も多いでしょうが、こうしてビジョンを提示していれば、いつか技術者がその期待に応えてくれる日も来るはずです。

情報技術は常に、人間らしさを獲得する手段として発展していくべきだと考えるマイスターでした。